マナラボの菅野です。
今日のテーマは『現金及び預金のDDのチェックリスト』というテーマでお伝えします。
ベトナム現地法人の買収や投資の際、特に重要なのが「現金(小口現金)および預金」に関するデューデリジェンス(DD)です。これは、企業の財務健全性を確認するための第一歩であり、隠れたリスクを洗い出すために不可欠なプロセスです。
特にベトナムでは、企業文化や慣習の違い、コンプライアンスの意識の違いから、日本企業が想定していないリスクが存在することがあります。以下では、ベトナム現地法人の現金および預金に関する具体的なチェックリストを紹介します。
この記事のもくじ
財務DD、現金・預金の財務デューデリジェンスのチェックリスト
チェックリストのサンプルは以下の通りです。あくまでサンプルです。
項目 | チェック |
銀行口座の一覧を閲覧し、各口座の用途や口座開設の経緯を確認する | ◻︎ |
長期間にわたり使用していない口座がないことを確認する | ◻︎ |
銀行口座別の預金残高を把握する。 | ◻︎ |
銀行が発行する残高証明書等により預金残高を確認する。 | ◻︎ |
預金の引き出しに関する(実質的な)制限がないことを確認する | ◻︎ |
小切手の使用頻度を確認する | ◻︎ |
現金出納帳を確認する | ◻︎ |
資金繰りの管理方法を把握し、特に資金需要の季節的変動への対応方法を確認する | ◻︎ |
預金残高の月次推移分析やインタビューベースに基づく情報により、事業用資金(事業に必要な資金)の残高を把握する(オフバランス) | ◻︎ |
それぞれくわしく解説していきますね。
銀行口座の用途および開設経緯の確認
対象会社から口座の一覧を取得し、各口座の具体的な用途(給与支払用、取引先支払用、税金支払用など)と開設の経緯を確認します。不明瞭な用途や不要な口座が存在する場合、不正リスクや資金管理の不透明性が生じる可能性があります。
長期間未使用の口座の確認
長期間にわたり使用されていない口座がないかを確認します。使用されていない口座は、リスクの温床となり得ます。特に、管理が行き届かずに放置されている場合、不正利用や不透明な取引が行われる可能性があります。
銀行口座別の預金残高の把握と残高証明書による確認⭐️
各銀行口座ごとに預金残高を確認し、全体の資金状況を把握します。口座別の詳細な残高を把握することで、資金が適切に分散されているか、集中しているかを評価できます。
残高証明書による確認も必須です。銀行が発行する残高証明書や取引明細書をもとに、預金残高の正確性を確認します。帳簿と実際の残高が一致しているかどうかを検証することで、財務報告の信頼性を向上させます。これが一致していないということは何かの取引が計上されていないということです。
預金の引き出しに関する制限の有無の確認
預金の引き出しに対する実質的な制限(例えば、許可が必要な取引や特定の契約に基づく制限)がないかを確認します。制限がある場合、資金の流動性が低下し、緊急時に迅速な資金調達が困難となる可能性があります。
「小切手」の使用頻度の確認
小切手の使用頻度を確認します。ベトナムでも、小切手取引が行われることがあります。頻繁な小切手取引は、内部統制上のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。
>>【1億円以上の横領か?】チーフアカウンタントの不正の事例とその4つの対策
現金出納帳を確認する
現金出納帳は、企業の日々の現金入出金を記録する帳簿で、不正防止や会計の正確性確保に重要です。出納帳の確認は、現金の流れが正しく記録されているか、経理上のミスがないかを確認するために行います。
DDのチェックポイント:
- 入出金の記録の確認
- 日次残高と実際の現金残高の突合
- 記録の誤記や漏れの確認
- 承認手続きが適切に行われているか確認
です。現地法人の場合この現金を利用した脱税等が見受けられますので注意が必要です。マナボックスのお客様限定となりますが濃い内容の記事を以下から閲覧することができます。
>>M-Lab_ベトナム現地法人の小口現金を使った脱税の手口を解説
資金繰り管理と季節的変動への対応
企業の資金繰りの管理方法を確認し、特に季節的な資金需要の変動への対応が適切に行われているかを評価します。運転資本分析とも関連します。資金繰りを評価するのはやっぱり大事なことです。。
例えば、農業や製造業では、特定の季節に資金需要が集中することがあり、その対応が不十分だと資金繰りに問題が発生します。
預金残高の月次推移分析やインタビューベースに基づく情報により、事業用資金(事業に必要な資金)の残高を把握
預金残高の月次推移を分析し、事業に必要な資金が適切に確保されているかを確認します。特に、インタビューや現地でのヒアリングを通じて、事業運営に必要な最低限の資金が維持されているかを把握することが重要です。
また「簿外資産」の把握という意味で重要です! コミュケーションすることより「記載されていない取引」についても理解できます。
まとめ
このようにDDの際、現金・現預金のチェックリストを活用することで、ベトナム現地法人における現金および預金の管理状況を網羅的に評価でき、不正やリスクの早期発見に役立ちます。また、適切な内部統制の構築と運用が重要であり、財務の透明性を高めるために定期的なモニタリングが推奨されます。
マナボックスの専門家である公認公認会計士が財務・税務DDの支援もしておりますので問い合わせから連絡ください。