こんにちは、マナボックスの菅野です。

本日は、2019年6月26日付中央銀行、通達06/2019/TT-NHNNについてまとめて行きたいと思います。

この記事はこんな人のために書いています。

ベトナムに会社設立を考えている。投資したい。設立前の費用が気になる。回収できるのか?知りたい。

たとえば、ベトナムに投資して会社を設立する際、どうしても、設立登記前に発生してしまう費用があります。

例えば、以下の様な費用が生じることがあります。

  • オフィスへの賃料
  • 内装費用
  • コンサルティング費用(設立前にコンサルすることはよくあります)
  • 会計ソフト導入費用

などです。

ベトナムで設立登記前の費用の論点

ベトナムでの法人設立前の費用の支払方法

No.06/2019/TT-NHNNによれば以下の方法が認められるようです。

  • ベトナム国外からの送金(例:日本本社からベトナムや日本のサプライヤーへの支払)
  • 「非居住者口座」を経由し外貨送金もしくはベトナムドンでの設立前準備活動における費用の支払。(ベトナムで銀行口座)

この2つです。図解もしますね。

Article 8. Transfer of capital for the pre-investment stage

1. Before obtaining the investment registration certificate, the notice of the foreign investor’s eligibility to contribute capital or purchase shares/stakes, the license of establishment and operation in accordance with relevant law, signing of PPP contracts, foreign investors are allowed to transfer their investments from overseas or from their accounts in foreign currencies or Vietnamese dong opened at authorized banks to pay for legal expenditures in the pre-investment stage in Vietnam.

ポイントは、「非居住者口座」がマストでなくなったという点かなと思います。

No.06/2019/TT-NHNNが発行される前は、法令上、明確でなかったことから、親会社である日本法人がベトナムにて「非居住者口座」を開設して、そこから設立前費用が支払うことが必要でした。

この法令が発行される前は、設立前費用の支払のためにベトナムの商業銀行又は外国銀行支店において、「非居住者口座」を経由してベトナム国内で発生する必要な設立前費用の支払をしていました。

>>【ベトナム現地法人設立】設立前費用が日本へ送金できない?あなたが、設立前に知っておくべき事

 しかし、No.06/2019/TT-NHNNによれば、設立前(IRC、外国投資家の出資、株式/持分取得の適格性に関する通知、設立運営許可の取得前)に、外国投資家(日本の親会社)からの支払が可能となったのです。

 ※ただし、当該通達に基づく実際の運用はまだ定まっていない可能性もあり、事前に管轄当局へや銀行の確認が必要かもしれません。実務と法律のズレがある可能性があるためです。

Article 8. Transfer of capital for the pre-investment stage

1. Before obtaining the investment registration certificate, the notice of the foreign investor’s eligibility to contribute capital or purchase shares/stakes, the license of establishment and operation in accordance with relevant law, signing of PPP contracts, foreign investors are allowed to transfer their investments from overseas or from their accounts in foreign currencies or Vietnamese dong opened at authorized banks to pay for legal expenditures in the pre-investment stage in Vietnam

引用元:No: 06/2019/TT-NHNN

ベトナム法人が設立してからは?

では、無事会社を設立してからはどうでしょうか?通達06/2019/TT-NHNNによれば以下の方法が考えられます。

  • 資本として振り替える
  • 借入金として振り替える
  • 回収する

この三つです。こちらについて解説していきます。

資本として振り替える

ベトナム子会社の資本金にするということだと解されます。

こちら簡単な具体例を見ていきましょう。

  • 日本本社が、ベトナム内装屋さんに1,000を支払った。
  • その後、ベトナム子会社が設立し、資本金に振り替えるという選択をした。

本社の仕訳

 

借方

金額貸方金額
内装屋さんに支払時立替金1,000

現預金

1,000
ベトナム法人設立後、資本に振り替えた株式(有価証券)1,000

立替金

1,000

子会社の仕訳

 

借方

金額貸方金額
ベトナム法人設立後、資本に振り替えた

費用(内装)

(前払費用など)

1,000

資本金

1,000

ちょっと違和感ありますよね。

こう考えるとわかりやすいかもしれません。

 

借方

金額貸方金額
設立時に払込をうけた現預金1,000

資本金

1,000
内装費を支払った

費用(内装)

(前払費用など)

1,000

現預金

1,000

上記の2つの仕訳をあわせると、最初の説明した仕訳になります。オレンジのところが相殺されます。

借入金として振り替える

ベトナム子会社の借入金にするということだと解されます。

こちら簡単な具体例を見ていきましょう。理屈は、資本金と同じです。

  • 日本本社が、ベトナム内装屋さんに1,000を支払った。
  • その後、ベトナム子会社が設立し、借入金に振り替えるという選択をした。

本社の仕訳

 

借方

金額貸方金額
内装屋さんに支払時立替金1,000

現預金

1,000
ベトナム法人設立後、資本に振り替えた貸付金1,000

立替金

1,000

子会社の仕訳

 

借方

金額貸方金額
ベトナム法人設立後、資本に振り替えた

費用(内装)

(前払費用など)

1,000

借入金

1,000

ちょっと違和感ありますまね。同様に解説していきます。

こう考えるとわかりやすいと思います。ステップを踏むのです。

 

借方

金額貸方金額
設立時に借入した現預金1,000

借入金

1,000
内装費を支払った

費用(内装)

(前払費用など)

1,000

現預金

1,000

上記の2つの仕訳をあわせると、最初の説明した仕訳になりますよね。

立替として、本社が回収する

いったん、立替金として、親会社が支払うということです。子会社のために一旦立て替えるということです。

>>【ベトナム現地法人設立】設立前費用が日本へ送金できない?あなたが、設立前に知っておくべき事

こちら簡単な具体例を見ていきましょう。

  • 日本本社が、ベトナム内装屋さんに1,000を支払った。
  • その後、ベトナム子会社が設立し、借入金に振り替えるという選択をした。

本社の仕訳

 

借方

金額貸方金額
内装屋さんに支払時立替金1,000

現預金

1,000
ベトナム法人設立後、回収した現預金1,000

立替金

1,000

ベトナム子会社の仕訳以下の通りです。

 

借方

金額貸方金額
設立して資本金をふりこんでもらった現預金1,000

資本金

1,000
内装費(立替金)を本社に支払った

費用(内装)

(前払費用など)

1,000

現預金

1,000

 

根拠条文も引用しておきます。

Article 8. Transfer of capital for the pre-investment stage

2. After obtaining the investment registration certificate, the notice of the foreign investor’s eligibility to contribute capital or purchase shares/stakes, the license of establishment and operation, signing of PPP contracts, capital transferred to Vietnam in the pre-investment stage shall be: 

a) Fully or partially converted into stakes;

b) Fully or partially converted into foreign loan capital of FDI enterprises.  In cases of conversion into loan capital, FDI enterprises shall comply with regulations of law on enterprises taking and repaying foreign loans. The loan term begins on the date when the project is granted the investment registration certificate, license of establishment and operation in accordance with specialized law, conclusion of the PPP contract or the date on which parties sign the foreign loan agreement (whichever is later) to the repayment date;

c) Returned to foreign investors in foreign currencies or Vietnamese dong excluding legal expenditures on such stage in Vietnam. 

引用元:No: 06/2019/TT-NHNN

【立替金】論点は、送金と税務上の取り扱い

上記のスキームですが、以下の論点に留意する必要があります。

  • 税務上の論点。損金に落ちるか?
  • 日本に送金できるか?

税務上の論点は、法人税法上、損金になるか?

上記に記載の通り、結果的にベトナム側の負担になっています。従って、これが、損金に落ちるか?ベトナム側で会計処理することに合理性があるのか?と言う点は留意しなければいけません。

日本に送金できるか?

こちらは、立替金として回収する場合ですね。この場合、ベトナムから日本に送金する必要があります。

通達06/2019/TT-NHNNによれば、可能ですが、実際にベトナムから海外に送金となると難しい場合もあります。そのため、事前に銀行に確認するといいと思います。

本日は、通達06/2019/TT-NHNNの重要で実務上も影響が大きいであろうところを解説させて頂きました。

設立前費用の論点は、発生しますので事前にどのようなスキームにするか?確認すると大きなサプライズも防止できますよ。