〜首相の承認から国家銀行登録までの全プロセス〜
こんにちは!マナラボの菅野です。
今日は「ベトナム法人が親会社など海外にお金を貸すことはできるのか?」という、
少しニッチだけど大切なテーマを解説します。
この記事のもくじ
そもそも「海外貸付」って何?
「ベトナムにある100%外資の現地法人が、日本の親会社にお金を貸したいんだけど…」
実は、それ、法的には可能なんです。ただし!
“特別な許可”と“厳格な手続き”が必要です。
たとえるなら、海外貸付は「高速道路を逆走」みたいなもの。
普通とは逆の方向だから、しっかりとしたナビと警察(=政府の承認)が要ります。
法的根拠:ベトナムの法律はどうなってる?
根拠を確認しましょう。
外国為替管理の大原則
📖 外国為替管理条例(統合版)07/VBHN-VPQH(2013年7月11日)第19条第2項
「経済組織は、首相の許可を得た場合に限り、非居住者への貸付を行うことができる。」
つまり、首相の承認がなければ、海外への貸付は認められません。
これは国家の外貨流出をコントロールするための重要な原則で、
違反すると重大な処罰を受ける可能性があります。
必要な手続きと書類は?
海外貸付をしたい場合、以下の2ステップをクリアする必要があります。
STEP 1️⃣:首相の承認を取得
どこに申請?
通常はベトナム国家銀行(SBV)経由で政府へ申請されます。何を出す?
事業概要・貸付目的・相手先情報
財務諸表(直近2年分)
投資登録証明書(IRC)や企業登録証明書(ERC)
これは簡単ではなく、実務的には法律事務所や専門コンサルのサポートが必須です。
STEP 2️⃣:国家銀行への「貸付登録」
📖 Circular No. 37/2013/TT-NHNN 第8条第1項
「契約締結から30日以内に、SBV(外国為替管理部)に登録書類を提出すること」
主な提出書類:
書類 | 補足 |
---|---|
貸付登録申請書(所定様式) | Circular付録にフォーマットあり |
貸付契約書(英・越語) | 内容と金利条件を明記 |
首相の承認書 | 原本または認証写し |
資金出所の証明書 | 自社資本、留保利益からが基本 |
借入人の登録証 | 親会社の会社登記など |
実務上のリスクと注意点
以下の点に留意しましょう。
① 為替リスク
借入通貨(例:USD)で返済される場合、為替損失のリスクあり。
金利+為替で「実質損」となることも…。
② 移転価格税制リスク(Transfer Pricing)
親子間の貸付で金利が市場価格と乖離していると、
税務署から「利益移転」とみなされる可能性があります。
③ 政府保証は一切なし
これは自己責任の契約です。政府は一切保証してくれません。
📖 政令219/2013/ND-CP 第4条
「借入人は契約の履行について法的責任を負う。政府は関与しない。」
結論:ベトナムから海外貸付は「慎重かつ合法に」
- ✔️ 法律上は可能
- ✔️ 首相の承認が必須
- ✔️ SBVへの登録義務あり
- ✔️ 財源や税務も慎重に設計を
つまり、普通の融資とはまったく違う、高度な法務・財務スキルが必要な取引です。
不安なら専門家に相談を!
「親会社を助けたいけど、違法にはしたくない」
「SBVとのやり取り、どうしたらいい?」
そんなときは、ぜひマナボックスにご相談ください。
私たちは外資系企業向けの資金取引支援に実績があります!
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
次回も「ベトナムでビジネスするなら知っておきたい」情報をわかりやすくお届けしますね。
それではまた!
すげの(Manabox Vietnam)