こんにちは!マナラボの菅野です。

2025年7月から、ベトナムでついに始まりましたね――
「5百万ドン以上は非現金で払わないとVAT控除できません!」という新ルール。

これ、地味に困ってる方、多いんじゃないでしょうか?

たとえば、営業さんが取引先との会食で自腹カード払い。そのあと会社が経費精算して返金――

「これって、VAT控除、OKなの?アウトなの?」

今日はそんな悩みにお答えするテーマです。

ベトナムの非現金決済ルール、2025年にこう変わった!

従来のルールでは、2,000万VND(約12万円)以上の支払いは非現金じゃないとダメというラインがありました。

>>【がんばって解説】ベトナム税務2025年7月1日以降、500万VND以上の購入には非現金証憑が必要なの?【紙のお金は使えない?】

でも、2025年7月1日施行の【政令181/2025/NĐ-CP】で、これが一気に変わります。

金額を問わず、原則としてすべてのVAT仕入控除には「非現金決済証憑」が必要に!

特に、5,000,000VND(約3万円)以上の取引には「非現金で払った証拠」がないと控除は✕。

「委任支払」ってなに?

じゃあ会社が全部銀行から直接振込むの?
でも現実はそんなにキレイにいきません。

  • 出張中の社員が現地で必要なものを買う
  • スタッフが接待でレストラン代を立て替える
  • システムのライセンスを社員のクレカで決済

こういう場面、ありますよね。よくあると思います。

そこで登場するのが…

「非現金決済の委任支払」制度!

かんたんに言えば、

「社員が会社の代わりにカードや振込で支払ってOKにする仕組み」です。

これを正式に“委任”しておけば
社員が払ったお金でも「会社が非現金で払った」とみなされ、VAT控除OKになります。

どんなときに使うの?

代表的なシーンはこんな感じ👇

シーン委任支払が有効?
営業がカードで会食費を立て替え✅ OK
出張中にホテル代を社員カードで支払✅ OK
経理が現金で渡して「これで買ってきて」❌ NG(非現金決済じゃない)
現金で立て替えて、現金で返金❌ 完全アウト

VAT控除(仮払いVAT)を受けるための「委任支払」4つの条件

ここ大事です。

「ただ立て替えた」だけじゃダメ!という考えかたもあります。

政令181号では、以下の4つを揃えることが求められます。

No.要件内容詳細説明法的根拠
書面での委任従業員に支払を代行させるには、契約書または社内規程等で明示的に委任されている必要あり政令181/2025/NĐ-CP 第26条第2項c
会社名義のVATインボイスを取得立替払いであっても、インボイスの宛名が会社名義でなければ仕入VAT控除不可付加価値税法2024 第14条第2項a
従業員が非現金で支払う従業員はカード・振込等の非現金手段で支払うこと。社内規程に基づく必要あり。政令181/2025/NĐ-CP 第26条第2項i
会社が従業員に非現金で返金する返金も**必ず非現金(振込など)**である必要あり。現金での精算は控除対象外。政令181/2025/NĐ-CP 第26条第2項i

要件①:書面での委任(支払委任書など)

🔹 法的根拠:

政令181/2025/NĐ-CP 第26条第2項第c目(原文一部引用):

“…việc ủy quyền thanh toán hoặc thanh toán cho bên thứ ba do bên bán chỉ định phải được quy định cụ thể bằng văn bản trong hợp đồng…”
「売主が指定する第三者に対する支払または支払の委任は、書面によって契約に明確に規定されていなければならない。」

🔍 ポイント:
これは“売主指定の第三者への支払”のケースですが、従業員が会社の代わりに支払うケース(=社内委任)も、書面で委任されている必要があるという実務解釈に基づいています。

加えて、従業員への非現金支払(立替)も、社内の「規程または文書による委任」で正当性を持たせる必要があると、財務省の解釈でも広く認められています。


要件②:会社名義のVATインボイスを取得すること

🔹 法的根拠:

付加価値税法2024 第14条第2項a

“a) Có hóa đơn giá trị gia tăng của hàng hóa, dịch vụ mua vào…”
「購入した商品またはサービスに関するVATインボイスが必要である

🔍 ポイント:
従業員が立替払いをした場合でも、インボイスの宛名が会社名義であることが控除の大前提です。
従業員個人名義のインボイスでは控除できません。


要件③:従業員が非現金で支払っていること

🔹 法的根拠:

政令181/2025/NĐ-CP 第26条第2項第i目:

“…cá nhân là người lao động của cơ sở kinh doanh thực hiện thanh toán không dùng tiền mặt theo quy chế tài chính hoặc quy chế nội bộ của cơ sở kinh doanh…”
「企業の従業員が、社内規程または財務規程に基づき非現金で支払った場合」

そして、

“…sau đó cơ sở kinh doanh thực hiện thanh toán cho người lao động cũng theo hình thức không dùng tiền mặt thì được khấu trừ thuế giá trị gia tăng đầu vào.”
「その後、企業が当該従業員に非現金で支払(返金)すれば、仕入VATの控除が認められる。」

🔍 ポイント:
この条文が、委任支払制度の法的な根拠そのものです。
つまり、

  • 社員が非現金で支払う
  • 社内規程がある
    この2点を満たしていればOK。

要件④:会社が従業員へ非現金で返金すること

🔹 法的根拠(同じく政令181号 第26条第2項第i目)

“…cơ sở kinh doanh thực hiện thanh toán cho người lao động cũng theo hình thức không dùng tiền mặt…”
「企業が従業員に非現金で返金すること」

🔍 ポイント:
ここも**“現金で返したらアウト”**ということを明示しています。
返金の形式も銀行振込や電子マネーなど、非現金で完結させることが求められます

じゃあ委任書ってどう書けばいいの?

安心してください。
以下が一般的なフォーマットです👇 


📄 委任支払書(Giấy ủy quyền)

  • タイトル:非現金決済に関する支払委任書
  • 法的根拠:政令181/2025/NĐ-CP、第14条・第26条
  • 委任者(会社):会社名・代表者名・納税コードなど
  • 被委任者(社員):氏名・部署・身分証番号など
  • 委任内容:
  • 正当なVATインボイスに基づいて支払う
    • サプライヤーへ直接振込(カード決済可)

    • 購入後、会社に領収書と精算書を提出

  • 返金:会社は社員に非現金で返金処理
  • 有効期間:○年○月○日~○年○月○日まで

※2部作成し、会社と社員が1部ずつ保管

よくあるNGケース

以下のような場合はダメ(VAT及びCITの観点)ですので留意しましょう。

  • 🔻 社員がカード払い → 会社が現金で返金 → ❌ NG!
  • 🔻 インボイスが社員名義 → ❌ NG!
  • 🔻 委任書を作っていない → ❌ NG! 作ったほうがいいです。

よくある質問(Q&A)

Q. 委任書は毎回必要?
→ 社内規定に「立替払いOK」と明記されていれば、包括的な委任でもOKでしょう。このあたりは解釈もわかれそうです。ただ毎回だと煩雑すぎるので毎回は必要ない方向で考えるのが合理的です。

Q. 電子サインでもいいの?
→ 原則OKですが、税務署によっては原本を求められる場合もあるので、印刷して署名したものが無難です。

Q. 外国人社員でも使える?
→ はい、使用可能です。ベトナム法人の社員であれば対象になります。

まとめ:明日からできる実務対応

  1. 「委任支払」の社内規定を整備しよう
  2. 支払委任書のテンプレートを用意しておこう
  3. 立替→精算のプロセスをすべて非現金で完結させよう
  4. インボイスは会社名義で!