2025年7月1日から、ベトナムの労働組合費に関する新しいルールが施行されました。
その名も「Decision 61/QĐ-TLĐ号(第61号決定)」です。
この決定、けっこうインパクトがあるかもです。とくに労働組合を設立している製造業さん。
なにしろ、これまで月給の1%だった組合費が、原則0.5%に引き下げられたんです。
「えっ、半分になるの?」と思った方。
はい、半分になる可能性は高いです。ただし、ちょっと注意点があります。
この記事のもくじ
まずは整理しましょう!「組合がある会社」と「組合がない会社」
ここがすごく大事なポイントなので、最初に説明しますね。
実は、ベトナムの企業には、大きく分けて以下の2パターンがあります。
>>ベトナムの労働組合の「組合費」と「組合貢献費」について徹底解説!
✅ 組合がある会社
これは、労働組合(Công đoàn cơ sở=基礎労組)が社内にあって、従業員が組合員として加入している会社です。
この場合、組合員は毎月「組合費(Đoàn phí)」を支払う義務があります。
従来は給与の1%、それが今回の決定で0.5%になるという話ですね。
✅ 組合がない会社
一方で、労働組合がまだ設立されていない会社もあります。
この場合、従業員は「組合費」を払う必要はありません。
ただし、会社側には別の義務があります。
それが、「労働組合拠出金(Kinh phí công đoàn)」というもの。
これは会社が給与総額の2%をベトナム労働総同盟に納めるという仕組みで、組合がなくても払わなきゃいけないんです。
つまり、ざっくり言うとこういう構図になります👇 (なお、組合がある会社であっても会社負担はあります)
区分 | 誰が払う? | 内容 |
---|---|---|
組合がある会社 | 従業員(組合員) | 月給の0.5%(旧制度は1%)←★今回の改定対象! |
組合がない会社 | 会社 | 給与総額の2%(変更なし) |
今回の「Decision 61/QĐ-TLĐ号」は、「従業員が払う組合費」についての新ルールです。つまり、「組合がある会社」に所属している従業員に関係する話というわけですね!
組合費はいくらになるの? 〜パターン別にやさしく整理〜
さて、今回の「0.5%ルール」、とにかく全員に一律適用!というわけではありません。
ちょっとだけ、所属先によって分かれるんですね。
そこで、わかりやすく分類してみました👇
組合員の所属先 | 新しい組合費の計算方法 | 備考 |
---|---|---|
国家予算から給与を受けていない公的機関 | 社会保険算定基礎の給与 × 0.5% | 例:公立病院の自主財源スタッフなど |
国有企業(政府が支配株主) | 実支給給与 × 0.5%(※) | ※保険や税を差し引いた後の金額 上限=基本給の10%まで |
民間・外資系企業/協同組合など | 社会保険算定基礎の給与 × 0.5% | 上限=基本給の10%まで |
給与が不安定、または社会保険の加入対象外 | 最低でも「基本給の0.5%」 | 固定額扱いでもOK |
産休・病休など、1か月以上無給 | 組合費は免除 | 忘れがちなところなので要注意です! |
こうして見ると、「基本は0.5%だけど、上限や免除もあるんだな」という感じですね。
ちなみにこの「基本給」って何?という方もいらっしゃるかもですが、
これは政府が定める“国家の基礎賃金”の様です。
でも、0.5%より多く取っていいの?という素朴な疑問
はい、ここが実務的にちょっと気をつけたいポイント。
結論から言うと、労働組合側の決議があれば、0.5%より多く取ることもOKなんです。
ただし、条件があります!
- 組合の執行委員会がちゃんと「書面で」決めている
- 組合の内部規則に、その徴収率がきちんと明記されている
- 追加で徴収した分は、100%その組合で使い、決算でちゃんと報告する
こういうルールにのっとっていれば、0.6%とか0.7%でもOKなんですね。
とはいえ、「じゃあうちも上げよう!」と安易に決めていい話ではありません。
従業員の納得感や、透明な使い道がないと、信頼にかかわってしまいます。
実務で見落とされがちな「免除対象」
この改定、実は「免除される人」についてもきちんと明記されています。
ポイントは次の2つです:
- 社会保険給付(病気、産休、育児など)を1か月以上受けている
- 無給休暇、休職、離職などで給与がゼロの月が1か月以上ある
この場合、その期間中は組合費を払わなくてOKになります。
給与計算を担当されている方、つい「いつもどおり引いちゃった」なんてことがないように、気をつけてくださいね。
「組合がある会社」と「ない会社」で、やるべきことは違う!
さて、ここまで読んで「うち、組合ないんだけど…関係ある?」と思った方もいるかもしれません。
そのとおり。
この「0.5%ルール」は、あくまで組合がある会社での、組合員からの徴収に関するルールなんです。
でも!
組合が「ない」会社も、会社自身が払う「2%の拠出金」は変わらず必要です。
組合がなくても、「組合費の代わりに企業が払ってる仕組み」があるという感じですね。
だから、会社側としては:
組合がある場合 → 従業員への案内、給与控除の見直し、内部ルール整備
組合がない場合 → 拠出金(2%)の支払いを忘れず継続
というように、それぞれで確認ポイントがあるんです。
よくある質問をまとめてみました!
おそらくこんな質問生まれるんだろうなあといった妄想をしながら書きました。
Q:Decision 61ってすべての従業員に関係ありますか?
→ いいえ。労働組合に加入している人のみ対象です。
Q:組合費はどの給与に対して計算すればいい?
→ 基本は「社会保険料の算定基礎となる給与」または「実支給給与」です(会社のタイプによります)。大事なのでは掛け算の元になる金額ってどんなの?を意識しておくことです。
Q:うちは組合がないから、何もしなくていい?
→ 組合費(従業員負担)は不要ですが、会社の拠出金(2%)の支払い義務は継続しています。弊社、マナボックス もこのパターンですね。
Q:従業員が産休中です。今月の組合費はどうなりますか?
→ 1か月以上の給付・無給期間があれば免除対象になります。
最後にすげのからひとこと
ベトナムの制度って、ちょっと独特ですよね。
「組合がなくても払うの?」とか、
「0.5%に下がったって言っても、実際どうやって計算するの?」とか。
そんなふうに、頭の中に「?」がポンポン浮かんでくると思います。
でも、ルールを知っておくことで、
「ちゃんと払ってるけど、本当は免除だった」なんて損を防げたり、
「控除率を見直したら、従業員の手取りが増える」なんてこともあるんです。
このブログが、そんな気づきのきっかけになればうれしいです。
では、まとめます
- 「Decision 61/QĐ-TLĐ号」は、2025年7月から施行された組合費の新ルール
- 基本は**月給の0.5%**だけど、例外も多数あり
- 従業員負担の軽減が目的とはいえ、実務上の対応が必要
- 組合がない会社も、会社負担の「2%拠出金」は変わらず必要
ルールは変わっても、対応の丁寧さはそのままで。
わたしたちも引き続き、やさしく実務をサポートしていきますね。
それでは、また別の記事でお会いしましょう〜!
(すげの)