ベトナムで働く際、雇用主と従業員の間で結ぶ「労働契約」はとても大切なものです。特に、日本からベトナムへ進出した企業や現地で働く方にとって、契約の内容をしっかり理解しておくことは、安心して働くための第一歩ですよね。日本との違いもあると思います。

今回は、ベトナムで認められている「有期契約」と「無期契約」の2種類について、やさしく、わかりやすく解説していきます。

ちょっと難しそうに聞こえるかもしれませんが、簡単に言えばこれは「働くときのルールを書いた約束ごと」のことです。
たとえば、

  • どんな仕事をするのか
  • どこで働くのか
  • お給料はいくらか
  • お休みはあるのか

…などが書かれています。

この契約をちゃんと読んで、納得してからサインすることがとても大事なんです。

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ベトナムの労働契約には2種類ある

2021年1月1日から使われているベトナムの労働法(2019年版)では、労働契約は次の2つの種類に決まっています。

📘 【法律の根拠】労働法 第20条 第1項(2019年版)

「労働契約は、次のいずれかで締結されなければならない:
a) 無期労働契約(終了の時期を定めない)
b) 有期労働契約(最大36ヶ月までの契約)」

つまり、ベトナムでは今、次のように決まっています。

  1. 有期契約(ゆうきけいやく):期間が決まっている(最長3年)
  2. 無期契約(むきけいやく):いつまで働くか決まっていない

余談ですが、ベトナムでは以前、「1年未満の短期労働契約」(季節労働)が認められていましたが、2021年施行の労働法改正により廃止されました。理由は、一部の企業がこの契約を繰り返し使って正社員扱いを避け、社会保険の負担を逃れるなど、労働者の権利を軽視するケースが多発したためです。現在は、有期(最長36ヶ月)か無期契約の2種類に統一され、労働者の雇用安定や保険制度の適用がより確実に守られるようになりました。

有期契約ってどんなもの?

それではまず、「有期契約」についてやさしく説明しますね。

有期契約のポイント

  • 「〇年〇月〇日まで」と、働く期間が決まっている契約です。
  • ベトナムの法律では、**最長36ヶ月(3年)**と決まっています。
  • 契約期間が終わったら、また新しい契約を結ぶか、無期契約に切り替わることがあります。

📘 【法律の根拠】労働法 第20条 第1項 b)

「有期労働契約とは、契約発効日から36ヶ月以内で、両者が契約期間と終了日を定めたものをいう。」

🌱たとえばこんなとき…

  • 新しく入社した社員に対して、会社が「まずは2年間契約して様子を見よう」と考えるとき。
  • プロジェクトなど期間が決まっている仕事を任せるとき。

基本最初の労働契約は「有期」でしょうね。

無期契約ってどんなもの?

今度は、無期契約(むきけいやく)について見てみましょう。有期→無期の流れになると思います。

✅ 無期契約のポイント

  • 働く期間が決まっていない契約です。
  • 一度契約すると、ずっと働き続けられる可能性があるので、雇用がとても安定します。
  • 契約の終わりがないので、何度も契約を結び直す必要はありません。

📘 【法律の根拠】労働法 第20条 第1項 a)

「無期労働契約とは、両当事者が契約期間または契約終了の時期を定めていない労働契約をいう。」

こんなときに使われます…

  • 同じ会社で長く働く社員に対して。
  • 有期契約を2回更新した後(法律上、自動的に無期契約に切り替えになります)。

📘 【関連条文】労働法 第20条 第2項

有期契約を2回以上締結した場合、次の契約は無期契約にする必要があります。

2つのベトナム労働契約のちがいを比べてみよう!

以下のように表にするとわかりやすいでしょう。

比べるポイント有期契約無期契約
契約期間最長36ヶ月(3年)
期間の決まりなし
更新の回数1回までOK、3回目は無期契約に
何回も更新の必要なし
労働者から解約の通知(労働法2019 第35条・第36条)契約期間によって3日〜30日前
通常45日前までに通知
雇用の安定性ちょっと不安定
とても安定している
社会保険1ヶ月未満:加入義務なし
1ヶ月〜3ヶ月未満:社会保険、労災保険のみ加入
3ヶ月以上:社会保険・健康保険・労災保険すべて加入
12ヶ月以上:失業保険への加入も必須
以下すべて加入必須:
・社会保険(SI)
・健康保険(HI)
・失業保険(UI)
よくある場面試用後の社員、期間限定のプロジェクトなど
正社員、長く勤める予定の人

法的根拠:

  • 2019年労働法 第20条・第35条・第36条
  • 政令145/2020/ND-CP 第7条
  • 社会保険法(2014年)第2条
  • 健康保険法(2008年・2014年改正)第12条
  • 雇用法(2013年)第43条
  • 労働安全衛生法(2015年)第43条

このようになります。平均勤務期間が3年程度の会社であれば「無期契約」まで行かないケースもあると思います。

実務でよくある質問とアドバイス

ここからは、会社や働く人たちがよく悩む実際の場面でのポイントについて解説しますね。

❓Q1:有期契約って、何年くらいがいいの?

📌 答え:会社の方針や仕事の内容によって異なりますが、「最初は1年契約」が一般的かもしれません。

  • 1年くらい働いてもらって、会社と本人の両方が「続けたい」と思えば、再契約すればOK。
  • 3年フルで契約するケースは、長期プロジェクトなど「はじめから長く続く仕事」でよく使われます。

💡 アドバイス:
「いきなり無期契約を結ぶのはちょっと不安…」というときには、まず1年の有期契約からスタートするのが安心です。

❓Q2:契約が切れたあと、続けて働くとどうなるの?

📘 【法律の根拠】労働法 第20条 第2項

契約終了後30日以内に新しい契約を結ばない場合、無期契約に自動で切り替わります。

  • つまり、契約が終わったあとにそのまま働き続けて、1ヶ月以上経ってしまったら…
    自動的に「無期契約」になってしまうんです!

💡 注意点:
会社は、「更新のタイミングを忘れていた」「手続きを後回しにしていた」というだけで、法律上、無期契約に切り替わるリスクがあります。「有期契約」であれば最長36ヶ月であり1回更新できるので法律上は、6年ほど「有期契約」のまま雇用することができます。法律上ですけどね。

❓Q3:雇用主が間違った契約を結んだらどうなるの?

📘 【法律の根拠】政令 12/2022/ND-CP 第9条

契約内容が法律に合っていない場合、雇用主には以下のような罰金(最大2,500万ドン)が科されます。

  • 書面契約じゃない
  • 間違った契約種類で契約した
  • 契約に必要な内容が書かれていない

💡 会社にとっても、契約をちゃんと守ることはとても大切なんです。

まとめ

はじめての国、はじめての職場、はじめての契約。
不安もきっとたくさんあると思います。
でも、そんなときこそ、「知っていること」があなたの力になります。 

「知識は力なり」──フランシス・ベーコン
小さな一歩の前に、まず“知る”ことから始めましょう。あなたの未来を守る力になります。

契約の種類やルールを少しでも理解していれば、
もし何か起こっても、「ちゃんと話せる・守れる・選べる」自分でいられます。

「わからないままサインしてしまった…」
「あとから不利な条件が出てきた…」
そんな後悔は、この記事を読んでくれたあなたには、してほしくありません。

契約は、**「守るための約束」**です。
あなた自身を守るために、そして、これからの可能性を広げるために、
どうか勇気をもって一歩ずつ、前へ進んでください。

あなたの働く未来が、安心と笑顔で満たされますように。
私たちは、いつでもそのそばにいます。