2025年2月、ベトナム政府に提出される企業法の改正案に、新しいルールが追加されるかもしれません。まだ案の段階です。その中でも注目すべきなのが、「実質的支配者(ベネフィシャル・オーナー)」に関する規定の導入です。
「実質的支配者」と聞くと、なんだか難しそうですよね。でも、これって実はとても大事なことなんです。なぜこの新ルールが必要なのか? 企業にどんな影響があるのか? わかりやすく解説していきます!
日系企業、とくにオーナー系企業には影響があると思います。
この記事のもくじ
なぜ「実質的支配者」の情報が必要なの?
ダミー会社、ノミニー会社?を作らせない!
例えば、あなたがオンラインショップを開こうとしたとします。でも、名前を出すのはちょっと恥ずかしい…。そこで友達の名前を借りて、「〇〇ショップ」を開業。でも、実際に売上を管理し、お金を動かしているのはあなたです。
これと同じことが、マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税、汚職などの場面で悪用されているんです。お金を隠したい人が、表向きは他人の名前を使い、実際には自分が操る「ダミー会社*を作ることで、違法なお金を流したり、不正な利益を得たりしています。
>>ベトナムにおけるノミニー投資:規制強化とビジネスへの影響とは?
だからこそ、企業の「本当の持ち主」を明確にする必要があるのです。
ベトナムは「グレーリスト」に載ってしまった!
実は、ベトナムは**2023年6月に「FATF(金融活動作業部会)」の「グレーリスト」**に入れられてしまいました。「グレーリスト」って? → 「マネーロンダリング対策が不十分な国」として国際的に監視されている状態のこと。なお、他人名義の口座への入金や盗品の売却などを通して、犯罪や不当な取引で得た資金を出所がわからないようにする行為を「マネーロンダリング」といいます。
これが続くと、
- 外国からの投資が減る(ベトナムの経済にマイナス)
- 海外取引のコストが上がる(銀行送金や取引が面倒に)
- 金融機関が厳しくチェックされる(手続きが増えて不便)
など、ベトナム経済全体に悪影響を及ぼします。
そこで、「本当の持ち主(実質的支配者)の情報をしっかり管理します!」とルールを作ることで、グレーリストから脱却し、海外からの信頼を取り戻そうとしているのです。
2023年6月の時点で、日本はこのグレーリストには含まれていません。しかし、FATFの第4次対日相互審査の結果、日本は「重点フォローアップ国」として指定されており、資金洗浄対策の強化が求められています
ベトナム企業法改正で「実質的支配者」のルールがどう変わる?
では、企業法の改正ではどんなルールが追加されるのでしょうか?
「実質的支配者」って誰?
今回の改正で、以下のいずれかに当てはまる人が「実質的支配者」とされます。
- 会社の資本の25%以上を直接・間接的に持っている人
- 会社の利益や配当の25%以上を受け取る人
- 会社の意思決定を最終的に支配している人
つまり、表向きの「社長」や「代表者」だけでなく、本当の影響力を持つ人を特定するということです。
3のところが非常に曖昧です。ここにいわゆるノミニーが含まれるんだと思います。
企業の新しい義務
企業は、実質的支配者に関する情報をしっかり管理し、必要な機関に報告する義務を負うことになります。
具体的には… ✅ 会社設立時に「実質的支配者」の情報を提出
✅ 情報が変わったら速やかに更新
✅ 政府機関が必要なときに確認できるようにデータベースに登録
こうすることで、ダミー会社の存在を防ぎ、透明性を確保するのです。
ルール違反したらどうなるの?
もし企業が、
- 実質的支配者の情報を隠したり、嘘をついたりした場合
- 情報を提出しなかった場合
罰則が科される可能性があります。(具体的な内容は改正案で明確にされる予定)
ベトナム進出企業への影響は?
では、この新ルールが企業にどんな影響を与えるのでしょうか?少し考えてみます。
1. メリット
- 会社の透明性がアップ! → 全体的に信頼度が上がる
- 外国からの投資がしやすくなる! → 国際取引がスムーズに。売上も増えるかも。
- マネーロンダリングのリスクが減る → 企業ガバナンスの強化
2. デメリット
⚠ 企業の管理コストが増える(新しい情報提出・更新の義務が発生)
⚠ 手続きが複雑になる可能性(特に中小企業にとっては負担)
まとめ:実質的支配者ルールは「企業の透明性を高めるための大事な一歩」
今回の企業法改正で、企業の本当の持ち主(実質的支配者)の情報を明確にするルールが追加されます。
これは、
- ベトナムが国際的な信用を取り戻すため
- 企業の透明性を確保し、マネーロンダリングを防ぐため
- 経済を安定させるため
という目的で導入されます。
企業にとっては、新たな管理義務が発生するデメリットもありますが、その一方で国際社会での信頼を得て、より良いビジネス環境を築くチャンスでもあります。
これからも、企業法改正の動きをしっかりチェックして、最新情報をキャッチしていきましょう!