はじめに
2024年5月、ベトナム計画投資省(MPI)は、投資支援基金の設立に関するドラフト法令を公表しました。この法令は、収益や投資資本に関する要件を満たす納税者が基金からの支援を受けられることを目的としています。要件を満たしている会社はお金をもらえるといったことです。」外国投資家への魅力を維持し、特定の分野への投資を促進するために、新しい草案を公開しました。この草案に基づき、ハイテク産業の適格納税者に対して現金助成を行う基金が設立されます。
基金の財源は、ベトナムでのグローバル最小税率政策の適用結果としての追加税収および他の適切な財源から得られます。この現金助成は法人税から免除されます。
この基金は、2024年に運用開始が予定されており、2024年1月1日以降の会計年度に適用される予定です。
この記事のもくじ
基金から現金補助金を受け取る資格のある人は誰か?
どんな会社がこの補助金を得られるか?という点ですね。結論から言うと、かなり大きな会社ばかりが対象です。なのでそこまで日系企業に影響はないかもしれません。というのは大企業ばかりが進出しているわけではないからです。以下を見てもらえるとわかるのですが数百億円を超える売上が対象だったります。この規模でのベトナム現地法人はあまり見たことがありません。
1 対象となる納税者のカテゴリー
この基金は、以下のカテゴリの納税者を対象としています。
- a,ハイテク製品を製造する投資プロジェクト
- b,ハイテク企業
- c,先端技術を使用する投資プロジェクト
- d,研究開発(R&D)センタープロジェクト
2 対象となる基準、収益と資本金
- 収益基準:
- チップ、半導体、AIセクターの場合:年間収益最小 VND10兆(約USD390百万)
- その他のプロジェクトの場合:年間収益最小 VND20兆(約USD780百万)
600億円以上くらいの売上規模です。かなりおおきな会社でしょう。
- 投資資本基準:
- チップ、半導体、AIセクターの場合:投資資本最小 VND6兆(約USD235百万)
- その他のプロジェクトの場合:投資資本最小 VND12兆(約USD470百万)
- R&Dセンタープロジェクトの場合:投資資本最小 VND3兆(約USD118百万)
3 投資資金の配分での基準
- チップ、半導体、AIセクターのプロジェクトの場合:
- 5年以内にVND6兆(約USD235百万)を配分
- または、3年以内にVND5兆(約USD197百万)を配分
- その他のプロジェクトの場合:
- 5年以内にVND12兆(約USD470百万)を配分
- または、3年以内にVND10兆(約USD390百万)を配分
- R&Dセンタープロジェクトの場合:
- 3年以内にVND1兆(約USD39百万)を配分
「配分」とは、特定の目的や期間に応じて資金やリソースを分けて割り当てることを指すかと思います。言い換えるとするならばどのように「投資」したか?ということです。上手に投資している会社は優遇しますよ!というメッセージがあるのでしょう。
この基金からどんな支援があるのか?
上記の表に記載されている基準を満たすすべての納税者は、助成金の申請資格があります。助成金は以下の形式で支給される可能性があるようですね。
研修および人材育成費用
- 対象納税者:上記すべてのカテゴリー
- 支給額:人材育成に費やした実際の費用の割合
研究開発(R&D)費用
- 対象納税者:上記すべてのカテゴリー
- 支給額:R&D費用の割合、R&D支出の量と納税者のカテゴリーに応じて
固定資産への投資
- 対象納税者:
- 上記すべての納税者(カテゴリーdを除く)
- 新たに投資された固定資産が少なくとも3年間ハイテクビジネス活動に使用されることを約束する納税者
- 支給額:新たに投資された固定資産の価値の割合、価値と納税者のカテゴリーに応じて
- 対象納税者:
ハイテク製品製造費用
- 対象納税者:上記すべての納税者(カテゴリーdを除く)
- 支給額:ハイテク製品の地元付加価値の割合。地元付加価値は、製造されたハイテク製品の総販売コストから、海外へのロイヤリティ費用や技術移転費用、輸入材料のコストを除いたものとして定義される
社会インフラシステムへの投資
- 対象納税者:上記すべてのカテゴリー
- 支給額:社会インフラに費やした実際の費用の割合
表にすると以下のようになります。
支援の種類 | 対象納税者 | 支給額、いくら? |
研修および人材育成費用 | 上記すべてのカテゴリー | 人材育成に費やした実際の費用の割合 |
研究開発(R&D)費用 | 上記すべてのカテゴリー | R&D費用の割合、R&D支出の量と納税者のカテゴリーに応じて |
固定資産への投資 | 上記すべてのカテゴリー | 新たに投資された固定資産の価値の割合、価値と納税者のカテゴリーに応じて |
ハイテク製品製造費用 | 上記すべての納税者(カテゴリーdを除く) 新たに投資された固定資産が少なくとも3年間ハイテクビジネス活動に使用されることを約束する納税者 | ハイテク製品の地元付加価値の割合。地元付加価値は、製造されたハイテク製品の総販売コストから、海外へのロイヤリティ費用や技術移転費用、輸入材料のコストを除いたものとして定義される |
社会インフラシステムへの投資 | 上記すべての納税者(カテゴリーdを除く) | 社会インフラに費やした実際の費用の割合 |
もし適用できるのであれば影響が大きいでしょうね。
申請手続きと承認スケジュールの概要
以下の通りです。
- この記事を公表した時点では納税者が支援金申請を提出するタイムラインや申請承認のタイムラインは具体的には規定されていません。
- もし支給される支援金総額が利用可能な基金を超える場合、財務省は政府に追加資金を求めるか、支援金額の調整を行います。追加資金が利用できない場合、投資プロジェクトの評価に基づいて支援金額を調整するか、あるいは特定の納税者カテゴリーに対して一律に削減されます。
- 支援金の対象費用の割合はまだ決定されていません。しかし、最終法令で固定され、3年ごとに見直される予定だそうな。
このドラフト法令は、ベトナムの経済成長を促進し、特にハイテク産業への投資を奨励するための重要なステップです。企業がこの支援をうまく活用することで、ベトナムの技術革新と経済発展に寄与することが期待されるでしょう!