マナラボによる法令ニュースの解説です。

今日は『ベトナムの内部監査について』です。ベトナムにおける内部監査に関する法令は、2019年1月22日に公布された第05/2019/ND-CP号の政府の法令です。この法令は、国家規制機関、国有公共サービス部門、および企業によって実施される内部監査を規定しています。

この政令について紐解いていこうかと思います。

ベトナム内部監査規定の全体像

以下のようになっています。

内容条文番号の対応
内部監査の範囲と適用主体1, 2
内部監査の実施に関する基本原則3, 4, 5, 6, 7
内部監査の義務と資格基準8, 9, 10, 11, 12
内部監査の手続きとプロセス13, 14, 15, 16, 17
法令の施行と実施責任30, 31, 32

それぞれキーとなるところを解説してきます。

内部監査の目的とは?

そもそも法律が想定している目的とはなんでしょうか?

内部監査の目的:

  1. 内部監査システムの適切な運用を確保し、リスクの予防、検出、対処を支援する。
  2. 単位の管理とリスク管理プロセスの効率性と高いパフォーマンスを確保する。
  3. 運用的および戦略的な目標、計画、使命の達成を支援する。

です。要するに1決算書の不正や誤りを防止、2・3いい経営しているかをチェックすることが目的なのでしょう。

Article 4. Objectives of internal audit

By means of carrying out inspection, assessment and consulting activities, the internal audit may come up with assurances of independence and objectivity and recommendations about the followings:

1. The internal audit system of a unit must have been established and operated in an appropriate manner in order to prevent, detect and handle risks to which the unit may be exposed.

2. Management and risk management processes of a unit must ensure efficiency and high performance

3. Operational and strategic objectives, plans and missions must have been fulfilled.

引用元:第05/2019/ND-CP号

どんな組織が内部監査が必要なのか?

内部監査を実施する必要がある組織は、通常、以下のような組織に該当します:

  1. 上場企業:株式市場に上場している企業は、株主や投資家の利益を保護し、企業の運営を透明かつ効果的に管理するために内部監査を実施する必要があります。

  2. 国有企業:国が所有する企業や国有企業グループは、公共の利益を守り、資産の適切な管理を確保するために内部監査を行う必要があります。

  3. 親会社と子会社のビジネスモデルを採用している企業:親会社と子会社の関係がある企業は、親会社と子会社の間のビジネス取引やリスク管理を適切に監査するために内部監査を実施する必要があります。

  4. 法律によって規定された企業:特定の法律や規制によって内部監査が義務付けられている企業は、その法律や規制に従って内部監査を実施する必要があります。

これらの組織は、内部監査を通じて組織の運営やリスク管理を評価し、適切な改善策を提案することで、組織の透明性、効率性、およびコンプライアンスを確保するための重要な手段として内部監査を実施する必要があります。

Article 10. Internal audit duties of enterprises

1. Enterprises that have to perform the internal audit shall include the followings:

  • a) Listed companies;
  • b) Enterprises with 50% of their charter capital is held by the State, which are parent companies operating in a parent – subsidiary business model; 
  • c) State enterprises which are parent companies operating in a parent – subsidiary business model. 

2. Other enterprises not covered in clause 1 of this Article shall be encouraged to perform the internal audit.

3. Enterprises referred to in this Article may hire independent audit bodies legally accredited to render their audit services. In case where enterprises hire accredited independent auditing bodies to provide internal audit services, they must ensure conformance to fundamental internal audit principles and other requirements for assuring conformance to fundamental internal audit principles as prescribed in Article 5 and Article 6 herein.

Hiring of independent bodies providing internal audit services for enterprises controlled by the Ministry of National Defense and the Ministry of Public Security shall be subject to regulations approved by the Minister of National Defense and the Minister of Public Security.

引用元:第05/2019/ND-CP号

誰が内部監査できるの?任命は?

政令の11条に書いてあります。内部監査担当者の適格基準は以下の通り。

  1. 関連する専攻の学士号を持つこと
  2. 関連する業界で5年以上の実務経験があるか、監査・会計分野で3年以上の経験があること
  3. 法律や業務運営についての一般的な知識を持ち、情報収集・分析・評価・統合のスキルを持つこと
  4. 処分を受けたことがないこと
  5. 監査対象の組織が定める他の基準を満たすこと

これらの基準は、内部監査担当者が適切な資格、経験、倫理基準を持ち、業務を効果的に遂行できるようにするために設けられています。要は「知識」「経験」があって「罪人」じゃないことが必要です。

その権限は適格な機関によって認可されるようです。一般的には企業の経営陣や管理部門が選定することが考えられます。

Article 3. Definition

Person in charge of internal audit means a person authorized by a competent authority to take charge of internal audit at a unit in accordance with laws or regulations of that unit.

引用元:第05/2019/ND-CP号

どんな内部監査を実施するのか?

政令の12条から17条に記載されています。まとめると「リスクが高い」ところに「しっかり計画」して実施して「報告書」を作りなさいということです。

内部監査は組織内で行われる監査活動であり、組織の運営やリスク管理を評価し、改善のための提言を行います。内部監査の手続きは以下のステップで構成されます:

  1. リスク評価: 内部監査部門は、組織内のリスクを評価し、監査の重点領域を特定します。高リスクの部門やプロセスが監査の対象となります。

  2. 年次監査計画の策定: リスク評価に基づいて、内部監査部門は年次監査計画を策定します。この計画には、監査の範囲、頻度、および予定された監査活動が含まれます。

  3. 監査の実施: 監査計画に基づいて、内部監査部門は実地監査を実施します。これには、文書のレビュー、プロセスの評価、関係者へのインタビューなどが含まれます。

  4. 報告書の作成: 監査の結果は報告書としてまとめられます。報告書には、監査された事項、意見、結論、改善すべき点、提言などが含まれます。上場企業であれば「経営陣」、国営企業であれば関連する部門長等に報告します。

    内部監査報告書に関する規定は、以下のポイントを含んでいます:

    • 内部監査報告書の作成と提出:監査された部署の内部監査報告書は、特定の機関に提出される必要があります。
    • 内部監査報告書の内容:監査された事項、意見や結論、弱点、未解決の問題、推奨措置などが明確に記載される必要があります。
    • 内部監査報告書の意見:監査された部門/部署のリーダーシップからの意見が含まれ、異議がある場合はその理由も明確に記載されます。
    • 署名と認証:内部監査報告書には、監査グループや委員会の責任者、内部監査担当者の署名が必要です。
    • 年次監査報告書:年次監査報告書には、内部監査の責任者の署名が必要であり、監査計画、実施された業務、推奨措置などが含まれます。

    これらの規定は、内部監査報告書の適切な作成と提出を通じて、内部監査の透明性と意思決定の支援を目的としています。

  5. 監査後の修正の監視: 監査報告書に基づいて、組織は必要な修正や改善を実施し、内部監査部門はその実施状況を監視します。

  6. 監査記録の管理: 監査活動で作成された記録や文書は適切に管理され、必要な関係者がアクセスできるように保管されます。

これらの手続きを通じて、組織は内部監査を通じてリスクを管理し、運営の透明性と効率性を向上させることができます。