ラボの菅野です。

今日は『日本から材料をベトナムの子会社に無償支給した場合の影響』というテーマでお伝えしたいと思います。

日本からベトナムに原材料を送付してそれを加工するビジネスモデルを前提として解説していきます。ベトナム進出企業にとってはよくあるスキームですよね。

無償支給の支給される側の会計処理

ポイントは以下でしょう。日本側とは異なってきますね。

無償であっても「評価額」に基づいて会計処理する

です。無償(日本の本社側はベトナムにお金を請求しない)であっても評価額(関税上の評価額などを利用するでしょう)で以下のような会計処理をします。

例えば評価額が100だと仮定して仕訳を見ていきましょう。ベトナムの勘定科目については以下を参照ください。

【図解あり】ベトナムの勘定科目コードを徹底解説!覚えるための2つのコツと9つの疑問点【保存版】

借方金額貸方金額
152(原材料)100

711(その他収益)

100

ポイントはその他収益というところですね。収益が増えてしまいます。

>>ベトナム貿易で、無償支給かどうか判別する方法 【有償支給とも比較や税務上の論点も解説】

上記では判別する方法についても解説していますよ。

じゃあ製品を作って販売された場合はどうなるの?

上記のように「その他収益」が計上された場合、法人税が増えそうですよね。その影響だけだとお金が出ていくのでちょっと嫌に思うかもと思います。

しかし、よくよく考えればその原材料は製造というプロセスを経て販売されるので「売上原価」になります。販売されればですけどね。

これが損金算入されれば収益と費用が同じ金額となるので法人税はかからないことになります。もちろん期間のずれがあることにる影響はあります。どういうことかというと無償支給の時期が2024年で販売されたのが2025年であれば以下のようになるでしょう。

  • 2024年に20の法人税(100✖️20%)が発生します。
  • 2025年に100が損金となり20の節税

行って来いですね。

無償支給と有償支給を比較しよう

現在、有償支給(日本からベトナム子会社に原材料を販売)している会社が無償支給に変える場合どんな影響があるでしょう?会計と税務に絞って解説してきます。少し難易度が高いかもしれませんが仕訳を用いて解説していきます。

前提条件は以下の通り

  • 原材料の支給は600(評価額も同じ)
  • 販売価格は1,000(便宜上労務費や経費は無視、原価計算の部分も無視します)

無償支給の場合

場面

借方金額貸方金額
#1 支給した

152(原材料)

600711(その他収益)600
#2 製造して販売した(原価)632(売上原価)600152600
#2.2 売上部分112(現預金)

1,000

511(売上)1,000
#3 利益計算 911

1,000(600+1000-600)

421(利益剰余金)1,000
#4 法人税計算821(法人税)

200(1,000*20%)

112(現預金)200

キャッシュフローの影響も見てみましょう。

1,000が増えて200が減りました。そのため800が純額で増えました。

有償支給の場合

場面

借方金額貸方金額
#1 支給した

152(原材料)

600112(現預金)600
#2 製造して販売した(原価)632(売上原価)600152600
#2.2 売上部分112(現預金)

1,000

511(売上)1,000
#3 利益計算911

400(1,000-600)

421(利益剰余金)400
#4 法人税計算821(法人税)

80(400*20%)

112(現預金)80

同様にキャッシュの動きを見て見ましょう。

600が減り、1,000が増え、80が減りました。なので320が増えましたね。

比較してみましょう。

フェーズ無償支給

有償支給

コメント
原材料0

-600

 
売上+1,000

+1,000

 
法人税-200-80

120(600*20%の影響)

キャッシュフロー800320

差額の480(600と120の差額になる)

このように原材料と法人税のところで違いが生じますね。

実際には売上には付加価値を考慮するため有償支給のほうが大きくなるはずですがその辺もここでは無視しています。例えば無償支給の場合、付加価値を重視するのであれば本社への売上は1,000ではなくて400にするでしょう。

本日のまとめ

今日は『日本からベトナムへ有償支給した時の会計処理と税務とキャッシュフロー』についてお伝えしました。

本社への販売価格が同様という前提ですが以下のようにまとめができます。

無償支給の会計処理

無償支給は、支給される材料の評価額を会計上「その他収益」として計上します。これにより収益が発生し、法人税が増える可能性がありますが、材料が製造プロセスを経て販売されると「売上原価」として費用に計上され、最終的には法人税が相殺される形になります。ただし、期間のずれによって、法人税が発生するタイミングが異なる場合があります。

ただ原材料の分が相殺されゼロになるのであって売上に対して法人税がかかる分、有償支給よりは法人税が増えてしまいます。

有償支給の会計処理

有償支給の場合、材料の支給時に現金が動き、原材料費が計上されます。販売後の利益計算では、売上から原材料分のコストの差額に対して法人税がかかるので、無償支給に比べて低くなり、最終的なキャッシュフローにも影響を与えます。

お役に立てれば幸いです。