2024年11月、ベトナム国会は医療保険法第51/2024/QH15号を採択しました。この改正は、医療保険制度に関わる多くの重要な変更をもたらし、日本企業や駐在員にとっても影響がある内容となっています。本記事では、この改正法のポイントをわかりやすく解説します。

この改正の背景と概要

今回の改正は、ベトナム医療保険制度のさらなる改善を目的としているんだそうです。具体的には、以下を目指しています:

  • 保険給付範囲の拡大
  • 行政手続きの簡素化
  • 診療や治療手続きの効率化
  • デジタルトランスフォーメーションの推進

これに加え、権限の委譲と分権化を進めることで、個人や組織の利便性を高めるとともに、ジェンダー平等を確保し、ベトナムが加盟する国際条約に適合した制度を構築することを目指しています。

新たな法律は2025年7月1日から施行され、企業や労働者に新しい規定が適用されます。

医療保険の改正法の8つの主要ポイント

以下の視点で整理していきましょう。

  1. 加入対象・保険料:誰が対象で、どのように計算されるかを明確化。
  2. 給付範囲:どのようなサービスが提供され、どこまで保障されるかを提示。
  3. 技術革新:利便性向上とデジタルトランスフォーメーションに関する内容を統合。
  4. 遵守と管理:法律の順守や財政管理を強化する内容を統一。

グループ1: 加入対象と保険料に関する規定⭐️

  1. 医療保険加入対象の拡大
    新たに加入対象となるのは以下の通り:

    • 1カ月以上の有期契約や無期契約の労働者。
    • 企業の管理職(給与の有無を問わず)。
    • 12カ月以上の有期契約で働く外国人労働者

⇧これは大きな影響かなと最初は感じました。ただ、以下のように「企業内転勤」がのぞかれているので駐在員には影響ないのかなと。そんなに変わらないですね。

Article 12. Subjects participating in health insurance

c) Employees who are foreign citizens working in Vietnam when working under a fixed-term labor contract with a term of 12 months or more with an employer in Vietnam, except for those who are transferred within the enterprise according to the provisions of the law on foreign employees working in Vietnam or at the time of signing the labor contract, have reached the retirement age according to the provisions of Clause 2, Article 169 of the Labor Code or international treaties to which the Socialist Republic of Vietnam is a member have other provisions;

引用元:51/2024/QH15

  1. 医療保険料の計算方法と上限の設定

    • 医療保険料は月給、年金、手当、基準額を基に計算される。
    • 拠出額の上限は基準額の20倍に設定。

ここは基本変わってないような気がしますね。

グループ2: 医療保険サービスの給付範囲の拡大

  1. 医療保険給付範囲の全国拡大

    • 行政区域に縛られず、全国の初期診療施設や基礎的医療施設で100%の給付を受けられる。
    • 18歳未満の斜視や屈折異常の治療が新たに対象に追加。
  2. 医薬品や医療機器の支払いメカニズム整備

    • 医療施設間で移送された医薬品や医療機器、検査サービスの支払い方法を新たに規定。

グループ3: 技術革新と制度の効率化(DX!)

  1. 電子医療保険カードの導入

    • 2025年1月から電子カードが導入され、利用の利便性と透明性が向上。
  2. 医療保険サービスの質向上

    • 診療・治療プロセスを定期的に更新。
    • 情報技術の活用で基層医療施設の能力を強化。

グループ4: 法律遵守と財政管理

  1. 支払い遅延や回避への厳格な対応

    • 支払い遅延には0.03%/日の遅延利息を課す。
    • 違反には行政罰や刑事責任が適用。
  2. 医療保険基金の運用改善

    • 医療保険収入の92%を診療・治療活動に配分。
    • 予備基金や運営費の割合を8%に引き下げ。

ベトナム進出日本企業への影響と対応策とは?

ここが気になりますよね。どんなインパクトなの?です。一般的に考えられるのは以下でしょうね。

項目

影響

対応策
1. 医療保険加入義務の拡大(グループ1)– 新たに短期契約者や外国人労働者も対象。
– パートタイム労働者も一定条件で加入が必要。
– 労働契約の見直しと加入対象者のリストアップ。
– 外国人従業員への保険加入きちんと説明。企業内転勤についてはきちんと理解。
2. 医療保険料の計算とコスト増加リスク(グループ2)– 企業の保険料負担が増加する可能性。
– 管理職や高所得者を多く抱える企業に特に影響。
– コストシミュレーションの実施。
– 財務計画の調整とコスト管理の強化。
3. 医療保険給付の範囲拡大(グループ2)– 全国どこでも100%の給付が適用。
– 18歳未満の斜視や屈折異常の治療が新たに対象。
– 従業員向け説明会の実施。
– 福利厚生プログラムの見直しと充実化。
4. 電子医療保険カードの導入(グループ3)– システム準備が不十分な場合、混乱の可能性。
– IT管理が求められる。
– 電子カード対応システムの整備。
– IT担当者への教育と運用手順の共有。
5. 支払い遅延や回避への厳格化(グループ4)– 支払い遅延に対し0.03%/日の遅延利息が課される。
– 違反時には行政罰や刑事責任が適用される。
– 支払いスケジュールの自動化。
– 定期的な社内監査でリスク管理を強化。
6. 長期的な影響と戦略的対応(全体)– コスト増加や運用負担が短期的な課題。
– 医療保険制度の効率化が長期的にはメリットとなる。
– 専門家や外部コンサルタントの活用の検討。
– 従業員への周知徹底と連携強化。

まとめ:改正法への対応を始めるべき理由

医療保険法第51/2024/QH15号は、ベトナムで働く労働者や事業者に新たな責任と機会をもたらします。この法律に早めに対応することで、労務管理のリスクを軽減し、従業員の安心をサポートできます。

私たち日系企業の経営者はインパクトをきちんと評価してそれに対して対応することが重要です。特に、日本人も加入必要なの?というのは気になる。

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