ベトナム2019年労働法(法律番号45/2019/QH14)は、ベトナムの労働市場における基本的なルールや規制を定める法律です。特に、企業と労働者の間で守るべき基本的な権利や義務、労働契約の取り扱い、賃金や労働時間の規定など、多岐にわたる内容が盛り込まれています。本記事では、この労働法の全体像と章構成のポイントについてわかりやすく解説します。

ベトナム労働法の章の構成と概要について

ベトナム2019年労働法は、全部で17の章から構成されており、220条にわたる詳細な規定があります。なお弊社のお客様にはエクセルでのダウンロードをできるようにいたしました!リンク先の「ストーリー」と関連させているのでより構造的にわかりやすくなっております。

>>【ベトナム労働法解説!】ストーリーと一枚のマップで全体像とポイントを楽しく学ぶベトナム労働法【構成要素をおさえよう】

以下は弊社お客様がアクセスできるリンクです。

>>M-Lab_ベトナム労働法の構成要素【エクセルでのまとめ】

章と名前

条 の数
第1章 総則8
第2章 雇用、採用及び労働管理4
第3章 労働契約46
第4章 職業教育及び職業能力開発4
第5章 職場での対話,団体交渉,集団労働協約 .27
第6章 賃金15
第7章 労働時間,休憩時間12
第8章 労働規律,物的責任15
第9章 労働安全衛生3
第10章 女性労働者及び両性の平等についての規定8
第11章 未成年労働者及びその他の労働者25
第12章 社会保険、医療保険、失業保険2
第13章 事業所における労働者代表組織9
第14章 労働争議の解決33
第15章 労働に関する国家管理2
第16章 労働監査,労働に関する法令違反処分4
第17章 施行条項3

以下、各章の概要と特徴を見ていきましょう。

第1章 総則【まずはどんな法律も総則から】

総則では、労働法の適用範囲や対象者、基本的な用語の定義が定められています。また、労働者と使用者の権利や義務、国家政策に関する基本的な方向性が示されています。この章は、労働法全体の土台となる部分であり、法の基本理念が記されています。

ポイント:

  • 労働者と使用者の基本的な権利と義務
  • 労働に関する国家の政策

🎥第2章 雇用、採用及び労働管理【一緒に働く仲間を見つけよ】

この章では、労働者の雇用や採用に関する規定、使用者の管理責任について詳述しています。特に、労働者の採用プロセスや雇用契約の締結に関するルールが規定されています。

ポイント:

  • 労働者の採用手続き
  • 使用者の労働者管理責任

🎥第3章 労働契約【仲間の条件を決める】

労働契約に関する詳細な規定が盛り込まれている章です。労働契約の形式、締結時のルール、契約の修正や終了に関する手続きが明確に示されています。試用期間や労働契約の一時停止、労働契約の解約の条件など、企業が知っておくべき重要な規定が含まれています。

ポイント:

  • 労働契約の締結と形式
  • 試用期間とその条件
  • 労働契約の終了と解約手続き

第4章 職業教育及び職業能力開発【育てる】

使用者が提供する職業教育や能力開発に関する規定です。労働者の職業訓練やスキルアップの支援を行うことが求められており、職業訓練契約や訓練費用についてのルールも定められています。

ポイント:

  • 職業訓練とスキル向上のための規定
  • 使用者の責任と職業訓練費用

第5章 職場での対話、団体交渉、集団労働協約

概要: 第5章では、労働者と使用者間の円滑なコミュニケーションを促進するための対話、労働条件を改善するための団体交渉、そしてこれらの交渉を反映した集団労働協約に関する規定がまとめられています。職場での対話や交渉の仕組みは、労働環境の改善と労働者の権利保護を目的としています。

ポイント:

  • 職場での対話を定期的に開催し、労働者の意見を反映させる仕組み。
  • 団体交渉は、労働者代表と使用者が協力して行うものとされる。
  • 集団労働協約は、労働条件を明確にし、労働者の権利を保証するための重要な契約。
  • 労働争議を未然に防ぐためのルールも含まれる。

🎥第6章 賃金【仲間に給与を払いましょう】

概要: 第6章では、賃金の基本的な構成や最低賃金の設定、賃金の支払い方法、期限、追加手当や賞与に関する規定がまとめられています。企業は、労働者に対して適正な賃金を支払い、公平な給与体系を維持する義務があります。また、賃金の前払い、賃金の控除、休業時の賃金など、具体的な支払いルールが規定されています。

ポイント:

  • 最低賃金の設定は政府によって決定される。
  • 賃金支払いの原則と形式が明確化。
  • 時間外労働や深夜労働には追加の賃金が支払われる。
  • 昇給、賞与、手当の制度に関する規定も含まれる。

🎥第7章 労働時間、休憩時間【時間を管理】

概要: 第7章は、労働時間の設定や休憩時間の規定についてまとめられています。通常の労働時間や残業、深夜労働のルールが定められており、労働者の健康と安全を守るための休憩時間も詳細に規定されています。企業は、これらの規定に従って、労働者の労働時間を管理しなければなりません。

ポイント:

  • 通常の労働時間は1日8時間、週48時間が上限。
  • 残業や深夜労働には追加の賃金が必要。
  • 年次有給休暇、週休、祝日休暇が明記されている。
  • 特殊業務には特別な労働時間と休憩時間の規定あり。

🎥第8章 労働規律、物的責任

概要: 第8章は、職場における規律と、労働者が物的な損害を与えた場合の責任について定めています。使用者は、就業規則を整備し、労働者が守るべきルールを明示する必要があります。また、労働者の違反行為に対する処分や、物的損害に対する補償も規定されています。

ポイント:

  • 就業規則の作成と登録が義務化。
  • 労働者の違反行為に対する処分の基準。
  • 労働者が物的損害を与えた場合の賠償責任。

🎥第12章 社会保険、医療保険、失業保険

社会保険と医療保険・失業保険(第168条)

社会保険は、労働者が病気、出産、労働事故、老齢、死亡などのリスクに対応できるようにする制度です。企業と労働者の双方が保険料を負担し、ベトナム社会保険機関に納付します。

医療保険は、労働者の医療費負担を軽減するための制度です。労働者は、医療機関で診察や治療を受ける際に、保険による補助を受けられます。

失業保険は、失業した労働者に対して生活支援を提供する制度です。労働者が失業した場合、給付金を受け取るためには、ハローワークに申請が必要です。

ポイント:

  • 全ての労働者が対象。
  • 企業は保険料の一部を負担する義務がある
  • 労働者の健康維持を目的とする。
  • 公的医療機関で広く利用可能。
  • 給付は勤務期間に応じて決定される。
  • 労働者の生活支援に重要な役割を果たす

定年退職年齢(第169条)

定年退職年齢は、男性が60歳、女性が55歳と規定されていますが、将来は引き上げが予定されています。特定の業種では、異なる年齢設定もあります。

ポイント:

  • 定年退職年齢は徐々に引き上げられる。
  • 特殊業務には例外規定がある。

第14章 労働争議の解決:概要とポイント

第14章では、労働者と使用者間の紛争(労働争議)の解決手続きが規定されています。労働争議は、公正で迅速な解決が求められ、企業にとって重要な章です。

1. 労働争議の総則

労働争議には、個人労働争議と団体労働争議があり、それぞれに異なる解決方法が定められています。解決には公平性と法的遵守が重視されます。

2. 個人労働争議の解決

個人労働争議は、賃金や解雇などの紛争です。まずは労働調停人が介入し、調停が失敗した場合は、労働仲裁評議会が解決します。

3. 団体労働争議の解決

団体労働争議には、権利に関する争議と利益に関する争議の2種類があります。権利争議は法的な権利の侵害が原因で、利益争議は労働条件改善など新たな要求が原因です。

4. ストライキ

ストライキは、団体労働争議の最終手段です。合法的に行うためには厳格な手続きが必要で、違法なストライキには罰則が科されることもあります。

まとめ

第14章は、労働争議の公正な解決を図るための重要な規定がまとめられており、企業がトラブルを未然に防ぐためにも理解が欠かせません。労働者の権利を守りながら、適切な手続きで争議を解決することが求められます。

第9章〜第17章の概要(第12章と第14章を除く)

第9章 労働安全衛生

労働安全衛生に関する規定がまとめられています。企業は、安全な作業環境を提供し、労働者の健康と安全を確保する義務があります。計画の策定、職場での安全対策の実施が求められます。

ポイント:

  • 労働安全衛生計画の策定
  • 職場の安全確保
  • 労働者への健康教育の提供

第10章 女性労働者及び両性の平等に関する規定

この章は、女性労働者の保護と男女平等の推進を目的としています。妊娠中や出産後の女性労働者の特別な保護、妊娠中の解雇の禁止などが規定されています。

ポイント:

  • 妊娠・出産に関する保護
  • 性別による差別の禁止
  • 子供の看病に対する特別手当

第11章 未成年労働者及びその他の労働者に関する規定

未成年労働者や高齢者、障害者など、特別な配慮が必要な労働者に関する規定です。未成年労働者の労働時間や業務内容に制限が設けられています。

ポイント:

  • 未成年労働者の保護
  • 高齢労働者や障害者の権利
  • 特殊労働条件に関する規定

第13章 事業所における労働者代表組織

労働者代表組織(労働組合)の設立や活動に関する規定です。労働組合は、労働者の権利を保護し、使用者との交渉や団体交渉に参加する権利を有します。

ポイント:

  • 労働組合の設立と加入の権利
  • 使用者と労働組合の関係
  • 労働者代表の権利と義務

第15章 労働に関する国家管理

国家が労働法の遵守を監督するための規定です。労働法に関する政策立案、監督、調査など、国家の管理権限が示されています。

ポイント:

  • 国家による労働法の監督
  • 労働環境の改善を目的とした政策立案
  • 労働法違反の監視と処罰

第16章 労働監査、法令違反の処分

労働監査と法令違反に対する処罰に関する規定です。労働監査は、労働法の遵守状況を確認するために行われ、違反が発見された場合は罰則が科されます。

ポイント:

  • 労働監査の実施と内容
  • 監査官の権限
  • 法令違反に対する処罰の詳細

第17章 施行条項

この章では、労働法の施行に関する特別規定がまとめられています。10人未満の小規模事業所には手続きの簡略化が認められるなど、特例が設けられています。

ポイント:

  • 小規模事業所に対する特例
  • 労働法改正時の対応
  • 法の施行日と適用範囲

体労働争議の最終手段です。合法的に行うためには厳格な手続きが必要で、違法なストライキには罰則が科されることもあります。

お役に立てれば幸いです!