こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。
- ベトナムでの法人設立を考えている。社長(GD)になる。
- ベトナム労働関係の事を詳しく知りたい。特に勤務時間。残業時間。
- 残業代の計算の方法を具体的に知りたい、ベトナム税務関係も知りたい。
これを読んで頂ければ、労務管理もできるようになります。
この記事のもくじ
ベトナム労働法による労働時間(残業も)についての論点
以下の項目について解説していきたいと思います。ベトナム労働法(No.: 10/2012/QH13、現在は45/2019/QH14)やそれに関連する税務関係です。
- 労働時間について
- 残業代の計算について
- 残業代の個人所得税について
- 残業代の法人税について
- ベトナムの休日について
それぞれ説明していきますね!
1、ベトナム労働法に定められている労働時間
1.1 通常の勤務時間と深夜勤務時間
結論から申し上げますと、
原則:1日あたり8時間、1週あたり48時間
ただし、週間労働時間を48時間越えない場合は、1日10時間まで労働時間を設定できる。(10時間でも残業にならない。)
週40時間を超えないことが推奨されている。
深夜勤務時間とは、午後10時~翌日午前6時のこと。
根拠条文45/2019/QH14:105条、106条
実務上は、8:00から開始して17:00のケースが、特に製造業の場合は多いです。この場合、休憩が1時間という前提だと1日あたり8時間になります。土曜日も出勤のケースも多いですね。
なお、休憩時間は、8時間、又は6時間連続で勤務する被雇用者は、労働時間(勤務時間)として計算され、少なくとも30分の休憩を取ることができます。また、深夜労働の場合、被雇用者は勤務時間として計算される、少なくとも45分の休憩を取ることができます。
ただ、実務上は、休憩を1時間としている会社が多いように感じます。
サービス業などは、土日をお休みしています。弊社、マナボックスも、平日の勤務時間を少し長めにして土日をお休みにしています。また、1日あたり10時間と設定して、週休3日ともすることも可能となります。
1.2 残業時間の上限
ベトナムの労働法は残業時間の上限を年間200時間とし、特定の条件下では年間300時間まで許可されています
- 残業(時間外労働)は、1日の通常勤務時間の50%を超えてはならなない。(例:1日通常勤務時間が8時間なら4時間)
- 1日では、総時間12時間を超えてならない。
- 月では、30時間を超えてはならない
- 年間では、200時間を超えてはならない(例外で300時間)
根拠条文45/2019/QH14:107条
200時間という時間はどこかで聞いたことがあるかもしれませんね。キンマやリンランの居酒屋なんかで。社長を悩ます原因の一つですよね。
専門家の説明のあるベトナム給与計算シート欲しい人他にいませんか?
ベトナムの給与計算シートを作成しました。専門家が作った給与計算シートで時間短縮したい人にお勧めです。以下をクリックして頂くと、ベトナム給与計算の構造について解説が見れます。
今すぐクリック
2、残業代の計算方法
残業代の計算式は、こうです。
【時給】×【割増率(レート)】×残業時間=残業代
第98条 – 残業代および深夜勤務手当
それぞれ解説して行きたいと思います。まずは、割増率について解説して行きますね。
2.1 残業した場合の割増率、レートは?
まずは、これも、結論からお伝えします。こうすると、9パターンがあるという事がわかります。
項目 | 時間帯 | 平日 | 週休日 (日曜日など) | 祝日・有給休暇 |
規定時間内の労働 | 昼勤(例:8:00~17:00) | ①100% | ⑥200% | ⑧300% |
規定時間を越えた労働 | 昼勤終了後 (17:00~22時まで) | ②150% | ⑥200% | ⑧300% |
深夜労働 | 22:00~6:00 | ③130% | ⑦270% | ⑨390% |
規定就労時間を超えてなおかつ深夜 | 昼間に残業なし (~22:00が定時の人) | ④200% | ⑦270% | ⑨390% |
昼間に残業あり (~21:59が定時の人) | ⑤210% |
根拠条文(ベトナム労働法)は以下のようになります。
第98条 時間外労働,深夜労働の賃金
残業代: 残業を行った場合、従業員は次の割合で給与を支払われます:
- a) 通常の日の場合:少なくとも基本給与の150%。
- b) 週の休日の場合:少なくとも基本給与の200%。
- c) 公休日または有給休暇の場合:少なくとも基本給与の300%(公休日または有給休暇の日の基本給与を含まない)。
深夜勤務手当: 深夜勤務を行った場合、従業員は通常の給与に加えて少なくとも30%の追加手当を受け取ります。
深夜の残業代: 深夜に残業を行った場合、従業員は上記の残業代に加え、通常の日、週末、または公休日の昼間の残業代の少なくとも20%を追加で支払われます。
引用元:ベトナム労働法45/2019/QH14
ただ、すこしわかりにくくないですか?私は、わからなかったので深堀してみました。図解もしています。以下で図解を利用して詳しく解説していますよ。
平日の場合
以下のようになります。
次に、日中に残業ありの場合です。
週末(例:土日)の場合
こんな感じです。
祝日の場合
以下の通りです。
労働・傷病兵・社会福祉省(MOLISA)は、2014年12月12日、祝日・有給休暇中の深夜労働に関するレターである「4163/LDTBXH-LDTL」を発行しました。それによれば、深夜に時間外労働を行った者の賃金については、「300%A + 30%A + 20%× (300%A) = 390%A」とすることを明らかにしたようです。
2.2 残業代の基礎となる時給(1時間あたりの基礎賃金)の計算は?
次に時給の計算方法です。
基礎賃金にはなにが含まれる?
No. 23/2015/TT-BLĐTBXHという規定によれば、
Actual hourly wage on a normal working day
となっています。
少し曖昧です。
基本給だけなのか?それとも手当も含むのか?
結論ですが、(意見にもなりますが、)
手当の名目で支給されている給料のうち、【役職手当】、【資格手当】といったような手当(実施的に給与)は、1時間あたりの基礎賃金に含まれる。
一方で、通勤手当、住宅手当は含むべきでない。
日本と同じでいいと思います。
感覚的にもしっくりきませんか?(私は法律より、常識や感覚をまず大事にします。そうするとその結論が結構あってます。)
実務的には、①基本給だけ、②基本給+手当(通勤手当などは含めない)③基本給+手当(通勤手当などは含める)の3パターンが見受けられます。
時間あたりの時給の計算方法は?
その月の稼働日や所定労働時間(所定労働時間)が就業規則などで決まっているはずです。
基本的には、以下のようにして求めます。
基礎賃金÷稼働日÷1日あたりの規定時間
具体例で見てみましょう。
- 基本給与:10,000,000VND(約5万円)
- 稼働日:20日(話を簡単にするために)
- 1日あたりの就業時間:8時間
10,000,000÷20日=500,000(1日当たり給与)
500,000÷8=62,500VND(時給)
例えば、12月平日の残業が15時間だとすると。
62,500*150%=93,750VND(時給)
93,750VND×15=1,406,250VND(約7,000円)となります。
3、残業した場合の残業代のPIT
ベトナム:残業代の割増分については、PITの対象になりません。
日本:残業代に個人所得税も課税される。
つまり、150%であれば、50%については、PITの対象になりません。
詳細に説明している記事:>>ベトナム残業代、個人所得税という観点からはお得?
4、残業した場合の残業代のCIT
残業代のリミット(年間 200 時間、一部業種で事前申請を行う場合 300 時間)を超えた分について、損金不算入のリスクがある。
これ、ベトナムあるあるですよね。
企業によっては、余裕で年間で、200時間を超えます。そのため、各企業に影響が大きいです。
以下の対応する必要があります。
・金額的なインパクトを計算して、あきらめてしまう。(損金不算入)
場合によっては、金額が僅少です。
・従業員に合意してもらい手当という形でみなし残業にする。
ベトナム人でも残業してお金が欲しいという人がいます。そこで、月20時間については、残業が固定的に発生するので、その分については残業にしない。かわりに○○手当という形にする。というような感じです。
参考記事:>>“損金不算入”ってなんだ?
5、ベトナムの祝日について
ベトナムの祝日は合計で年10日程度です。労働法115条
- 第115条祝日、正月休み
- a) 陽暦の正月:1日(陽暦の1月1日)
- b) 旧正月テト:5日(ただし、年によって違う。)
- c) 戦勝記念日:1日(陽暦の4月30日)
- d) メーデー:1日(陽暦の5月1日)
- đ) 建国記念日:1日(陽暦の9月2日)
- e) フン王忌日:1日(陰暦の3月10日)
日本では年間15日程度もの祝日があります。また、日本ではお盆時期、や年末年始は祝日ではありませんが休暇を与えられるケースがほとんどです。
祝日の日数の差以上にベトナムはお休みは少ないです。とても祝日が貴重なのです。
本日は、ベトナムの労働に関する、勤務時間、残業代、税務的な話、休日についてまとめて解説させて頂きました。
あなたの会社が、ベトナム労働法を理解して、ビジネスで成功することを祈っていますね!