マナボックスによる法令ニュースです。

今日のテーマは『ノミニー投資とその規制について』です。

ベトナムに限らず外資規制がある国では一般的に利用されているスキームだと思いますが、それに対しての法律や実務はどうなってるの?という疑問があると思うので整理してみました。

ノミニー投資とは?

そもそも「ノミニー」とはなんでしょうか?

ノミニー投資とは、外国の会社がベトナムで事業を行う際に、ベトナムの人または会社の名前を借りて、自分たちの会社を設立する方法です。この方法を使う理由は、一部の外資規制などのルールを合理的に避けるためです。例えば、外国の企業が特定の業界に入ることが禁止されている場合や、現地の人や企業と一緒にビジネスを始めることが必須であったり、外国からの資金投入に制限があったりすることがあります。

これらの規制を cleverly navigateするために、外国の企業は、名前だけの現地の株主を立てて企業を設立したり、名目上の合弁事業を立ち上げたりします。また、株式会社は3名以上の投資家が求められるのでその人数を調整するために名義を借りることもあります。

これによって、実際には外国の企業が現地のビジネスを完全にコントロールできるようになります。この方法を、ノミニー(名義貸し)投資とか、簡単に言ってノミニー投資と呼びます。

ノミニー投資っていうのは、ちょっとした「かくれんぼ」のようなものだといえるかもしれません。想像してみてください。あなたがとっても遊びたい秘密基地があります。その基地には「特定のメンバーしか入れない」というルールがあるとしましょう。でも、残念ながらあなたはそのメンバーじゃない。そんな時どうしましょう?

ここで登場するのが「ノミニー」、つまり「代わりの人」です。

喩えてみましょう。

ノミニー投資っていうのは、実はとてもシンプルな考え方です。これを一番わかりやすく説明するなら、「お友達を通して何かを借りる」みたいなものです。

例えば、あなたがとても遊びたい特別なゲームがあるけど、そのゲームは「特定の友達の家にしかない」とします。でも、直接その友達に借りに行くのはルール違反で、あなたはそのゲームを自分で遊ぶことができません。そこで、あなたは別の友達を通じて、「私の代わりにそのゲームを借りてきて」と頼むことにしました。すると、その友達があなたのためにゲームを借りてきてくれて、あなたはゲームを遊ぶことができます。

この場合、あなたの代わりにゲームを借りてきてくれる友達が「ノミニー」になります。つまり、ノミニー投資とは、自分では直接行えない投資を、他の人が自分の代わりに行ってくれることを指します。

この場合、あなたの友達が「ノミニー」、つまりあなたの代わりに行動してくれる人のことです。ノミニー投資も同じで、自分が直接行動できない場合に、別の人が代わりに名前を使って投資をしてくれる方法なんですね。

ノミニーに関する2020年のベトナムのルール変更による規制強化

そもそもノミニーが適法か?という点についてはいろんな意見があります。ベトナムでは、過去ノミニー投資を明示的に規制する法律はなくベトナムの当局のスタンスは曖昧でした。実務上も当然にノミニーによるスキームが利用されていたようです。しかしベトナムでは2020年の投資法改正で以下のように規制が強化されました。

この2020年の法改正により、偽装民事取引に基づく投資に対して投資ライセンスの取消しやプロジェクトの終結命令が下されることが可能になったと理解できます。

では根拠条文なんのか?です。一般的に投資法(第48条2項e号)やこの投資法を補完するための政令が2021年に制定された31/2021/ND-CPの59条1項が根拠となります。

FakeやSham civil transactionという文言があります。

Article 48. Termination of investment project operations

1. Investors terminate investment activities and investment projects in the following cases:

e) Investors carry out investment activities on the basis of fake civil transactions according to the provisions of civil law;

引用元:Law No. 61/2020/QH14(ベトナム投資法)

Article 59. Termination of an investment project in case the investor conducts investment activities on the basis of a sham civil transaction in accordance with the civil law

1. The investment registration authority shall decide to terminate whole or part of an investment project if the investment conducts investment activities on the basis of a sham civil transaction according to regulations of the civil law or the effective judgment or decision of the court or arbitral award .

引用元:No. 31/2021/ND-CP

ただし、どのようなケースが偽装民事取引に該当するのかについては、具体的な定義が設けられておらず、裁判所の判断に委ねられています。正直、なんとでも言えちゃいますよね。ノミニーの場合、実際に依頼した人が出資してるわけですし、「偽造」じゃないよ!という主張も十分可能です。

これにより、ノミニー投資を行っている企業は不確実性が増し、今後の法の運用に注目が集まっているといえるでしょう。

ノミニーに関する他の国の概要

ノミニー投資に関する規制はアジア各国で異なりますが、多くの国で厳しい規制(あくまで法律上のお話し)が設けられています。

以下は、いくつかの国におけるノミニー投資に対する法律や規制の概要です。あくまで概要なので詳細はその国の専門家に確認しましょう。

フィリピン

フィリピンでは、ノミニー投資は「アンチダミー法」により厳しく規制されているようです。この法律は、外資規制をかいくぐる為にフィリピン人から名義を借りてダミーとして利用する行為を罰する法律です。

外国人がフィリピン国民の名前を借りて事業を行うことを禁止しており、違反した場合、刑事罰の対象となり得ます。この法律は、外国人による特定の産業への参入を制限することで、国内の利益を保護することを目的としているのでしょう。

ただし、フィリピン法人のノミニー株主・取締役に関する SECへの申告義務などがあることから認められているようにも理解できます。

タイ

タイでは、外国人による事業の所有や運営に関して、外国人事業法(FBA)によって厳しい制限が設けられています。ノミニーを利用してこれらの規制を回避する行為は違法とされており、タイ人が外国人と結託して外資規制を回避する行為は、懲役刑や罰金に処される可能性があるようです。

インドネシア

インドネシアでは、基本的に他の人の名前を使って会社を作る「ノミニー」方式は許されていません。2007年の第25号規則には、「ある人または会社が他の人の代わりに外国資本の会社(PMA)や国内資本の会社(PMDN)の株式を持つこと、つまり名義貸しは禁じられている」とはっきり書かれています。

もしノミニーを使って会社を立ち上げたことが発覚したら、大きなトラブルになる可能性が高いです。しかし、実際には政府や警察がこのような会社設立をすべて厳しく監視することは難しいというのが現実です。

中国

中国では、外国人投資家に対する規制があり、特定の産業では外国人の投資が制限されています。ノミニー投資を通じてこれらの規制を回避する行為は、法律により禁止されており、中国政府は外国人投資家が実質的な支配を行うための名義貸し(ノミニー)に対しても監視を強化しているようです。

最終的には国に損があるか?の判断

今日はノミニーついて解説しました。

上記の通り、2020年にベトナムの投資法が改正され、ノミニー投資に対する規制がより厳しくなりました。この改正によって、ノミニー投資が偽装取引とみなされた場合、投資プロジェクトを停止させたり、投資ライセンスを取り消したりすることができるようになりました。つまり、ノミニー投資を行っていると、営業停止やライセンスの取り消しというリスクに直面する可能性が出てきたのです。

ただし、「偽装取引」とは具体的にどんな状況を指すのか明確に定められておらず、最終的には裁判所がその判断を下します。そのため、ノミニー投資のリスクがどれだけ増えたかを正確に言うのは難しい状況です。

しかしながら、この法改正は、ベトナム政府がノミニー投資に問題意識を持ち、その規制を強めようとしているという動きが読み取れますよね。「偽装取引」の定義をベトナムに対して大きな損をもたらしてしまった場合と考えるとスッキリするかもしれません。だって会社の投資は自由ですから。だれが投資家(株主)になってもそれは資本主義的な考えかたであれば問題ないはです。本来誰も否定すべきことではありません。

すこしでも参考になれば幸いです。