こんにちはマナラボの菅野です。
今日は『なぜ、利益が2つあるのか?』というテーマでお話しさせて頂きます。
年度末後、決算を行い法人税の確定申告を実施します。例えば、12月決算の場合は3月末まで法人税の確定申告を行う必要があります。
この確定申告の際に会計事務所からよくわからない報告を受けるかと思います。
「ベトナムの税務のルールにより△△の調整をしました。ですから、税務上の利益は〇〇となります」
のような報告です。
「え!意味わからない!」と言う人もいらっしゃるのではないかと思います。
そこでそのロジックを図解を踏まえて解説していきます。今日の記事により、確定申告の理屈と御社のリスクが理解できるようになると思います。
この記事のもくじ
会計と税務の目的がそもそも違うので調整しなければ国が納得しない
なぜ、調整が必要となるか?というと「会計」と「税務」は目的が違うからです。
端的に言えば、
- 会計は投資家のため(例:日本の親会社)
- 税務はその国の政府のため(例:ベトナム政府)
>>3つの”会計”の意味と社長様が最も留意すべき会計とは? 財務会計・税務会計・管理会計
だからです。
私たちも「目的」が違えば、そのプロセスも違うはずです。たとえば、運動を「マッチョな体を手に入れるため」と「脳をスッキリさせてパフォーマンスを上げるため」ではその内容が違ってきますよね。
税務の視点からすると国はお金がほしい!!
そのため、税務の視点からするとなんでもかんでも費用にしたくないのです。なぜならば、法人税という税金は利益(収益から費用を差し位引いた金額)に税率をかけて計算するからです。
その金額を大きくするためには利益額が大きい必要があります。だから「損金不算入」という言葉を頻繁に聞くのです。あなたもリンランの居酒屋などで聞いたことがあるでしょう?「損金不算入だよ。それ!レッドインボイスないもんね」なんて言葉。
>>“損金不算入”ってなんだ?わかりやすく解説 ベトナムにおける典型例とは?
法人税の申告書を作成するための調整は「増やす」「減らす」
続いて、法人税の申告書を作成する時の「調整」についてのロジックと構造を解説します。以下の図をご覧ください。
普段、記帳している帳簿は、会計を前提にして作成しています。決算の締め業務が終わると利益というのが確定します。これは“会計上の利益”です。
しかし、前述のように目的が違うことから調整が必要なんですね。
もう少し踏み込むと「なんでもかんでも費用してたらそれ否認しますよ」という視点をもつとわかりやすいです。ですので上記の図でいうと「損金不算入」です。
例えば、会計上の利益が10,000であっても2,000が損金不算入されてしまったら、税務上の利益(課税所得)は12,000となります。
よくある調整、それは「損金不算入」
では、実務的にどのような調整があるのでしょう?これを解説していきます。
- インボイスに不備がある損金不算入
- 引当金などの見積もりによる損金不算入
- 外貨建債権債務の為替評価による調整
この3つが代表的な調整です。
インボイスがない、不備がある
これはベトナムあるあるですね。レッドインボイスはとても重要な書類だというのはこのことからなのですね。必ず入手しましょう。
その他、不備がある場合(形式)や事業活動に関連していない(実質)場合も、損金算入となります。
>>ベトナム、VATインボイス、レッドインボイスいらないよ〜の意味
引当金などの見積もり
こちらは見積もりであり、確定していないため「損金」としては認められません。ベトナムの税務担当者の気持ちを考えると納得いくと思います。
ただ、確定申告までに確定するのであれば損金算入可能です。
>>ベトナムの従業員へのボーナス・賞与の見込み額でも、損金算入させる方法
外貨建債権債務の為替評価による調整
こちらも調整する必要があります。結論だけおさえて頂くのも結構です。
外貨建の債権債務が期末に残っている場合、その時点における為替レートで換算する必要があります。その場合、レートの違いにより為替差損(未実現為替差損益)というのが発生します。こちらも課税所得を計算する際に調整する必要があります。
例えば、為替差益であれば、“減らす”(なかったことにする)で、差損であれば“増やす”(なかったことにする)調整を実施する必要があります。
ただし、厳密には未実現差損益の取り扱いが外貨建の資産と負債で異なるので、注意する必要があります。外貨建の資産から生じる為替差損益は、調整する必要があります。
本日のまとめ
本日は、なぜ利益が2つあるのか?というテーマでお伝えしました。
それは、会計と税務の目的が違うからということでした。そして、一番典型的な調整は損金不算入でした。
年度末の確定申告の時によくあるやりとりですので留意してください。