ラボの菅野です。

今日は『VATインボイスの発行時期を解説する』というテーマで政令を深堀していきたいと思っています。あなたばベトナムでビジネスを実施している場合、

VATのインボイスの発行のタイミング

ケースによって異なります。123/2020/ND-CPの9条に規定されているためこちらを解説します。まとめの表でお伝えしますね。1から3項がそれぞれの基本のケースで4項が「特定のケース」です。

このうち1から3は基本としてきちんと理解し、4項は実務上でもよくある「小売」や「定期的なサービスの提供の場合」を理解しておくと実務上の対応もできると思います。

ケース

インボイス発行タイミング

具体例

1

商品販売の場合

商品の所有権または使用権が買い手に移転した時点

例えば、家具を販売し、所有権が移転した時点でインボイスを発行します。

2

サービス提供の場合

サービスの提供が完了した時点(支払いの有無にかかわらず)

例えば、Webデザインサービスを完了したら、支払いがなくてもインボイスを発行します。

3

複数回納品・受け入れの場合

各納品または受け入れごとに発行

例えば、大型機械の複数回にわたる納品ごとにインボイスを発行します。

4.a

定期的なサービス提供の場合

サービス提供者と顧客間のデータ確認後、翌月7日までに発行

例えば、月間の電気使用量が確認された後、電気会社がインボイスを発行します。運送のGRABなんかも該当するでしょう。

4.b

通信・ITサービスの場合(データ接続の確認が必要な場合)

契約に基づいて料金確定後、2ヶ月以内に発行

例えば、通信サービス契約で月額料金が確認された後、インボイスを発行します。

4.c

建設・設置工事の場合

工事の完了・検収時点で発行

例えば、建設会社がプロジェクトを完了したら、その時点でインボイスを発行します。

4.d.1

不動産取引の場合(所有権移転前)

契約に従い分割払いごとに発行

例えば、不動産購入で分割払いの場合、各分割払いごとにインボイスを発行します。

4.d.2

不動産取引の場合(所有権移転後)

所有権移転時に発行

例えば、住宅の所有権が移転したら、すぐにインボイスを発行します。

4.e

原油・ガス販売の場合

売買契約に基づく価格確定時に発行

例えば、原油の価格が決定した時点でインボイスを発行します。

4.g

小売店での販売の場合

その日の終わりにデータを基に発行

例えば、コンビニや飲食店などの販売はその日の終わりにインボイスが発行されます。

4.h

電力供給の場合

取引市場の決済確認後に発行

例えば、電力供給会社が市場取引を確認後、インボイスを発行します。

4.i

石油・ガス小売販売の場合

販売完了時に発行

例えば、ガソリンスタンドで給油が完了したら、その場でインボイスを発行します。

以下条文も引用しておきますね。

第9条 インボイス発行のタイミング

  1. 商品の販売におけるインボイス発行:
    国有財産、没収された財産、国家備蓄品の販売を含む商品販売の場合、代金の支払いが行われるかどうかにかかわらず、商品の所有権または使用権が買い手に移転した時点でインボイスを発行します。

  2. サービス提供におけるインボイス発行:
    代金の支払いが行われるかどうかにかかわらず、サービス提供が完了した時点でインボイスを発行します。ただし、サービスの提供中に前払い金が受け取られた場合には、支払いが受け取られた時点でインボイスを発行します(ただし、会計、監査、金融コンサルティング、税務サービス、評価サービス、技術調査および設計サービス、監督コンサルティング、投資建設プロジェクト策定サービスの契約に基づく前受け金や保証金の支払いは除きます)。

  3. 複数回に分けての納品や受け入れが必要な場合:
    各納品または受け入れの際に、それぞれの商品やサービスの数量と価値を示すインボイスを発行する必要があります。

  4. 特定のケースにおけるインボイス発行のタイミング:

a) 定期的なサービス提供の場合:
大量かつ定期的に提供されるサービス(航空輸送支援サービス、航空燃料供給、電気供給、水道供給、テレビサービス、郵便・配送サービス、通信サービス、物流サービス、ITサービスなど)において、サービス提供者と顧客の間でデータ確認が必要な場合、データ確認完了後にインボイスを発行しますが、提供月の翌月7日まで、または提供サイクル終了後7日以内に発行する必要があります。このサイクルは、サービス提供者と購入者の間で合意されたものとします。

b) 通信サービスおよびITサービス:
データ接続の確認が必要な通信およびITサービスにおいては、契約に基づいてサービス料金が確定した後、2ヶ月以内にインボイスを発行します。

c) 建設・設置工事の場合:
工事の完了・検収時にインボイスを発行します。支払いの有無にかかわらず、完成した工事部分に対してインボイスが発行されます。

d) 不動産取引の場合:

  • 所有権または使用権が移転していない場合、契約に従って分割払いごとにインボイスを発行します。
  • 所有権または使用権が移転した場合、第1項の規定に従ってインボイスを発行します。

e) 原油の販売の場合:
原油、凝縮油およびその加工品の販売においては、売買契約に基づいて価格が確定した時点でインボイスを発行します。

f) ガスの販売の場合:
月ごとに買い手と売り手が納入量を確認し合った時点で、ガス販売に関するインボイスが発行されます。

g) 小売店での食品・飲料の販売の場合:
各店舗がPOSシステムを使用し、買い手がインボイスを要求しない場合、事業所はその日の終わりにデータを基に電子インボイスを発行します。

h) 電力供給の場合:
電力供給者は、電力取引市場の決済が確認された時点でインボイスを発行します。

i) 石油・ガスの小売販売の場合:
販売完了時にインボイスを発行します。

引用元:123/2020/ND-CPの9条

抽象化すると以下のようになるでしょう。

  • 商品の取引では、所有権や使用権の移転時にインボイスを発行する。
  • サービス提供では、サービス完了時、または前払い金や分割払いがある場合、その支払い時にインボイスを発行する。
  • 複数回の納品や受け入れでは、各納品・受け入れのたびにインボイスを発行する。
  • 定期的なサービス(例:電気や通信など)では、月次または合意されたサイクルごとにデータ確認が完了した時点でインボイスを発行する。
  • 特殊な取引(建設、不動産、原油・ガスなど)では、契約や取引完了、検収時にインボイスを発行する。
  • 小売店や即時完了する取引(石油・ガス小売やコンビニ販売など)では、販売完了時にインボイスを発行する。

輸出などの場合は?

上記では「海外への輸出」などは含まれていないのでここも疑問も思うでしょう。海外輸出(EPEへの販売を含む)の場合、「通関の日付」でVATインボイスを発行する必要があります。以下を参照ください。

>>ベトナムでVATインボイスの発行時期を誤ると罰金が指摘される【厳しい現実】

以上、参考になれば幸いです。