震えています。久しぶりに。これは大きい。事件です。自分、ベトナムで2016年からビジネスをベトナム人パートナーとしているのでこういうのは自分ごとに感じてしまいます。
ベトナムのホーチミン市で、現地の建設会社であるNippon EPCの総社長のドアン・クォック・バオ氏が、日本の企業と契約した建設プロジェクト資金を不正に着服しました。そして、行方をくらましました。
この事件は、日本企業にとってベトナムでの事業リスクやパートナーシップの管理の重要性を再認識させるものであり、多くの日本人ビジネスパーソンにも影響をあたえそうです。本記事では、この事件の概要やこの事件を抽象化してリスク回避のポイントについて考えます。
この記事のもくじ
事件の経緯と詐欺師の手口【10億円は大きい!】
事件の発端
ある日系企業は、ベトナムのNippon EPC社と合計1710億ドン(約10億円相当)に上る建設契約を締結しました。そしてなんと!Nippon EPCは日系企業の長年のパートナーであったそうです。信頼関係があったと言えますよね。
プロジェクトにはロンアン省やトゥアティエン=フエ省を含む複数の拠点(4つのプロジェクト)での工場建設が含まれてました。プロジェクトの合計はおおよそ2305億ドンなので13億円くらいです。この情報はベトナム語のニュースで公表されている情報を引用しました。
プロジェクト | 場所 | 契約額 |
Kyouwa Vietnam新工場 | ロングアン省カンジュオック郡 | 300億ドン超 |
Okura Vietnam新工場 | トゥアティエン・フエ省フーロック郡 | 1400億ドン近く |
拡張倉庫 | ハノイ市ソックソン郡 | 365億ドン |
Nichirei Suco工場 | ティエンザン省ゴーコン・ドン郡 | 240億ドン超 |
合計 | 2305億ドン |
詐欺行為の発覚
上記の日系企業からの資金を受け取った後、バオ氏は自身が代表を務める別会社VECを通じて下請け契約を結びましたが、5月以降、連絡が取れなくなり、プロジェクトは中断。その後、支払いを受け取っていたにもかかわらず、下請け業者にも未払いが発生し、バオ氏は行方をくらましたと報じられています。飛んじゃったのですね。
下請け業者は未払いの支払いを巡り、建設現場でのトラブルや暴力事件を引き起こし、治安問題にも発展したんだとか。
日系企業→Nippon EPC→下請け会社
のうち下請け会社への支払いが行われていなかったのだからそりゃ怒り心頭ですよね。
詐欺師の理由
この金額を見た時、私は思わずネットフリックスの地面師を思い出しました。このバオ師、すぐバレるという点では地面師とは違いますがものすごい詐欺師だとはいえます。
バオ氏は日系の企業からの建設依頼のために資金を受け取りましたが、これを本来の契約どおりに使用せずに逃亡したとされています。資金を正当な目的以外に使用し、返済もせず逃げたことは、信頼を悪用して利益を不当に得る典型的な詐欺行為です。
またバオ師は発注者に対して虚偽の情報を提供し、最初から工事を実施する意図がなかった可能性があると報じられています。これは相手を誤解させて資金を得る行為であり、詐欺罪の成立要件に該当します。
最終的な顧客への影響
この日系企業は主に「工場を作る」というプロジェクトを担当していたということが読み取れます。ということは「工場」を作りたいという顧客がいたわけですね。
今回の場合、下請け会社への支払いがされなかったことで建設現場は止まってしまいました。つまり工場が未完成のままとなりますよね。そうなると顧客の生産予定はその分を遅れることになるんでものすごい機会損失が発生する可能性もあります。
例えば、通常通りいけば2025年に300億の売上が達成できたはずだれど、今回のせいでおじゃんになったとなったらすごい機会損失の額になりますね。
日本企業にとっての教訓とリスク回避のアイデア💡について
悲しいですが、このような事件から私たちは学ぶ必要があります。「失敗」は科学ですから防止可能です。このような大きな失敗はなるべく防止したほうが日系企業のためでもありベトナムの健全な経済発展にも寄与するんだと私は思っています。
このような事件は、日本企業にとって、ベトナム市場でのリスク管理の重要性を再認識させるものであり、特に以下の点で注意が必要でしょう。
こんかいの事件は以下の点で難しかったと言えます。
「長年のパートナーだった」
信頼関係があったのでしょう。ビアホイでモッハイバー!と言い合った兄弟のような関係だったのかもしれません。なのでとても悲しい事件だということが想像できます。(妄想かもですが)
以下の2点の視点で防止することが有用かもしれません。
- 心の問題をケアする
- 仕組みを入れる
です。
定期的な信頼確認とバイアスの排除
まずは心理学的な問題。
長期の信頼関係による「認知バイアス」や「確証バイアス」に陥りやすい状況では、第三者監査や、内外部の監査機関を利用するのが効果的かもしれません。「信頼しても信用するな!」的なことです。相手側が不正のトライアングルにはまっていないか?のようなことも嗅ぎ分けるスキルも大事でしょうね。
これにより、信頼に基づく「見逃し」を防ぎます。
例えば、私も「仕組み」と「カルチャー作り」によってこのようなバイアスにハマらないように気をつけています。 具体的な事例を挙げれば稲盛和夫さんの受け売りですが「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」をレクチャーしたりしています。またGoogleのパクリですが「Don’t be evil」もよく使っています。
「仕組み」としてはちょっとカルチャーよりですがすべて見える化(オープン)となるような仕組みを構築している点かと思います。
段階的な支払いスケジュールの設定
今回の場合、トータルのプロジェクトのうち70%超も支払っていたということが推測できます。進捗が状況まではわかりませんがこれは前払いしすぎていたとも推測できます。
大規模プロジェクトでは、成果物の進捗に応じた段階的な支払いを導入することが有用だと言われています。かなり細かく(10〜20%ごとなど)わけて支払いをするなどすることが大事ですね。お金をもらったらやる気がなくなるというのは事例としても聞いたことがあります。
契約で定めた各段階の完了確認がないと次の支払いが行われないようにすることで、全額先払いのリスクを軽減します。
この時、契約時に細かな業務要件や進捗報告の頻度、品質基準を契約書に明示しることも大事です。「書いてないものはなかったことと同じ」というのがありますから。違反時の罰則や契約解除条件も明記し、相手に対して確実に守るべき条件を設定します。
参考になれば幸いです。これくらい大きな金額だとやっぱりものすごい大きな影響なので防止することが大事です。
起きてから対応するでは遅いのです。マナボックスベトナムの顧問支援(マナ・ビジネス顧問・ラボ)では、このような悩みの相談にも乗っています。ぜひお試しください。