こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。
「優秀なベトナム企業を買収したい。」
成長著しい企業があるので、ベトナムで投資してゼロからスタートするよりも買収(資本譲渡と言う言い方をします)したほうが、スピード感を期待できることもありますよね。
本日は、ベトナムの資本譲渡の流れについての概略について説明していきます。
- ベトナム企業の買収を考えている。
- ベトナム資本譲渡の手続きの概要や税務リスクを知りたい。
- 資本譲渡のスケジュール感を知りたい。
この記事のもくじ
資本譲渡の定義と大きな流れ
まずは定義です。
「わかってる!」という方が多いかとは思いますがおさらいしていきましょう。
資本譲渡とは、出資者が持ち分譲渡により変更することです。
例えば、ベトナム企業の日本企業による買収です。この場合、ベトナム人オーナーから、日本企業(日本人)に投資家が変更しますよね。また、100%でなく、一部の譲渡、例えば30%だけ譲渡する場合も資本譲渡となります。さらに、合弁を解消する際にも、資本譲渡が用いられます。(A社70%B社30%→A社100%)
何かモノ に対する所有者が、変わるイメージでもいいと思います。
「資本譲渡」の大きな流れは次のようになります。
- 0:事前に条件を決める。
- 1:資本譲渡の当局への登録
- 2:銀行口座を開設(該当する場合)し、譲渡額の送金
- 3:資本譲渡者の税務申告
- 4:企業登録証明書(ERC)の修正
- 5:投資登録証明書(IRC)の修正
それではそれぞれ見て行きましょう!
0:事前に条件を決める。
まずは、様々な条件について決める必要があります。
- 企業価値評価
- 譲渡金額(いくらで持ち分を売りますか?書いますか?)
- 責任範囲
資本譲渡の登場人物は、「譲渡者(売る人)」と「譲受人(買う人)」です。
当事者間で、譲渡金額を決める必要があります。この金額は、法人税の金額に影響を与えますのでこの点も留意する必要あります。
この際、譲受人(買い手)は、簿外債務、未払税金債務等も引き受けることになります。
したがって、通常は資本譲渡前にデューデリジェンスを実施します。要するに、買い手が間違った意思決定しないためにきちんと調べて買収先の評価する必要があります。その会社の評価はいくらなんだろう?と評価額を決定する必要があります。
例えば、買収したけどその会社がめちゃくちゃコンプラアンス違反で、罰金リスクがとても大きいよ。となると困ってしまいますよね。
そして、条件を決めたら「資本譲渡契約」を締結します。そして、「資本譲渡契約」に基づいて譲受人は、譲渡者に譲渡額を送金します。なお、この資本譲渡契約書ですが、ベトナム語への翻訳が必要です。
1:資本譲渡の当局への登録
譲受人は、計画投資局に、資本譲渡に関する登録書(法律で定められた雛形)を提出します。
主な以下の内容を記載し、譲渡者、譲受人の署名が必要となります。
Ⅰ:譲受人(買い手)及び譲渡者(売り手)の名前、設立日、パスポート番号(法的代表者)、住所、
サンプルは以下の通り。
Ⅱ:資本譲渡前の出資先のベトナム法人の情報(会社名、住所やライセンス、資本金、出資比率)
Ⅲ:資本譲渡後の出資先のベトナム法人の情報(会社名、住所やライセンス、資本金、出資比率)
Ⅳ:資本譲渡の理由
Ⅴ:新投資家のコミットメント(義務)
Ⅵ:添付ファイル(買い手の登記簿謄本など)
これは、申し込みが承認まで1か月から1か月半かかります。
2:銀行口座を開設(必要に応じて)し、譲渡額の送金
日系企業の場合、投資家が日本本社であることが多いです。そして、譲渡先も日本の会社ということが多いでしょう。この場合の売り手と買い手がともに日本の企業となるので、シンプルに考えると、日本の買い手から売り手に譲渡代金を送金すればよさそうに思えます。
図解すると以下のようになります。
ところがそうはいきません。ベトナムの子会社であることからベトナムで「非居住者口座」を開設しそこを通して資金のやりとりをする必要があります。
そのため時間がかかってしまいます。場合によっては送金完了まで1ヶ月以上かかるケースもあるでしょう。
なお、送金については銀行によって細かな手続きが異なりますので必ず事前に銀行に確認する必要があります。ご留意ください。
将来的にこの手続きも変更する可能性があります。そもそも過去は「非居住者口座」の解説が必要がありません。
3:税務申告
譲渡金額(企業価値評価に基づく)によっては、譲渡益(譲渡金額ー購入費用ー関連費用がプラスの場合)が生じるケースもあります。
なお、実務上は譲渡金額がゼロ(タダ)でなければ登記申請上は問題ないようです。資本譲渡する場合は、原則として譲渡者(売り手)は税務申告する必要性が生じます。
Circular156/2013/TT-BTC第12条に具体的な提出日が規定されています。
No. 156/2013/TT-BTC
Article 12. Declaring corporate income tax (CIT)
- Declaring CIT on capital transfer
The tax declaration must be submitted within 10 days from the day on which the competent authority approves the capital transfer or the transfer date agreed by all parties in the transfer contract (if the transfer is not subject to approval).
この法律によると、税務申告書類の提出期限は「資本譲渡に関する当局の承認」より10日以内となっています。
「資本譲渡に関する当局の承認」の日は、一般的には、下記で説明する修正済みの投資登録証明書・企業登録証明書の発行日のいずれか早いタイミングと解釈されています。通常は、企業登録証明書の修正の完了の方が早いです。
もしくは、契約(資本譲渡)の合意から10日以内までに申告・納税する必要があります。
この税率ですが、利益に対して、20%であったり、みなし税(譲渡価格の1%)であったりしますので留意が必要です。
参考動画:資本(株式)譲渡した場合の税務上の留意点
4:企業登録証明書(ERC)の修正を申請
次に、ERCの修正をします。申請から修正完了まで1か月から1.5か月は実務上かかります。
これには、以下の書類が必要です。
・投資家変更通知書(雛形あり、新投資家の法的代表者の署名)
- 新投資家の登記簿謄本(日本の会社の場合)
- ベトナム現地法人の法的代表者のテンポラリーレジデンスカード
- 資本譲渡後の現地法人の新定款(公証が必要)
- ≪資本譲渡契約書≫
- 譲渡完了の確認書(銀行の振込書)(税務申告書も含む場合あり)
- 資本譲渡に関する登録の当局からの承認済み書類(ステップ1の結果)
5:投資登録証明書(IRC)の修正を申請
次にIRCの変更が必要となります。実務上、この変更完了までは、2か月程度、かかります。
以下の書類を準備し、計画投資局へ申請します。
・投資登録証明書変更の申請書(雛形あり、法的代表者の署名)
・現地法人の直近のプロジェクトの実施報告書(雛形あり)
- ・現地法人の投資実施、観察報告書(雛形あり)
- ・投資家の決定書、投資プロジェクトの提案書
- ・出資者変更の理由の説明文書
- ・ベトナム現地法人の監査済み財務諸表
- ・新投資家の登記簿謄本(買い手が日本の法人の場合)
- ・新投資家の直近2年の監査済み決算報告書
いかがでしたでしょうか?
結構大変そうですよね。いろいろ書類などの準備、公証、ベトナム語翻訳など、実施すべき手続きが多くあります。投資家が外国の場合には手続きが煩雑です。
期間も、合計で4か月程度(場合によっては5ヶ月以上)かかります。結構、かかりますよね。
本日は、ベトナム資本譲渡の大きな流れについて説明させて頂きました。
あなたの会社が、ベトナムの資本譲渡の決まりをしっかり理解して、ベトナムでのビジネスが成功することを祈っていますね。
ベトナム税務は、非常に複雑であいまいです。意見も分かれる場合もあります。マナボックスにはベトナム歴9年の日本公認会計士と実務経験豊富で日本語もネイティブなベトナム人専門家が、ベトナムの資本譲渡も支援しております。
ベトナム資本譲渡をお考えの方は是非、連絡ください。
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