ラボの菅野です。
「えっ、これ会計では費用にしてるのに、税務じゃダメなの?」
そんなふうに驚いたこと、ありませんか? 実はそれ、”税効果会計”の世界ではあるあるなんです。
この記事では、会計と税務でなぜズレが生じるのか、その”ズレの正体”である「一時差異」と「永久差異」について、やさしく・しっかり解説していきます。そして後半では、よくある“税務否認パターン”を一覧表でご紹介! 実務での「税務調査あるある」も交えて、日々の経理がちょっとラクになるヒントをお届けします。
なおベトナム法人税申告書の構成要素は以下ので徹底解説しています。この時の会計から税務への調整
>>【完全解説】ベトナム法人税申告書03/TNDNとは?申告書の構造と読み方を図解でわかりやすく!
この記事のもくじ
一時差異と永久差異って、なにが違うの?
会計と税務の違いでもこの違いをきちんと理解する時にこの「一時」と「永久」の違いを理解する必要があります!
🔸 一時差異とは?
将来的に会計と税務が“同じになる”ズレ
たとえば会計では今年費用にしても、税務では「いや、それはまだ損金にできないよ」と後回しにされるようなパターン。 でも将来的に損金になるなら、それは一時差異です。言い換えればタイミングの違いだけの差異だということになります。
例:
- 会計で計上した賞与引当金 → 税務では支給時に損金算入(タイミングの違い)
- 会計で定額法の減価償却 → 税務では定率法 → タイミングの違い
🔸 永久差異とは?
将来もずーっと“埋まらない”ズレ
税務上、どうあっても損金にならない費用。あるいは非課税の収益。 つまり、会計では費用・収益として処理しても、税務は完全スルー。これはもう仲直りできません。
例:
- 交際費(上限超えた分)
- 罰金・違約金
- インボイスのない経費
- 寄附金(限度額オーバー)
- 非課税収益(生命保険の受取金など)
一時差異と永久差異のちがいをサクッと表で解説
ちょっと難しいですけど「税効果会計」も含めて説明します。
比較項目 | 一時差異 | 永久差異 |
---|---|---|
⭐️解消の有無 | 将来に解消する | 解消しない(永遠にズレる) |
税効果会計 | 対象(繰延税金計上) | 対象外(実効税率に影響) |
よくある例 | 減価償却、賞与引当金 | 交際費、罰金、寄附金 |
実務への影響 | 将来の税金負担がズレる | 当期の税額が変わる |
【保存版】税務否認パターンリスト(日本 vs ベトナム)
税務調査で「そこ否認されるの!?」というポイント、実は結構ありますよね。
しかも日本とベトナムでは“会計と税務のズレ方”や“証憑の基準”が違うことも多い。
そこで今回は、実務でよくある 「税務否認されやすい処理」を、日本とベトナムの両方で並べて整理しました👇
🇯🇵 日本:税務否認パターン一覧
項目名 | 差異の種類 | 否認理由 | 調査で見られるポイント | 実務対策 |
---|---|---|---|---|
交際費(飲食・接待) | 永久差異 | 損金算入限度超え、私的利用疑い | 領収書の宛名、参加者、目的の記録 | 社内規程+報告様式+金額管理 |
インボイスのない経費 | 永久差異 | 証憑不備で形式的に損金否認 | 領収書の不備(但書なし・金額不明等) | 電帳法対応+インボイス取得徹底 |
仮払金の未精算 | 永久差異 | 実体不明 or 私的流用と見なされる | 精算までの期間、使途の妥当性 | 社内立替ルール・期日管理 |
賞与引当金(未払) | 一時差異 | 税務上は“支給時”しか損金にならない | 支給日が申告期限後かどうか | 年度末支給スケジュールと連携 |
減価償却(償却率・方法差) | 一時差異 | 会計と税務で償却速度が違う | 償却資産台帳、耐用年数・方法の妥当性 | 償却方法を税法準拠で管理 |
罰金・科料・違約金 | 永久差異 | 原則、損金不算入 | 勘定科目に「罰金」や「違約金」がないか | 補助科目で明確化し税務調整 |
寄附金 | 永久差異 | 限度超過 or 公益性に乏しい | 寄附先・契約内容・金額の妥当性 | 寄附先選定+上限計算+社内稟議 |
福利厚生費(社員旅行等) | 永久差異 | 一部の社員のみ対象だと私的と見なされる | 全社員対象か?通知・実施記録はあるか? | 利用条件を明文化+平等性を確保 |
海外出張費 | 一時差異 or 永久差異 | 私的日程含む or 実費超過 | 日程表・航空券・ホテル明細 | 出張報告書+費用精算ルール |
🇻🇳 ベトナム:税務否認パターン一覧(VASとの違いに注目)
項目名 | 差異の種類 | 否認理由 | 調査ポイント | 実務対策 |
---|---|---|---|---|
レッドインボイス不備の経費支出 | 永久差異 | 正規インボイスなし(特にVAT) | 赤インボイスの有無、登録番号・宛名 | 必ずVATインボイスを取得+銀行振込 |
労働許可証(WP)や労働契約がない場合の人件費 | 永久差異 | 証憑がないため。赴任時などは避けられない。 | WPや労働許可証をチェック | WPや労働許可証をなるべく早く準備 |
社員への福利厚生費(旅行等) | 永久差異 | 1ヶ月分給与の限度を超えると損金否認 スタッフ以外の家族 | 総額と従業員数、社内規程の有無 | 限度額の試算+制度の明文化 |
減価償却(税法超過部分) | 一時差異 | 耐用年数・償却率が法定外 | 償却明細と税法準拠かの比較 | 税務ルール準拠で償却設定 |
賞与の未払処理 | 一時差異 | 税務申告期限までに未払いなら損金不可 | 支給日が決算後3ヶ月以内か? | 支給スケジュール管理 |
親会社へのサービス料 | 永久差異 | 契約・成果物・価格妥当性が説明できないと否認 | 契約書・請求書・提供内容 | 契約締結+成果レポート+移転価格資料 |
高金利借入の利息 | 永久差異 | 関係会社からの高利貸付(上限超過) | 年利率の確認、資本構成 | 借入利率の管理、資本増強 |
貸倒引当金・評価損 | 一時差異 | 実損がない段階では損金不可(税務は実現主義) | 債権年齢・訴訟や催促の証拠 | 債権管理体制+評価要件の整備 |
固定資産の高額車両(社用車等) | 永久差異 | 特定用途・高額すぎると償却一部否認 | 車両使用実態・取得金額 | 購入計画時点で税務相談 |
ベトナムと日本で違うところもありますね。
ちょっと日本とベトナムを比べてみると…
ざっくりですが比較してみます。
共通して否認されやすいもの | 違いが出やすいもの |
---|---|
✅ 証憑不備(領収書・インボイス) | 🇯🇵 交際費上限/ 🇻🇳 インボイス+銀行振込の要件 |
✅ 福利厚生の不均等性 | 🇯🇵 社員旅行の平等性/ 🇻🇳 1ヶ月給与限度 |
✅ 減価償却の税法逸脱 | 🇯🇵 定額・定率法のズレ/ 🇻🇳 耐用年数+償却率制限 |
✅ 未払賞与の処理 | 両国とも「期限までに支給されたか?」がカギ |
まとめ:ズレの理解が、経理の「守り」を強くする!
- 📌「会計OK=税務OK」じゃない。税務は別ルールで動いている
- 📌 証憑・支払方法・スケジュール、全部が税務の判断材料
- 📌 特に海外では“現地ルール”の把握が命!現地経理との連携も重要
会計と税務は、そもそものルールが違う。 でも、その“ズレ”がどんなものかを知っていれば、いろんな対策ができます。
永久はこんな風に考えるからこういう対策をしてこういう心構えでいないとなあ。とかですね。
この記事で紹介した差異の考え方や、税務調査で見られやすいポイントを意識することで、 より安心・正確な経営ができるようになります。