ベトナム政府は2025年2月28日、税金を滞納している個人や企業の代表者が一時的に出国できなくなる制度(出国一時停止措置)についての政令49/2025/ND-CPを公布しました。この記事では、この新たな政令をやさしく、わかりやすく解説します。
この記事のもくじ
政令49/2025/ND-CPが作られた背景、金額を明確に!
これまでもベトナムでは税金の滞納がある場合、出国禁止措置を取ることがありましたが、具体的な基準がはっきりしておらず、少額の滞納でも出国できなくなるケースが社会問題になっていました。そのため、今回の政令では明確な基準を設け、混乱を防ぐことを目的としています。
過去に以下の記事を作って共有させていただきました。
>>ベトナムの新税制:1,000万ドン(6万円)以上の未納税で出国禁止【2025年から施行か?】
>>ベトナムの税金未納で出国できず日本帰国や旅行に行けないかも?
この政令の具体的な内容を解説!
政令49/2025/ND-CP第3条では、出国禁止が適用される具体的なケースが定められています。
① 個人事業主・事業世帯主
- 滞納税額が5,000万ドン(約2,000米ドル)以上
- 税金の納期限から120日以上経過
② 法人(企業・協同組合など)の法定代表者
- 滞納している税金が5億ドン(約20,000米ドル)以上
- 税金の納付期限を120日以上超過
③ 登録住所で営業していない事業主や法人代表者
- 登録住所での営業が確認できず、税金が滞納している
- 滞納額に関係なく、税務当局の通知後30日以内に納税されない場合に出国禁止措置が適用される
④ 海外渡航や移住を予定するベトナム人や外国人
- ベトナムを出国する際に税金未納がある場合、納税完了まで出国が禁止される
出国禁止の手続きと解除方法
出国禁止措置の流れは次のようになります。
- 税務当局からの通知:対象者に電子通知で「出国禁止の予定」を知らせます。通知が電子で届かない場合は税務当局のウェブサイトに掲載されます。
- 30日の猶予期間:通知から30日以内に滞納分を納付すれば、出国禁止は適用されません。
- 正式な措置発動:30日以内に納税がない場合、税務当局が入国管理当局に出国禁止の依頼をし、実際に出国が停止されます。
- 納税後の解除:滞納した税金を完納すると、税務当局がすぐに出国禁止の解除を通知し、入国管理当局は24時間以内に解除手続きを行います。
日系企業や駐在員への影響と推奨する対応策
この政令は企業の経営者や駐在員にも大きな影響を及ぼす可能性があります。突然出国できなくなるトラブルを防ぐため、以下の対策をおすすめします。
定期的に税金の納付状況を確認する
税務署からの電子通知を受け取れる体制を整える
出国予定前に納税状況を確認し、納税証明書(tax clearance)を取得する
他国制度との違いとベトナム制度の特徴
他国(例えばアメリカや日本など)と比較して、ベトナムの制度は比較的少額の税金滞納でも出国禁止措置が取られることがあります。特に外国人や海外移住者への基準が厳しいため、日系企業や駐在員はより慎重な税務管理が必要になります。
まとめ
表でまとめてみます。
対象者 | 滞納金額 | 滞納期間 | 備考 |
個人事業主・事業世帯主 | 5,000万ドン(約2,000米ドル)以上 | 120日以上 | 税務当局の強制執行対象の場合 |
法人(企業・協同組合など)の法定代表者 | 5億ドン(約20,000米ドル)以上 | 120日以上 | 税務当局の強制執行対象の場合 |
所在不明の事業主・法人代表者 | 金額基準なし | 税務当局の通知から30日以内 | 登録住所で営業が確認できない場合 |
海外渡航・移住予定の個人・外国人 | 金額基準なし | 出国時点 | 未納がある限り出国停止 |
政令49/2025/ND-CPは税務コンプライアンス強化を目指していますが、企業活動や個人の自由な渡航にも影響を与えます。特に駐在員や経営者は、税金未納により予期しない出国禁止措置を受けないよう、日頃から納税状況の管理を徹底しましょう。通知後の猶予期間内に対処すれば措置を回避できるため、迅速で正確な対応が重要です。