~AEOとみなし輸出入に注目!関連条文ベースでやさしく解説~
こんにちは!マナラボの菅野です。
2025年7月から8月にかけて、ベトナムの貿易実務を大きく左右する重要な法改正が実施されました。
今回のポイントは、以下の3本柱です。
- ✅ 法第90/2025/QH15号(2025年6月25日公布)
- ✅ 政令167/2025/NĐ-CP(税関手続関連)
- ✅ 政令182/2025/NĐ-CP(輸出入税制度関連)
これらはバラバラの制度ではなく、法90号を土台として、政令167号と182号が具体化している構造になっています。今回は、この法制度の関係と、実務インパクトが大きい「優遇制度(AEO)」と「みなし輸出入」に特化して、やさしく・正確に解説します!
この記事のもくじ
ベトナム法律と政令の関係を図でおさらい
ベトナムの法制度では、以下のようなピラミッド構造になっています。
つまり、「法90号」が改正の大枠を決め、それを実行する政令が167号(税関)・182号(税金)です。なので今後は通達がでるでしょう。
法90号 → 政令167号・182号の関係:条文ベースで対応表を整理
法90号の条文 | 内容 | 対応政令と条文 |
---|---|---|
第42条(税関法) | 優遇制度(AEO)の認定要件の明文化・区分化 | 政令167号 第10条・11条 |
第47a条(新設) | 「みなし輸出入(xuất nhập khẩu tại chỗ)」の法的定義 | 政令167号 第35条 |
第16条第21項(輸出入税法) | 科学技術・デジタル技術発展のための免税制度を新設 | 政令182号 第24条 |
第16条第18項の削除 | 一部ICT製品向け原材料の免税制度を廃止 | 政令182号 第2条で規定 |
もう少し詳しく説明しますね。
2025年6月、ベトナムの国会は法90/2025/QH15号を公布しました。
>>【爆誕】8つの法律を一気に改正!Law No. 90/2025/QH15をわかりやすく徹底解説
これは、税関法や輸出入税法など8つの法律を一度に見直す「大きな改正のまとめ」です。ただし、この法律では基本的なルール(たとえば「どんな制度があるか」や「制度の対象は何か」)しか決まっていません。
そこで、この法90号の内容を実際に使える形にするために作られたのが、政令167号と政令182号です。
- 政令167号は、「通関手続」や「優遇制度(AEO)」そして「みなし輸出入」に関する手続きを詳しく定めたものです。
- 政令182号は、「どんな輸入品が税金免除の対象になるか」「免税の条件や手続きは何か」といった輸出入税に関するルールを定めています。
つまり、法90号が「なにを変えるか」を決めた法律であり、政令167号と182号は「どうやって実行するか」を具体的に定めたルールなのです。
優遇制度(AEO)とは?まずは定義から!
AEO(Authorized Economic Operator)制度とは、税関から認定された“信頼できる事業者”が、通関や税務の優遇を受けられる制度です。
この制度は、ベトナム税関法第42条および政令08/2015/NĐ-CP(現在は167/2025により改正)に基づき、導入されています。
【改正内容】AEOの認定条件が緩和され、対象企業が拡大
✅ 法90号の改正点(税関法第42条)
第42条第1項・第2項(法90号改正)により、企業は以下2種類に分類されます。
- 一般の輸出入業者 → 政令167号第10条1~5項の条件をすべて満たす必要
- 科学技術省が認定したハイテク・イノベーション企業など → 一部条件(輸出入額など)を免除(第10条第7項)
✅ 政令167号第10条:AEO認定の条件(一部抜粋)
第10条第1項〜第5項(要約):
- 過去24ヶ月において税関・税法違反歴なし
- 会計が監査済であり「無限定適正意見」を受けている
- 内部管理・セキュリティ・人材体制・IT・カメラ等の基準を満たす
- 年間輸出入額が一定水準を超えている(例:1億USD)
- 法第42条第2項企業は上記のうち一部免除(第7項)
📌【根拠法令】法90/2025/QH15 第3条第1項、政令167/2025/NĐ-CP 第10条
✅ 政令167号第11条:認定・更新・取消手続の明文化
- 書類審査 → 実地審査(10営業日以内)
- 認定有効期間は3年
- 更新は90日前から可能
- 違反時は一時停止・取消もあり(税関法第45条)
このようになりますね。
みなし輸出入(On-the-Spot)の定義が法律に明文化
従来、グレーだった「国内引渡しベースの輸出入取引(Xuất nhập khẩu tại chỗ)」が、ついに法律に定義されました。
✅ 法90/2025/QH15 第3条第3項 → 税関法第47a条の新設
第47a条:
「外国商人の指示により、ベトナム国内での引渡しが行われる場合、それは“みなし輸出入”とし、税関手続き・監督の対象とする。」
✅ 政令167号第35条:みなし輸出入の詳細手続
- 輸出・輸入申告は 先でも後でもOK(ただし監督下)
- 両者の申告完了をもって「通関完了」とみなす
- 引渡し時点・方法・場所は外国商人の指定に従い、税関に通知義務あり
全文は以下。
みなし輸出入貨物(xuất nhập khẩu tại chỗ)とは、以下に該当する貨物をいう(これは「入札法」「PPP法」「税関法」「VAT法」「輸出入税法」「投資法」「公共投資法」「公的資産管理法」を改正する法第90/2025/QH15号第3条第3項によって、税関法第47a条に追加された条項に基づく):
a) ベトナム国内で加工された商品であり、外国商人が加工を依頼し、ベトナム国内の組織または個人に販売・譲渡されるもの。
b) ベトナム企業と外国商人との間で売買・賃貸・貸借された貨物で、外国商人の指定に基づいて、ベトナム国内の企業が受け渡しを行うもの。
みなし輸出入貨物は、必ず税関手続を経なければならない。貨物の引渡し・受領は、税関手続前に行ってもよく、または後に行ってもよい。いずれの場合も、貨物の引渡しから通関完了まで、または通関手続から引渡し完了までの期間中は、税関の検査および監督の対象となる。
みなし輸出入貨物は、「みなし輸出申告書」および「みなし輸入申告書」の双方が税関手続を完了した時点で、通関完了と見なされる。
貨物の引渡し・受領の時点、場所、方法は、外国商人の指示によるものとし、税関手続を行う際、または貨物引渡し前に税関当局に通知しなければならない。
この条の詳細は、財務大臣が別途規定する。
今後、政令167に対応した新しい通達が出される場合には、みなし輸出申告書・みなし輸入申告書の具体的フォーマット(Mẫu số)も明記されると考えられます。おそらく。
📌【根拠法令】税関法第47a条(法90号)、政令167/2025/NĐ-CP 第35条
科学技術関連の輸入免税制度(政令182号)
法90号は、輸出入税法第16条第21項を改正し、研究・試作・製造のために使用される輸入品を5年間免税とする制度を導入しました。
政令182号第24条:免税の適用範囲
- 機械、部品、原材料などで研究・製造に用いるもの
- 自己申告による使用開始日を税関に通知
- 5年後、使用しなかった分は納税義務あり
📌【根拠法令】政令182/2025/NĐ-CP 第24条、第30条
今すぐ確認したい実務チェックリスト
☑ 自社はAEO認定の条件を満たせそうか?
☑ ハイテク事業で科学技術省からの指定があるか?
☑ みなし輸出入に該当する国内引渡し取引があるか?
☑ 紙ベース通関をやめて電子化体制が整っているか?
まとめ:制度改正は、正しく知ればチャンスになる
今回の改正は、単なる手続き変更ではなく、ベトナムの税関・通関制度を次のステージに引き上げる改革です。
- AEO認定を取れば、通関がスムーズでコストも下がる
- みなし輸出入の明文化で実務の不透明さが解消
- 科学技術系の投資は税制面でもメリット大!
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※すべての引用は、法第90/2025/QH15号・政令167/2025/NĐ-CP・政令182/2025/NĐ-CPの政府公表文書をもとに記載しています。