この記事では、ベトナムの労働法に基づいて作成された「01/PLIV 残業同意書」について、初心者の方にもわかりやすく説明します。日系企業の皆さんにとっても、従業員との信頼関係を築くために大切な書類です。どうぞ最後までお付き合いください。
この記事のもくじ
01/PLIV 残業同意書とは?
「01/PLIV 残業同意書」は、企業と従業員が残業に関して合意するための公式なフォーマットです。ベトナムでは、残業を実施する際に従業員の同意を得るこ
とが法律で義務付けられています。あくまで法律上ですけど。このフォーマットを活用することで、法的リスクを軽減し、従業員の理解と協力を得やすくなります。実際にはシステムを利用している会社も多いと思いますが項目は一緒なはずです。
残業同意書が必要な理由とは
なぜ、この残業同意書が必要なのでしょうか?それをまとめました。正直なところ2つ目の理由が一番大きくそれがあればどんな形式でもいいと思っていますよ。
法律を守るため
ベトナム労働法は、残業時間やその手続きについて厳格な規定を設けています。これを守らないと、罰金が科される可能性があります。従業員との信頼構築
書類に残業理由や条件を明確に記載することで、従業員の安心感につながります。トラブル防止
あらかじめ合意内容を記録することで、後からの誤解や問題を防ぐことができます。
残業合意書01/PLIVフォーマットの内容
ベトナムの労働法に基づく残業合意書の雛形とその解説を提供しています。主な内容は以下の通り。
- 残業合意書の正式な様式(様式番号 01/PLIV)
- 合意書に必要な情報:会社名、残業期間、場所、理由
- 従業員ごとの残業詳細を記録する表
- 使用者または権限を与えられた代表者の署名欄
- 各項目の詳細な説明と注意点
- 残業時間の法定制限:
- 1日の制限(通常日と休日で異なる)
- 月間制限(40時間)
- 年間制限(200時間、特別な場合は300時間)
この雛形は、ベトナムでの適切な残業管理と労働法遵守を支援するために設計されています。
基本情報の記入方法
[1] 残業を実施する会社名を記入
フォーマットには、残業を実施する会社の正式名称を記入します。これにより、会社名義での合意書として有効性が確保されます。[2] 複数の従業員との合意を記録
このフォーマットは、複数の従業員との残業合意をまとめて記録するためのものです。もし1人ずつ個別に合意を取る場合は、表を調整し、それぞれの従業員情報を正確に反映させてください。
残業に関する詳細内容の記入
[3] 残業を行う日付を入力
従業員が実際に残業する日を記載します。例えば「2023年3月15日~2023年3月31日」といった具体的な日付を明確にしましょう。[4] 残業を行う場所を入力
残業が行われる具体的な場所を記載します。例:「ハノイ市内の第2工場」。これは、政令145/2020/ND-CP第59条第1項で必須とされる項目です。[5] 残業の理由を記入
なぜ残業が必要なのか、簡潔でわかりやすく理由を記載します。例えば「アメリカ向け衣料品2件の注文を納期内に完成させるため」といった内容が適切です。
従業員情報と時間管理の記載
[6] タイムシート運用時の省略可能項目
もし会社がタイムシートを使用し、従業員の職務内容や労働時間が一定期間にわたり変更されない場合、合意書内の**「現在の職務」や「通常労働時間」**の記載は省略可能です。ただし、これに該当しない場合は必ず詳細を記載してください。[7] 残業時間の記録
残業時間は、日単位、週単位、月単位など、適切な形式で記録します。複数の期間を組み合わせた形式でも問題ありませんが、法定上限を守ることが必須です。
法定残業時間の制限
注意事項:
ベトナム労働法では、残業時間に厳しい上限が設けられています。これを超えると罰金などのペナルティが科されるリスクがあります。
- 1日の上限: 通常勤務時間の50%以内。ただし、通常勤務時間と残業を含めて1日12時間を超えないこと。
- 祝日・テト(旧正月)・週休日: 1日最大12時間。
- 1か月の上限: 最大40時間。
- 年間の上限: 最大200時間。ただし、特例として300時間まで認められる場合もあります。
最終ステップ
- [8] 雇用主または権限を持つ代表者の署名
最後に、雇用主または正式な権限を持つ代表者が署名と押印を行います。これによって、合意書は正式な効力を持つ書類となります。
表にすればこんな感じです。
項目番号 | 記入内容 | 詳細説明 | 例 |
[1] | 残業を実施する会社名 | 残業を実施する企業の正式名称を記入します。 | ABC Manufacturing |
[2] | 残業を実施する従業員の情報 | 複数の従業員との合意を記録します。個別の場合は表を調整してください。 | Mana Taro、営業担当 |
[3] | 残業を行う日付 | 残業の開始日と終了日を記入します。 | 2023年3月15日~3月31日 |
[4] | 残業を行う場所 | 残業が実施される場所を明確に記載します。 | ハノイ市第2工場 |
[5] | 残業の理由 | 残業の必要性を具体的に記載します。 | 輸出用製品の納期対応 |
[6] | 従業員の通常業務と労働時間 | タイムシートがある場合、省略可能。該当しない場合は必ず記載します。 | 営業活動、1日8時間 |
[7] | 残業時間の記録 | 日単位、週単位、月単位で残業時間を記録します。法定上限を超えないこと。 | 1日2時間、月40時間以内 |
[8] | 雇用主または権限を持つ代表者の署名 | 最終的に雇用主または正式な権限を持つ者が署名・押印を行います。 | 雇用主名 + 印鑑 |
残業時間のまとめ
項目 | 制限内容 |
1日の上限 | 通常勤務時間の50%以内、最大12時間 |
休日の上限 | 1日最大12時間 |
1か月の上限 | 最大40時間 |
年間の上限 | 最大200時間(特例: 300時間) |
このようになります。
残業はいつ従業員と合意する必要があるのか?
ベトナムの労働法では、従業員が安心して働ける環境を提供するために、残業に関する明確なルールが設けられています。2019年労働法第107条第2項aポイントおよび145/2020/ND-CP号令第59条第1項によると、第108条で定められた特別な場合を除き、残業を実施する際には必ず従業員と協議し、その同意を得なければなりません。
具体的には、以下の内容について事前に合意を取る必要があります:
残業時間
従業員がどれだけの時間残業を行うのかを明確にします。残業の実施場所
残業が行われる場所を具体的に記載します。パートタイム作業
パートタイム勤務者が対象の場合、その内容も明確に定めます。
これらの条件をしっかりと話し合い、合意を得ることは、従業員の信頼を得るだけでなく、法的リスクを回避するためにも重要です。
同意なしの残業は罰金のリスクも…
もし、従業員の同意を得ずに残業を実施した場合、会社は厳しいペナルティを受ける可能性があります。(2019年労働法第108条に定められた特例を除く)
罰金額はなんと40,000,000 VNDから50,000,000 VNDにも達します!
(出典:12/2022/ND-CP号令第18条第3項bポイントおよび第6条第1項)
透明性を持った運用が信頼を生む
残業を行う際の透明性は、従業員の働きやすさに直結します。しっかりと事前にルールを決めて、同意を得るプロセスを怠らないことが、長期的に企業と従業員の良好な関係を築くカギとなります。
なお弊社ですとそこまで残業の申請に厳しくしていません。というのは「時間」で給与を払っているわけでなく「成果」に対して報酬を払っているというふうに説明しているからです。特に不満を言われたことはありません。
ただ一般的なベトナムでのビジネス運営において、労働法を遵守することは信頼の礎だと思います。適切に規定を守りながら、効率的かつ円滑に業務を進めていってください。
ベトナムの法律で定められた最大残業時間のガイドライン
ベトナムの労働法では、従業員が過剰な残業を強いられることがないよう、残業時間の上限が明確に規定されています。以下では、1日、1か月、1年ごとの最大残業時間について、わかりやすく解説します。
1日の最大残業時間
通常の勤務日や休日における残業時間は、以下の条件を守らなければなりません。
(1) 通常の勤務日の残業時間
1日の労働時間が規定されている場合
通常の労働時間の50%を超えないこと。 例: 通常労働時間が8時間の場合、残業は4時間以内。1週間の労働時間が規定されている場合
通常の労働時間と残業時間の合計が1日12時間を超えないこと。
例: フレックス制のような場合でも、1日の合計は12時間以内。パートタイム勤務の場合(2019年労働法第32条に基づく)
通常の労働時間と残業時間の合計が1日12時間を超えないこと。
(2) 休日やテト(旧正月)、週休日
- 1日最大12時間まで。
通常の勤務日と同様、休日や祝日でも12時間を超える残業は禁止されています。
1か月の最大残業時間
- 従業員の1か月の総残業時間は40時間を超えないことが法律で定められています。
例: 残業が1日2時間の場合、1か月で20日以上の残業は違法となります。
1年の最大残業時間
- 原則として、年間200時間を超えないこと。
- 例外として、最大300時間まで許可される場合があります。これには特定の条件が適用され、例えば以下のような場合に限られます:
- 緊急な生産や納期の必要性がある業種。
- 政府から特別な許可を受けた場合。
有給労働時間として計算される時間
145/2020/ND-CP号令第58条では、例えば以下の時間は月および年間の残業時間の計算から差し引かれます:
- 勤務時間内の休憩時間(食事や短い休憩)。
- 生理休暇(女性労働者が対象)。
- その他の法定休暇。
これにより、従業員の実質的な負担を軽減し、過剰な働き方を防ぐ仕組みが設けられています。
実践的な例:残業時間の計算シミュレーション
ケース1: 通常勤務日の残業
- 通常労働時間: 8時間
- 残業時間: 4時間
- 合計: 12時間 → 法定上限内
ケース2: 月間の残業
- 1日の残業が2時間の場合、20日間残業すると40時間 → 月間の法定上限内。
ケース3: 年間の残業
- 10か月間、毎月40時間残業した場合: 400時間 → 法定上限を超過。特別な許可が必要。
労働法が定める残業時間の上限は、従業員の健康と働きやすさを守るための重要なルールです。
企業としてのポイント:
- 1日、1か月、1年の上限を厳守する。
- 特例が適用される場合も、事前に適切な手続きを取る。
- 従業員の労働時間を正確に記録・管理する。
まとめ
「01/PLIV 残業合意書」は、労働法を遵守しつつ、従業員との信頼関係を築くための大切なツールです。信頼関係といった意味ではこれ以外の法法もあるとは正直あると思います。ただこのフォーマットを活用することで、法的リスクを軽減し、透明性の高い運営が可能になります。
わからないことがあれば、専門家に相談しながら進めると安心です。正確で信頼される労務管理を目指しましょう!