ラボの菅野です。
つい最近こんなニュースをみました。
- 無許可で荒稼ぎしたベトナムバーの実態 〝接待行為〟への行政指導を何度もスルー
- ベトナム人ガールズバーで当てた28歳女性オーナーのヤリ手ぶり 東京湯島などで6年間4.4億円の荒稼ぎ
です。ベトナムでビジネスをさせてもらっているのでやっぱり気になる見出しですよね。みなさんもX等の投稿で見たかもしれません。
私が気になった言葉は「荒稼ぎ」ですね。会計に関連する仕事しているので、「じゃあ数値は?」っていう思考になってしまうんです。すいません。
法律違反行為は絶対に許されるべきことじゃないのでそれ自体に特に意見はありません。法治国家なので法律は守りましょうというのは当たり前のことです。
この記事のもくじ
荒稼ぎっていうけれども?
きちんと数値を深堀りしていく上でニュースから以下の点の文言を認識しました。
- 6年間 (2019年からという記事もあるので5年間くらいかもしれません)
- 5店舗(店舗数)
- 約4億4000万円(売上金額)
- 5店舗でベトナム人女性が32人在籍(人数)
東京・湯島など都内5店舗で許可なくベトナム人のガールズバーを営業したとして、バー「Queen」の経営者、ズオン・ティ・ミン・ホン容疑者(28)やベトナム国籍の女17人が21日までに風営法違反の疑いで警視庁保安課に逮捕された。
ズオン容疑者は2019年、湯島にベトナム人ガールズバー第1号店をオープン。以降、六本木、神田、錦糸町、上野に店舗を展開し、約6年間で約4億4000万円を売り上げていた。
店はスタンディング方式になっていて、5店舗で19~33歳のベトナム人女性が32人在籍していた
引用元:各ニュースより
この4つのデータだけを見ただけで「あれ?金額小さくない?」と直感的には感じました。
ベトナムガールズバーを数値を使って分析してみよう
実際に数値を使って分析してみましょう。ニュース記事でわかることは上記でも記載の通りの
- 期間
- 店舗数(いつ開店したかはわからないので無視)
- 売上金額
- 人数(ずっと32人体制じゃないとは思います)
でした。ここまでわかると1日あたりの売上や1人当たりの売り上げまで算出することができます。
a | b | c=b/12 | d=c/a | e=d/12 | f=e/25(営業日) | g | h=g/a | i=f/h |
店舗数 | 6年間での売上 | 1年間あたりの売上 | 1店舗あたりの年間売上 | 1店舗あたりの月間売上 | 1日あたりの売上 | 合計人数 | 1店舗あたりの人数 | 1日の1人当たりの売上 |
5 | 440,000,000 | 73,333,333 | 14,666,667 | 1,222,222 | 48,889 | 32 | 6.4 | 7,639 |
そうすると!
1日あたりの売上は約48,889円ですし、1人当たりの売り上げは8千円弱です。
どうです?「荒稼ぎ」ってほどのこともないでしょう?ハノイのリンランのカラオケなどバーなどに行ったことがあればこの48,889円が、おおよそどれくらいのお客さんの数なのか?というのが想像できると思うんです。
「意外とお客さん、少なくない?」となるかと…。
今後、私たちにとって大事なスキルとは?
このことから私が改めて学んだのが
- データを使って批判的な思考を持つことの重要さ
です。
ニュースの影響は大きいです。みんな影響されちゃいます。
- 荒稼ぎしたベトナムバーの実態
- ヤリ手ぶり
という文言からどんなイメージを持ちますか?なんかぼったくりして日本人のお客様からお金を巻き上げて儲けてるベトナム人と思う人が多くいると思います。
ニュースはPVを稼ぐ必要がありますので人間のバイアスにつけ込んできます。
- 嫌儲バイアス : お金儲けをしている人が嫌いになってしまう心理現象→興味持ちやすい
- ネガティビティバイアス :人はポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に注意を向けやすい。記憶にも残りやすい性質を持つ。→逮捕とか捕まったとかというニュースに関心を持ちやすい。
このようなことがあるので見出しを工夫するわけです。なので「荒稼ぎ」とか「ヤリ手」とか。
なのでニュースを見る時には「批判的思考」をマックスで発揮する必要があります。今回の場合で言えば、ニュースで公表されている数値(これが真実かは置いておいて)を使って儲けを計算して批判的思考を発揮しました。
すると「荒稼ぎ」じゃないし、東京の家賃と給与(払っているとしたら)で赤字がすごいことになっていたんじゃないの?となるわけです。もっと言うと合計約4億4000万円って所得隠しをした後の金額なのでは?といった推測もできちゃうわけです。あくまで妄想ですよ。でも1日あたりの売り上げが5万円で東京でやっていけるか? ちょっと難しそうな気がしませんか?
さらに経営する店だけではなく、その私生活も潤っていたことがうかがえる。 本人のものと思われるSNSには、クルーズ船を楽しむ様子や、『一緒に遊びに行きましょう』という文言とともに新車価格100万円近い国産のスポーツバイクにまたがる姿などが投稿されていた
ニュースより
約120万円の月商から、東京の家賃と約6人(1店舗あたりのざっくり平均)のスタッフの給与、その他食材等を差し引いて利益が残るとは考えにくいです。ベトナム人スタッフにほとんど給与を支払っていないとなれば利益が残るかもですけどそれはちょっと考えにくいですよね。ベトナムでは以下のように「所得を除外」されるケースがあります。
>>ベトナム、VATインボイス、レッドインボイスいらないよ〜の意味
『ニュースダイエット』という素晴らしい書籍(ぜひ読んでみてください!)があります。ここにも記載の通り、私たちがニュースに関わるのは
- 時間と労力の無駄
- 人に無力感を覚えさせ、
- 個々の生活を幸せに有意義にするものでもない
だと。散々ですね(笑)。 と私もニュースを見てこの記事を書いているのでなんとも言えないですけれども。ほとんどのニュースは無価値だとも主張されていますし、私の実感としてもそうは思います。私たちはもっと深いことに集中しないといけないのだと思います。
データを使って批判的な思考を持つため具体的な方法
これを記事化したのはベトナム駐在員様が数値やデータを使って意思決定すればもっと日系企業がよくなると信じているからです。
ManaHoc大学の講座にも講座を掲載していく予定ですが、以下のように数値を使った批判的な思考を持つことで正しく情報を認識できますし、会社の意思決定のために有用でしょう。間違いありません。
数値化にこだわる
鬼になるくらいまずは数値にこだわりましょう。
>>正しい意思決定のため「数値化の鬼」になろう!3つのポイント
一人当たりで考える
『世界がもし100人の村だったら』という書籍から大事なことを学ぶことができます。どんなに難しいこともシンプル化する。そうするといろんなことが見えてきます。
>>財務諸表・会計数値が楽しく!簡単!たった一つのコツ、○○あたりにすると会計数値が身近に感じます。
数量と単価に分解する
数値は必ず「数量」と「単価」に分解されます。このような思考を持っておくと数値からストーリーが浮かび上がってきます。
>>【経理の経験のない社長様向け】「数量」と「単価」に分解するだけで、会社の経営分析のレベルがグッと上がります!
きちんと正しく批判的に見ることで「これって間違いなんじゃないの?」と疑問に思うことができます。これがベトナムでのビジネスでも大事です!
ぜひお役にたてれば幸いです。