こんにちは、マナボックスの菅野です。

今日は『社会保険分に相当する部分の追加支払いと退職金の関係』というテーマでお伝えします。

以下のリンクの通り、従業員を「試用期間」経て採用し場合には、原則として退職金が発生します。

>>【ベトナム労働法】「退職金」についてこんな勘違いをしていませんか?【退職金が発生する4つのケース】

では、どんな場合も退職金が発生してしまうのでしょうか?そうではありません。これについて解説していきます。

もし会社が社会保険分を賃金に追加して払う場合には退職金が発生しない?

結論は上記の通りです。上記で説明した通り「試用期間」中は、社会保険に加入しなくても問題ありませんが、退職金の論点が生じてしまいます。

それを合理的に避けるにはどうしたらいいか?

「試用期間」の間に、使用者である会社が以下のものを法令に従って給与として支払うことで退職金を防止することが可能です。

  • 強制社会保険
  • 医療保険
  • 失業保険

実質的に加入している状態と同様だからでしょう。

第168条 社会保険,医療保険,失業保険への加入

3.強制社会保険,医療保険,失業保険に加入対象でない労働者については,社会保険,医療保険,失業保険に関する法令の規定に従って使用者が労働者に対して支払う強制社会保険,医療保険,失業保険の費用に相当する額につき,使用者は労働者に対して賃金に追加して支払う責任を負う。

引用元:ベトナム2019年労働法 (法律番号45/2019/QH14) 

例えば、試用期間の給与が1,000であれば、社会保険の負担(例えば会社負担のおおよそ20%強)をすれば、実質的に「失業保険」に加入していることなると考えられます。

退職金について会社にとってコスト減になるのはどれか?

会社としては、試用期間の人に対して以下の選択肢があります。

  1. 試用期間から社会保険に加入する
  2. 試用期間は社会保険に加入せず、退職時に退職金を払う
  3. 試用期間は社会保険に加入せず、退職時に退職金は払わない
  4. 試用期間は社会保険に加入しないが、社会保険等に相当する金額を支払い、退職時に退職金は支払いをしない

順に説明していきましょう。

試用期間から社会保険に加入する

まずこちらですが実務的にこの選択肢を選ぶ人は少ないでしょう。なぜならば、試用期間を経て正式に労働契約を結ぶとは限らないからです。

試用期間は社会保険に加入せず、退職時に退職金を払う

このケースを採用している会社が実務上は多い印象です。そのため、潜在的な負債、つまり退職金を支払う義務を負っているため引当金という科目で金額を見積もって計上することを検討する必要があります。負債が増えて費用が増えます。

例えば、期末に2,000ドルの給与の人がいれば2,000✖️50%✖️1/2(2ヶ月は6ヶ月とみなされる)500ドルの潜在的な負債を抱えているということになります。以下のリンク先にて退職手当の計算方法を解説しています。ポイントは「直前の労働契約に従った連続6か月の平均賃金」なので試用期間より単価が通常は大きくなってるという点です。

>>【ベトナム労働法】「退職金」についてこんな勘違いをしていませんか?【退職金が発生する4つのケース】

そのため、従業員を多く抱える会社の負債の金額的なインパクトは小さくならないでしょう。

試用期間は社会保険に加入せず、退職時に退職金は払わない

労働法に違反してしまいます。そのため、外資系企業はこの選択肢をとることはほとんどありません。ただ、ローカル企業については退職金を払わないという実務も多いとよく聞きます。

試用期間は社会保険に加入しないが、社会保険等に相当する金額を支払い、退職時に退職金は支払いをしない

実務上この選択肢を取る会社もほとんどないと思います。ただ、会社としてのキャッシュアウトを減らすのであればこの方法が一番よくなる可能性が高いです。なぜでしょうか?それは、

  • 賃金が入社当初であるため

当たり前かもしれませんが、試用期間の賃金と1年以上働いた以上働いた賃金を比較すれば、後者の方が高くなることがほとんどだからです。

また試用期間の期間は2ヶ月を限度とすることがほとんどです。(一部管理職の場合は180日ですが)このの2ヶ月だけ、社会保険等の金額を会社が負担すれば退職金を負担することがないため、この方法がキャッシュアウトが小さくなる可能性もあります。

ただ厳密には、退職金自体は賃金の25%(直前の連続6か月の平均賃金✖️50%✖︎1/2)なので、賃金単価によっては退職金の方が小さくなる可能性はあるかもしれません。

本日のまとめ

今日は、ベトナムの退職金を支払わなくても良い場合とはどんな時なのか? というテーマとキャッシュアウトはどうなるのか? という観点で解説しました。

  • 「試用期間」中に社会保険等の金額を上乗せして支払いすれば、実質的に失業保険に加入しているということになり、いわゆる退職金を支払う義務は追わない
  • 退職時に退職金を払うか?試用期間中に上乗せして払うか?でどちらのほうがキャッシュアウトが大きくなるか?はケースバイケース。

本日のお話がお役にたてれば幸いです。