こんにちはマナボックスの菅野です。今日は『データドリブンで生産性を向上させた話』というテーマでお伝えします。
この記事のもくじ
「いけてる会社」の共通点とは?
まず、データドリブンのきっかけをお話しします。それはある動画でした。成毛眞氏×藤野英人氏の対談の動画を見ていた時気になる3つのキーワードがありました。それは伸びてる会社の3つのポイント
- 常に顧客視点であること
- 長期的な目線
- データに元に意思決定
です。逆にいうと以下の会社はダメだってことです。
- 徹底的自社都合視点であること(先輩がそうだったからとか)
- 超短期的な視点(四半期だけ気にしている事とか。PL脳だとも言えますね)
- データを見ていない、(これが一番深刻だ!)
まあ失われた30年はこの「データを見ていない」が大きな理由かもしれません。
データドリブンとは何か?
ここで「データドリブン」の定義を確認しましょう!
データドリブンとは、データに基づいて意思決定を行う経営手法を指します。これは、従来の直感や経験に頼った方法とは対照的に、客観的なデータを分析し、そこから得られる洞察を基に行動を決定するものです。ちょっと抽象的でわかりにくいですが「感覚」じゃなくて「数値」例えば「時間」とか「単価」というのを使え!ってことです。
例えば、
- スタッフが大変そうだし頑張っているんで給与あげてくれません?
- 今期、このスタッフが担当している会社の数が15%増えて、生産性も20%向上したので給与を上げるべきです。
であれば後者が「データドリブン」です。これが「いけてる会社」の条件に入っていたんですね。動画のリンクも貼っておきますので是非見てみてください!
これまで感じていた私の痛みとは?マナボックスの問題点
マナボックスベトナムを経営させていただいて素晴らしい経験を多くしてきました。それもこれも優秀なメンバーに恵まれてきたからです。感謝!
ところが一つ大きな問題が生じていました。
売上が伸びてるのに利益が減ってどんどん赤字になっていく。
経営へのアドバイスもしているのになんとも恥ずかしい限りのお話です。でも実際に経営をしてみると安定的に利益を出すのってかなり難しいことですよね。
一言でこの問題の本質を示せば「データドリブン」な経営が出来ていない、これに尽きます。この「売上は増えているのに利益が減っていく」をもう少し掘り下げると以下のようなことが言えます。
- 一人当たりの生産性が下がっている。一人当たりの売上(付加価値)が減っている。
- マネジャーのやさしい「感情」による採用でスタッフがどんどん増えてきてしまった。
ですね。もっと理由をブレークダウンして深堀りできるはずですがまずは上記にフォーカスします。じゃあ、なぜこんな事が起きてしまったの?と理由を分析してみると、以下のことが原因だと判断しました。
- 【クライアントの視点】どのクライアントにどれくらい時間使っているか?のデータを活かせていない。
- 【メンバーの視点】誰がどの業務に?どのクライアントに?どれくらいの時間を使っているの?というデータを活かせていない。
データを活かせてなく、管理者(社長を含むマネジメント層)の「やさしさによる感覚」で「採用」や「値決め」をしていったので結果的に貧しくなっていったのです。特にベトナムのカルチャーが強く関連しているかもしれません。「信頼」(心)ベースの文化なので「論理」より「感情」での行動を優先してしまうんですね。
>>【図解】カルチャー・マップ、8つの指標で見る「文化のズレ」 ビジネスパーソン必須の教養
「信頼」はめっちゃ大事ですけど「意思決定」に「データ」が必要です。どんな国、どんな人種でも同様だと言えるでしょう。「データ」を使わないで「意思決定」してうまくいっていることがあればそれはそもそも運がいいだけ、国自体がいい流れの中にある(人口とか年齢とか)です。たまたまなんですよね。「勘」が全てダメだといっているわけではありません。直感が成功に結びつくこともあるでしょう。しかし「勘」だけでうまくいくことは絶対にありえません。「経験と勘」を共存させてこそ、いい意思決定ができるのです。
このデータの重要性は十分に認識していましたが実際に「データドリブン」はまったくできていませんでした。つまり、データ(日報データ、どのクライアントに?どの作業)は、蓄積していたけど全然見てないという状況が長く続いてしまっていました。喩えて表現するのであれば「健康診断」は受けたけどその「診断書」はだれも見てないというような状況でした。これじゃあ、病気も治らないですよね。我々の会社経営も同じでした。売上が増えていくのに利益が減っていくという「病気」は放置されたままだったんです。それが我々の痛みです。
こんな感じですかね。
データドリブンを支援しているCDO代行との出会い【3,000社のSAASを触った?】
Sento Groupの和嶋さんという人との出会い、そして同様の会計事務所のデータドリブンの事例がきっかけです。もともと和嶋さんとはベトナムでお友達ということもあったんですが、「データを起点に事業成長を支援するデジタルカンパニー」と謳っている企業を日本で設立されていることを私が困っているときに知る事ができました。なおCDOとは以下のことです。
「CDO」とは、Chief Data Officer(チーフデータオフィサー)の略で データの収集と統合、自動化や運用、レポーティング、アクションの提案と実行まで適切なデータ運用(DataOps)を通じて、競合他社との差別化を実現し、収益の促進、コスト削減やプロセスの最適化など組織のもつデータを価値に変える役割を担います
そして3000ほどのSAASを実際に触っていることや「会計事務所」の事例がサポートをお願いする決めてとなりました。
マナボックス はどんな取り組みを実施したのか?
具体的にどんなことをしたのか?まとめると以下の通りです。
- 「顧客マスター」の作成(Airtable) (具体的には旧システムから移行)
- 「作業マスター」の作成(Airtable)(具体的には旧システムから移行)
- 「従業員マスター」の作成(Airtable)(具体的には旧システムから移行)
- 「日報」フォームの作成
です。そして一旦これができてしまえばあとはみんなの「日報」の入力だけです。それだけで以下の「レポート」出るわけです。
- #1.1クライアントごとの時間
- #1.2 タスクごとの時間
- #2 収益性 (顧客1時間あたりの売上:収益性)
- #3 メンバーがどのタスクに?どの顧客に?時間と割いているのか?
実際のBIレポートのサンプルもお見せしますね。
このような感じで見える化すると一発で会社の状況がわかります。
どうやって反対する人をまとめたのか?
このような新しい取り組み、挑戦すると必ず反対者がでます。変化を恐れる人です。私たちの挑戦も例外ではありません。やっぱり反対者がでました。とほほ。
- 「入力に時間がかかる」
- 「フォームがわかりにくい」
- 「面倒だ」
人間には「現状維持バイアス」という恐ろしいバイアスがあるので仕方がないと言えばないのですが…。けれども、進めなければいけません。そこで以下のようなアプローチをしました。2つの視点があります。
- 寄り添う:病院の喩え
- 強制させる:給与の支払いの条件
です。
寄り添う:病院の喩えとインセンティブ
まずはスタッフ側に寄り添うという視点です。私はあなたの味方なんだよ〜と言った視点です。ベトナムではこの「寄り添う」というのが特に大事です。病院の喩えを使いました。あとマナボックスは「収益のシェア」という給与仕組みを導入しているという部分も説明に利用しました。
- 「もしあなたのチームが何かしらの問題で炎上しちゃって残業していることがきちんと数値としてわかれば、会社はあなたのことを守ることができるんだよ」
- 「顧客側に問題があって追加時間がかかっているのであれば、私が交渉して追加報酬を交渉します」
- 「インセンティブの率を増やしたいから時間のデータが必要なんだよ」
「病院のお医者さんと同じだよね。痛い、辛いの「原因」がわからなければ対処することができないでしょ」と。会社はマナボックスのメンバーを助けたいんだ!だからデータが必要なんです!と熱弁したんです。そうするとやっぱりメンバーはわかってくれました。
強制させる:給与支払いの条件
逆の方法も利用しました。トップダウン的な方法です。昔、ベトナム人の先生のセミナーに出席した時にベトナムでは強制的にやらせる経営のほうが上手くいくというようなことを聞いたことがあります。たしかにそう言った側面があるのかもしれません。ということでこちらも含めてみました。
もし給与支払い日までに「日報」を入力してなかったら給与の支払いを実施しないと社長自らが宣言したのです。まあ時間集計しないと残業代も計算できないのでそもそも支払いができないのかもしれませんが。
この方法も効果覿面でした。
そのデータドリブンの効果とは?
上記の通り、マナボックスなりのデードリブンを導入した結果、どうなったのか?をお伝えします。ポイントをまとめると…。
- 生産性が向上した
- ベトナム人のマインドセットが変わった(ROI的な発送)
この2つです。
生産性が向上した
要するに一人当たりの付加価値が向上しました。粗利で言うと7%程度改善しました。きちんと数値として現れてますよね。もともとが結構悪かったのでもっと改善する余地はあるのですがね。
要因は複雑かなとは思うのですが(例えば適材適所、新しい部門の設置)、データが寄与したこと100%間違いありません。
ベトナム人のマインドセットが変わった
またベトナム人のマインドが変わったというのが挙げられます。私が口酸っぱく「データ見て」伝えているのというのもあるのですがこのマインドセットの変化はとてもいい影響を及ぼしていると思います。
「データ見て」と一緒に伝えているのは「給与は自分で決めるんだよ」と伝えているのもこのマインドセットを変化させた原因だと思っています。要は1人あたりの売上が高まればその分「配分」するルールになっているということを継続的に伝えています。ちょっと専門的な言葉になりますが「労働分配率」の目標を定めていて売上と人数によっては1人あたりの給与が増えることになります。例えば「労働分配率」を60%と定めている時、付加価値が100であれば給与は60ですが120まで上げることができれば72となります。人を増やさず、うまくやれば給与が増えることになります。
それに加えて「私のよくないストレスが減った」というのもかなり大きいです。これまでだったら「大変そうだし、忙しいと言われてるので採用していいですか?」「頑張っているんだから給与あげてください」というのがいい意味でなくなりました。前述の通りベトナム人のマインドセットが変わり「データドリブン」となったからです。
まとめとして:心が大事だからこそデータを見る
データドリブンというと「数値ばっかり見て人を大切にしない」みたいな話があるかもしれません。けれでもそれは違って「人が大事だからこそデータドリブンが大事」という考えが大事です。
ロマン✖️算盤
算盤部分もないとロマンが達成できません。まだまだ会社のデータ(お金になる資産)を有効に活用できる余地はあるのでこれからも進めていきたいと思います。