本日は、ベトナムの契約書で悩む「準拠法」について解説していきたいと思います。
「準拠法」とは以下のようなことです。
契約の当事者間で言い分が食い違った時や、契約の内容が契約書だけでは解釈できないとき、要するに揉めたときに「解釈の基準となる法律」。これを準拠法と言います。
例えば、日本法を準拠法とした場合には、契約書の規定を見るだけでははっきりしない内容がある場合には、日本の民法や商法等の法律に基づいて判断がなされることになります。
具体的文言としては、日本法を準拠法とした場合、
- 「本契約及び本契約に起因または関連して生じる請求は、日本法に準拠し解釈される」
などと記載されます。
ただし、実務上、この準拠法によりなにか問題が起きたということは経験したことがありません。というのは多くの場合、グループ内取引ですのでなにか問題があっても顕在化することはないのですす。
結論:ベトナム法人と日本法人の契約の場合、両国の法令により契約の【準拠法を選択可能】
早速、結論です。
- 外国法人とベトナム法人の契約の場合は、選択可能
- ベトナム法人同士の場合は当然、ベトナムの法律
- 一定のビジネス※の場合はベトナムの法律
※①不動産の権利関係②労働契約,消費者契約において各当事者が選択した法令が,ベトナム法令が規定する労働者及び消費者の最低権益に影響を与える場合など
例えば、日本の親会社とベトナム法人の契約の準拠法についてベトナム法以外を選択することが可能です。つまり、日本の法律に準拠することが可能です。
第 664 条 外国的要素を有する民事関係に適用する法令の確定
1. 外国的要素を有する民事関係に適用する法令は,ベトナム社会主義共和国が加盟する国 際条約又はベトナム法に従って確定される。
2.ベトナム社会主義共和国が加盟する国際条約又はベトナム法に,各当事者が選択権を有 するとの規定がある場合,外国的要素を有する民事関係に適用する法令は,各当事者の選択に従って確定される。
第 683 条 契約
1. この条第 4 項,第 5 項及び第 6 項に規定する場合を除き,契約関係における当事者は, 契約に対する適用法令の選択につき合意することができる。適用法令につき各当事者間 に合意がない場合,その契約と最も密接な関係を有する国の法令が適用される。
4. 契約が不動産を対象とする場合,不動産に対する所有権,その他の権利の移転,不動産 賃借又は義務履行のための不動産の使用32に対する適用法令は不動産所在地の国の法令 である。
5. 労働契約,消費者契約において各当事者が選択した法令が,ベトナム法令が規定する労 働者及び消費者の最低権益に影響を与える場合,ベトナム法令が適用される。
6. 各当事者は,契約に対する適用法令の変更を合意することができるが,第三者が同意し た場合を除き,その変更は第三者が適用法令変更前に得た権利及び合法的利益に影響を 与えることができない。
引用元:民法91/2015/QH13
本日のまとめ
本日は、ベトナムにおける契約書の「準拠法」について解説させて頂きました。日本の会社が相手にいる場合、準拠法は選択することができます。
不動産や労働契約(労働者保護)などのどうしてもベトナムの法律に準拠する必要がある場合やベトナム法人同士の場合にはベトナム法律に準拠する必要があります。
なお、言語についてはベトナム語が必須ではない場合がありますが、以下の観点から必ずベトナム語で作成する実務上の要請があると思っています。
- 税務上のエビデンス(税務担当者への説明)
- 会計法を根拠とした監査書類の作成のため
- ベトナム国での紛争解決(裁判になったら説明する必要あり)
お役にたてれば幸いです。