ベトナムに子会社を持つ日系企業が直面する課題の一つが、従業員の労働規則違反への対応です。特に再違反のリスクを防ぐためには、再犯防止誓約書の活用が鍵となります。本記事では、誓約書の作成方法を詳しく解説し、即実務で活用できる雛形を提供します。さらに、ベトナム労働法のポイントを押さえた懲戒処分の流れもご紹介します。

なぜベトナムで「再犯防止誓約書」が重要なのか?

誓約書は従業員の規律を保つための実効的なツールでしょう。ただし、それ以上に重要なのは、企業が適切な労務管理の体制を整え、職場の秩序を守ることです。

  • 企業のメリット
    1. 法的リスクの軽減:従業員との合意を明文化することで、後々のトラブルを回避。
    2. 従業員の意識改革:誓約書を通じて規則遵守の重要性を再認識させる。
    3. 透明性の確保:会社規則や懲戒処分の基準を明確化し、信頼関係を構築。

ベトナム労働法に基づく再違反とは?

再違反とは、既に懲戒処分を受けた行為を、懲戒処分が解除される前に繰り返すことを指します。

懲戒処分の解除期間(2019年労働法第126条第1項)

  • 戒告:処分日から3か月後に解除。
  • 昇給停止:処分日から6か月後に解除。
  • 解雇:処分日から3年後に解除。

この期間内に再違反が発生した場合、企業は懲戒処分の強化を行うことができます。

第126条 規律処分の解消,労働規律処分執行の期間の短縮

1.引き続き労働規律違反がない場合,処分の日から,譴責処分を受けた労働者は3か月後,昇給期間の延長の規律処分を受けた労働者は6か月後,免職の規律処分を受けた労働者は3年後に,当然に規律処分は解消される。 2.昇給期間の延長の規律処分を受けた労働者が,期限の半分を経過した後に改善,進歩がみられる場合は,使用者は期限短縮を検討する。

引用元:2019年労働法第126条第1項

 

 

再犯防止誓約書の具体例と作成ガイド

誓約書雛形は以下!

ガイダンスは以下!

項目

内容

記載例
1. 宛先の記入誓約書を提出する相手先(会社名、代表者名など)の正式名称を記入してください。株式会社ABC 代表取締役 山田太郎 様
2. 従業員情報従業員のフルネーム、性別、生年月日、ID番号(発行日・発行地)、現住所、本籍地、職位、電話番号を正確に記載します。氏名:田中一郎
性別:男性
生年月日:1990年1月1日
ID番号:123456789(発行日:2020年1月15日、発行地:東京都)
現住所:東京都新宿区1-1-1
本籍地:東京都港区2-2-2
職位:営業部 部長
電話番号:090-1234-5678
3. 所属部署従業員が所属する部署やチーム名を具体的に記載してください。所属部署:営業部 チームB
4. 誓約内容従業員が遵守すべき具体的な内容を明確に記載します。番号付きの箇条書きを使うと分かりやすくなります。1. 労働法および関連法令を遵守します。
2. 会社規則を厳守します。
3. 2023年9月1日に虚偽申告で受けた懲戒処分を繰り返しません。
5. 誓約者の署名従業員の署名とフルネームを記載します。これにより、誓約書の内容に同意したことを証明します。誓約者:
(署名)田中一郎

参考にしてください!

再違反時の懲戒処分の流れを説明

再違反が発生した場合、ベトナム労働法に基づき、以下の手順で懲戒処分を行います。

懲戒処分の種類

  1. 戒告:軽微な違反に対する最初の警告。
  2. 昇給停止(最大6か月間):改善のチャンスを与える処分。
  3. 降格:深刻な違反に対する処分。
  4. 解雇:重大または再違反時の最終処分。

処分を行う際の留意点(2019年労働法第122条)

  • 従業員の過失を証明する必要がある。
  • 処分には従業員代表組織の参加を求める。
  • 処分の詳細を議事録に記録することが義務付けられている。

第122条 労働規律処分の原則,手順,手続 1.労働規律処分は以下のように規定される:

  • a) 使用者は労働者の過失を証明しなければならない;
  • b) 労働規律処分がされる労働者が構成員である,事業所の労働者代表組織の参加が必須である;
  • c) 労働者は出席しなければならず,自ら弁護し,弁護士又は労働者代表組織に依頼して弁護する権利を有する;満15歳未満である場合は,法定代理人の参加が必須である。
  • d) 労働者は出席しなければならず,自ら弁護し,弁護士又は労働者代表組織に依頼して弁護する権利を有する;

15歳未満である場合は,法定代理人の参加が必須である。 労働規律処分は,議事録に記載されなくてはならない。 2.一つの労働規律違反行為に対して複数の労働規律違反処分を適用することはできない。

3.一人の労働者が同時に複数の労働規律違反行為をした場合,最も重い違反行為に相当する最も高度な規律形式のみを適用する。

4.以下の期間にある労働者に対しては労働規律処分をすることはできない:

  • a) 病気・治療静養休暇中;使用者の同意を得た休暇中;
  • b) 逮捕,拘留中;    
  • c)  この法典第1251項及び2項が規定する違反行為について,立証捜査権限を有する機関の結果及び結論待ちである
  • d)  妊娠している女性労働者;妊娠休暇中,12か月未満の子を養育する労働者。

5.精神病又は自らの行為認識可能性若しくは行為制御可能性がなくなるその他の病気に罹患中の労働者が行った労働規律違反については,労働規律処分をしない。

6.政府は労働規律処分の手順,手続を規定する

誓約書を活用した効果的な従業員管理

成功事例の紹介

たとえば、ある日系企業では、再犯防止誓約書を導入したことで以下の効果を得たようです。

  • 規律違反件数の50%減少
  • 従業員満足度の向上(明確なルールが安心感を与えた)

誓約書だけに頼らない管理

誓約書はあくまで手段の一つです。日常のコミュニケーションや職場環境の整備も重要です。

結論:誓約書を活用して職場の秩序を守る

再犯防止誓約書は、従業員の規律遵守を強化し、企業のリスクを最小限に抑えるための重要なツールです。上記の5つのポイントを正確に反映させた誓約書を作成することで、職場の秩序を維持し、従業員との信頼関係を築くことができます。

ベトナムにおける労働規則違反は、適切な対応を取ることで再発を防ぐことが可能です。再犯防止誓約書を活用し、職場の規律を保ちながら、従業員との信頼関係を築いていきましょう。

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