小口支出で現金決済が多い背景と傾向

ベトナムの製造業・サービス業では、日常的な小口支出を現金で決済する慣行が長らく続いてきました。その背景には、税務上の非現金決済義務の例外規定が挙げられます。例えば従来は「1回あたり2,000万ドン未満」の経費支出であれば銀行振込でなく現金払いでも仕入VAT控除や法人税損金算入が認められてきました。

この規定により企業は小規模な取引については現金精算を選択しやすく、結果として小口現金取引が蔓延していたのです。また、ベトナム経済全体としても長年キャッシュベースの取引が多く、特に零細業者や個人事業者から商品・サービスを購入する場合には現金以外の支払い手段が整っていないケースも少なくありません。

実際、多くの企業が個人からの少額購買や個人事業者への外注(運送、臨時の労務提供など)に直面しますがそうした取引相手は正式なインボイス(VAT請求書)を発行できないため現金で支払わざるを得ない状況があります。そのため企業側も、税務上認められた所定の書類(契約書や受領書、01/TNDNフォームと呼ばれる買上票など)を準備することでインボイスのない現金経費を損金算入する手続きを踏んでいます。

このように小口支出の現金払いは利便性・慣行上だけでなく、法制度上も一定程度許容されてきたために広く行われていると言えます。

しかし近年、政府・税務当局は現金取引削減に向けた姿勢を強めています。電子インボイスの普及施策やキャッシュレス決済推進策に加え、2025年7月1日からは従来の2,000万ドン未満例外が撤廃され、金額の大小にかかわらず仕入VAT控除には非現金決済の証憑が必要になります。

>>【2025年7月1日施行】2,000万VND未満でも“現金払いはNG”?💸 少額取引も「非現金」じゃないと税務で損!

※政府が定める特例ケースを除き、今後は少額取引でも銀行振込やカード決済が求められる方向です。この法改正は、小口経費での安易な現金払いにメスを入れ、企業経費の透明性を高める狙いがあります。実務上も各企業は、小口現金の使用を減らし経費精算方法を見直す動きに迫られており、現金主義からの転換期を迎えています。

 

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