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退職時のお金、税金はかかる?
ベトナムで長年働いた会社を退職するとき、もらえる「退職金」や「退職手当」。 「退職金は会社からのご褒美みたいなものだから、税金はかからないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、実際には場合によっては課税されることがあります。
この記事では、退職金・退職手当の課税・非課税の判断基準、計算方法、実務上の注意点をわかりやすく解説します。ベトナム人が対象ですが日本人にも関わるお話しでもあります。
退職金と退職手当の違いとは?
少し細かいかもしれませんがこちらも解説します。
法律の根拠:退職金と退職手当の違い
「退職金」について
- い企業の内部規定・労働契約に基づいて支給されるものであり、法的な支給義務がない。
- 2019年労働法(Law on Labor 2019)には「退職金」に関する明確な規定はない。
- 企業が従業員の長年の貢献に報いるための任意の支給が一般的。
こちらは会社次第でしょう。会社が長年の勤務に対する感謝として支給する一時金です。労働契約や社内規定に基づいて支給されるのが一般的です。
実務的に見ればこのような「退職金」を設定している企業は多くはありません。そんな印象があります。
イメージ: 退職金は「会社からの卒業祝い金」みたいなもの。
「退職手当」について
- 2019年労働法第46条(Severance Allowance)
12か月以上勤務した従業員が退職する場合、雇用主は退職手当を支給する義務がある(特定の例外を除く)。
- 2019年労働法第47条(Job Loss Allowance):雇用主の都合で解雇された場合、従業員は追加の手当(解雇手当)を受け取る権利がある。
法律に基づき退職時に支給される補助金のことで、特に解雇やリストラ時に支払われることが多いです。
イメージ: 退職手当は「急な転職に備えるためのサポート金」。どちらも会社からもらえるお金ですが、税金の扱いは異なる場合があります。
項目 | 退職金 | 退職手当 |
---|---|---|
支給義務 | 企業の任意(労働契約や社内規定に基づく) | 法律で義務付けられている(2019年労働法第46・47条) |
支給タイミング | 退職時または勤続年数に応じて | 退職時、特に解雇・リストラ時 |
計算基準 | 勤続年数や会社の規定による | 過去の給与を基準に計算(通常、1年勤務につき0.5ヶ月分の給与) |
課税の有無 | 企業の裁量によるため、課税の可能性あり | 法定額以内であれば非課税、超過分は課税 |
支給目的 | 勤続への感謝・功労報酬 | 退職後の生活支援・転職準備 |
表にするとこんな感じです。
ベトナムでの退職金・退職手当は課税所得になるのか?
課税・非課税の判断基準
法律の根拠:
通達111/2013/TT-BTC 第2条第2項b.6号(通達92/2015/TT-BTC第11条第1項による修正)
退職手当および失業手当は課税所得に含まれない。
ただし、法定額を超える部分は課税所得として計算する必要がある。
2007年個人所得税法(Law on Personal Income Tax 2007)第2条
課税対象となる居住者および非居住者の範囲を規定。
✅ 非課税となる場合
- 労働法・社会保険法に基づいて支給される退職手当(2019年労働法第46条)
- 失業手当(2019年労働法第47条)
🚨 課税される場合
- 法定額を超える退職手当(通達111/2013/TT-BTC 第2条第2項b号)
- 会社が追加支給する特別ボーナス
税率についての解説
ここもポイントでしょう。「前」か「後」です。
退職前に支給される場合(累進課税方式):企業が退職前に支給する場合、給与と合算し累進税率(5%〜35%)が適用される。(通達111/2013/TT-BTC 第25条第1項)
退職後に支給される場合(定額課税方式):退職後に支給され、200万VND以上の場合、10%の税率で源泉徴収。(通達111/2013/TT-BTC 第25条第1項i号)
どうやら退職後にもらってほうが良さそうですね。
日本とベトナムの退職金課税制度の比較
じゃあ日本の場合は?気になることでしょう。細かな違いがあるのですが一番は「控除」です。これくらいの金額であれば税金がかかりませんよ!という壁みたいな感じです。それば以下。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 ー 20年) |
しかもここら半分になるんですよ。1/2です。
一般退職所得 =(退職金 − 退職所得控除額)× 0.5 (ただし令和4年分以後に変更があるようなのでそこは留意)
例えば20年の人あれば控除が800万円なので800万円もらっても税金がかかりません。比較表を作成すると以下のようになります。
項目 | 日本 | ベトナム |
課税基準 | ⭐️退職所得控除後の金額に対して1/2課税 | 法定額超過分が課税対象 |
累進税率 | 5%〜45%(課税所得に応じて) | 退職前の場合、5%〜35%(給与と合算時) |
定額課税 | なし | 退職後の支給で10% |
控除額 | 勤続年数に応じた退職所得控除あり | なし(法定額超過分が課税対象) |
住民税 | 10% | なし |
このようになります。
まとめ
- 🔹 退職金は企業の裁量で支給されるため、課税される可能性がある。一方、退職手当は法定額内であれば非課税。
- 🔹 退職手当が法定額を超えた場合、10%または累進税率で課税される。
- 🔹 税率は、退職前に支給される場合は累進課税(5%〜35%)、退職後の支給は10%が適用される。
- 🔹 退職金・退職手当を受け取る際には、契約内容や支給基準を事前に確認し、必要に応じて企業や税務署に相談することが望ましい。
退職金や退職手当を受け取る際には、**「自分の手取り額がいくらになるか?」**を事前にチェックし、適切な納税を心がけましょう!