こんにちはマナラボの菅野です。

今日は『ブックオフの不正の16の手口を抽象化し分析してベトナム不正に転用して考えてみる』というテーマでお伝えします。

ブックオフの不正を抽象化すれば?

2024年10月15日にブックオフは特別調査委員会による調査報告書(以下、調査報告書)を公表しました。不正があったから特別にそれを調査する委員会を設置して不正について調査した結果をまとめたものですね。かなりのボリュームです。

そこには、調査対象となった26店舗と1事業部において、合計16類型の不正が発見されたようです。

ただこれをベトナムを含む、海外子会社の不正(従業員不正だけ)に着目すれば以下の2つにパターン化、整理できます。

  • 横領(私腹を肥やす目的)
  • 隠蔽(上記の「横領」の発覚を隠す)

です。

経営者不正(業績をよく見せたい!)というのを考慮すれば「粉飾」もありますがこの記事ではここは無視します。

ブックオフの不正の16パターン

これは調査報告書から引用しました。以下の4つのフェーズにわけています。

  • 販売時 1個
  • その他 2個

となっています。こちらを見てみましょう。上記で述べたさらに抽象化(横領や隠蔽)と関連させたり、ベトナムにおける海外不正とも関連させていきたいと思います。

1、商品買取時

不正行為の名称

概要

もっと抽象化!海外不正のパターン
1-1架空買取

実在しない商品の買取登録を行い、代金相当額をレジや金庫から横領。

 

横領架空仕入
1-2水増し査定による差額横領

実際より多い商品数や金額で買取登録を行い、顧客に渡した金額との差額を横領。

横領キックバック
1-3セット買取による過少申告

架空在庫を圧縮するため、実際の買取商品数より少ない数で買取登録。

隠蔽書類偽装による隠蔽

 

ここで注目したいのが1-1です。「架空買取」ですね。「架空買取」は、存在しない商品を「お客さんから買い取った」と偽ってシステムに記録し、その代金をスタッフが不正に横領する行為です。つまり、実際には商品もお客さんもいないのに、買い取りを装ってお店のお金を自分のものにする詐欺的な手口です。

例えば「スラムダンク全巻」2万円を実際にはお客様から買い取っていないのに「買い取った」ことにしてその2万円をポケットに入れちゃう不正です。

これは「架空仕入」と同様のタイプだと言えます。以下でも解説しています。なおこの「架空仕入」、大きな場合だと数千万円レベルだったり億円を超えることもあります。

>>ベトナム、海外子会社でよくある購買不正のタイプ4つとそれを防止する方法

続いて1-2。水増し査定による差額横領とは、実際に買い取った商品の数や金額をシステム上でわざと多く登録し、その差額分のお金を横領する行為です。

たとえば、実際には3冊の本を1000円で買い取ったとします。しかし、スタッフがシステムには「5冊の本を1500円で買い取った」とウソのシステムに登録をします。この場合、お客さんには実際に約束した1000円しか渡しませんが、システム上は1500円が支払われたことになっています。その差額の500円をスタッフが自分のものにするのです。

この手口では、お客さんは買い取り額に納得してお金を受け取っているため、不正に気づきにくく、スタッフがこっそり利益を得ることができます。システムの管理を悪用した巧妙な横領の一種です。こんなことができちゃうんですね。

2、商品管理・棚卸時 10個

続いて商品管理・棚卸時です。

不正行為の名称

概要

もっと抽象化!海外不正

2-1 商品持出し

店舗従業員が店舗内在庫を窃取(内引き行為)。横領

在庫の盗難、スクラップ横領

2-2自店舗在庫を他店舗に買い取らせる

自店舗在庫を顧客の商品と偽り、他店舗で買取をさせ、その代金を横領。横領 
2-3⭐️棚卸偽装

棚卸不足時に実在しない在庫を記録したり、棚卸過剰時に実際より少ない在庫数を入力。

隠蔽隠蔽の典型例
2-4杜撰な棚卸

棚卸作業においてルールが定められていない、または不備のある方法で実施し、問題を隠蔽。

隠蔽 
2-5滞留在庫隠蔽

販売されていない滞留在庫について、データを改ざんして販売済みとして偽装。

隠蔽 
2-6架空・虚偽転換

架空買取や内引きを隠すために、商品データを不正に転換。

隠蔽 
2-7架空ラベル貼替実際には存在しない在庫に値札ラベルを貼ることで偽装。隠蔽 
2-8架空R処理実際の商品廃棄を伴わないR処理を前倒し・後ろ倒しするなどして損失計上のタイミングを操作。横領 
2-9R登録の不実施廃棄商品をR登録せずに在庫の理論値を減少させない、または損失計上を回避。隠蔽 
2-10架空Kコード処理POSシステム上で架空の在庫を計上、または実際と異なる在庫消去を行う。横領 

2-8,架空R処理が横領になる理由

これわかりにくいですね。なので補足します。要は捨てたと処理するけどそれを持ち帰ったということです。

架空R処理では、実際には商品を廃棄していないのに、システム上「廃棄した」と記録し、その損失を帳簿に計上します。このように損失計上のタイミングを操作することで、店舗全体の損益計算を意図的に操作することが可能になります。この手口は、以下のような流れで横領につながるかもしれません。

  • 廃棄されたと見せかけた商品が実際には廃棄されず、別の用途に流用される場合: 商品が廃棄扱いになっているため、在庫管理上は存在しないことになっています。従業員がこの商品を横流ししたり転売したりして利益を得ることで、実質的にお店の資産を盗んだことになります。

  • 損失計上の操作による利益隠しや管理の混乱: 結果的に廃棄を隠れ蓑にして、お店の在庫や資産の不正利用を隠すための行為として機能します。これが最終的に店舗資産の不適切な流用や消失を生じさせ、横領とみなされます

2-10、架空Kコード処理が横領になる理由

これもわかりにくい。

架空Kコード処理では、POSシステム上で「存在しない在庫」を新たに計上したり、逆に「実際に存在する在庫」を消去したりします。これが横領につながる理由は以下の通りです:

  • 在庫の不正な追加(架空在庫の計上): 架空の在庫がシステム上に存在すると見せかけ、後にそれを「販売」したように見せかけて売上を作り出し、実際にはその金額を従業員が自分のものにします。この行為は直接的に店舗資産(現金)の横領に該当します。

  • 在庫の不正な消去: 実際には店舗にある商品をシステム上から削除することで、商品が管理上存在しないことになります。この商品を従業員が持ち出して転売したり、不正利用することが横領の実態となります

3、販売時

販売時はこれですね。在庫とは関係ありませんが「横領」ですね。

不正行為の名称

概要もっと抽象化!海外不正

3-1, 現金着服

販売代金やレジ内の現金を着服。「横領」現金の横領と現預金の横領

ベトナムでも現金・預金の横領は実際にあります。そんなことある!?というような手口もあったりします。小切手の偽造とか。

4、その他

ここからはいわゆる「経営者不正」も入ります。つまり「粉飾」です。いい業績であるとアピールしたいからちょっと調整してやろう!といったようなインセンティブから生じる不正です。

不正行為の名称

概要もっと抽象化!海外不正

4-1, 架空買取・架空販売

架空買取を行い、その商品が売れたように偽装して売上計上。「粉飾」 

4-2,予備釣銭の横領

釣銭や金銭を社員の個人口座に振り込み横領  

「4-1, 架空買取・架空販売」は、実際には存在しない商品を「買取した」と偽装し、さらにその商品を「販売した」と見せかけて売上を計上する行為です。ようするに実態がないのに売上を計上したように処理することです。

なぜ不正は生じるの?不正はなくならない。

このような不正ははっきりいいますね。なくなりません。

最近でも

  • 三菱UFJ銀行 支店管理職が貸金庫から盗み(最近) 10億円?
  • 23億円を横領!真面目な男が些細なことから会社の金を盗み続け女性と豪遊…転落しやすい罠とは(長野、日テレ)(実際には2011年くらいの話)
  • ブックオフ、26店舗で不正 現金横領、被害額5600万円

23億も横領してクラブの女性に貢ぐ,,,,,,。「狂気の沙汰」とはこのこと。

このような不正が今でも発生してます。日本人だろうがベトナム人だろうが関係ありません。

なぜならば「人間」だからです。「弱さ」がある人間なので潜在的になくなることはありません。私だって状況しだいで不正犯す人間になるはずです。

教科書的な話でいうと「不正のトライアングル」がありますがこの理論は実務的にも100%当てはまります。抽象度が高い考えであるからとも言えますけど、この概念はとても大事です。

>>海外子会社の売上が5%も失われている? 不正のトライアングルの解説

けれども!数千万とか数億の不正は防止・発見したいですよね。くやしいし他のメンバーが可哀想だからです。1人の悪者ために数百人が犠牲(給与上げられない)なんて嫌じゃないですか?

そうだと思いますので、発見・防止する方法の概要をお伝えします。

海外不正を防止・発見する方法はパターン化されている

不正の手口がパターン化されているようにその防止・発見する方法も定型化されていると言えます。以下のようにマップでお伝えします。

個別にはこの記事では紹介しません。また別の記事でノウハウをお伝えします。上記の表の中で個人的に一番大事だと思うのは「見られる化」です。

言葉が悪くなって申し訳ありませんが「この社長、何にもわかってないじゃん。じゃあ不正しちゃおう」と思われた瞬間に不正は発生すると思ってください。

むかつきますよね。こんなこと言われて。でも本当だし、ものすごい金額の不正が実際に発生しているので正直にお伝えしました。舐められたら不正起きちゃうんです。

23億も不正されて「能力が足りないから発見できなかった」と思われたら嫌だと思うんです。

なので、ベトナムの社長はある程度、知識とかスキル(会計・税務、管理会計など)をつけなければいけません。言い換えると「武器」が必要なんですね。このことを強く意識するところから始めるといいと思っています。