マナボックスによるマナラボの法令解説です。

ベトナムでは、学生や副業希望者を中心に、**短時間で柔軟に働ける「パートタイム勤務」**の需要が高まっています。特に、カフェ・飲食・EC運営などでは欠かせない存在となっています。

しかしながら、「パートだから契約はいらない」「軽い雇用だから管理もゆるくていい」という感覚で雇うと、法令違反やトラブルの原因になりかねません。

ベトナムのパートタイムってなに?【労働法2019 第32条】

ベトナムでは「パートタイム労働者」はこう定義されています👇

📘 労働法 第32条より:

短期時間労働

「パートタイム労働者とは、1日、1週間、1か月の通常の労働時間より短く働く人のことです。」
「契約を結ぶときに、雇用主とパートタイムで働くことを合意します。」
「パートでも、正社員と同じようにお給料がもらえ、差別されず、安全な職場で働けるよう法律で守られます。」

つまり、働く時間が短くても、立派な“労働者”なんですね。契約が必要です。

短時間、パートだから契約はいらない」…は間違い!【労働法2019 第13条】

実は、パートタイムでも、アルバイトでも、社員でも、雇う前に労働契約を結ぶことは労働法上の義務です。条文も確認しまhそう。

📘 労働法 第13条 第2項:

「使用者(会社側)は、労働者を雇う前に労働契約を結ばなければなりません。」

✍️ これに従えばたとえ「1日2時間だけ」の勤務でも、仕事内容・お給料・勤務場所・時間などは紙に書いて契約しておくことが必要です。

パートタイムって、有期・無期契約とどう違うの?

ここで生まれる疑問がベトナムにおける労働契約の「有期・無期契約」との関連性です。私も??となりました。ここを整理していきましょう。契約形態の分類とパートタイムの位置づけの整理です。

なお、「有期・無期契約」については以下で解説しております。

>>ベトナムの有期・無期労働契約とは?違いや注意点をやさしく解説

「パートタイム」は「働き方(時間の短さ)」であって、「契約のタイプ(期間)」は別に分かれています。以下の表を参考にしてください。

契約形態契約期間労働時間保険義務
パートとの関係性
有期契約12〜36か月通常時間社会保険あり
パートタイムは多くここに該当
無期契約無期限通常時間社会保険あり
継続雇用時に切り替えが必要
パートタイム契約次第で柔軟短時間条件次第
時間の区分。契約形態とは別

📘 労働法 第20条:

「有期契約は2回まで。それ以降は無期契約に切り替える必要があります。」

🔍つまり、パートタイムでも、条件によっては無期契約になる可能性もあるということなんです。

試用期間ってあるの?【労働法 第24条・25条】

パートさんにも、労働法上は最初にちょこっと試す「試用期間」がある場合があります。でもこれは、仕事の内容や契約の長さによって違ってきます。ただ実務的にはパートの場合は「試用」を経ない場合もあると思いますね。

📘 労働法 第24条・25条より:

  • 1か月未満の契約 → 試用なし
  • 普通の作業(飲食店、接客など) → 最長6労働日
  • 専門的な仕事(技術職など) → 最長30〜60日

📝 契約書にきちんと「何日試用するか」を書いておきましょう。

時給はいくら払えばいいの?

ベトナムでは、地域によって最低時給が決められています。これは毎回アップデートされるので留意が必要です。

これを参考にしてもう少し大きな金額を払うケースが多いと思いますね。

なお2025年4月時点では以下です。2024年6月30日政令74/2024/ND-CPが適用されています。

地域旧最低時給(VND)新最低時給(VND)
地域Ⅰ22,50023,800
地域Ⅱ20,00021,200
地域Ⅲ17,50018,600
地域Ⅳ15,60016,600

時給100円ちょっとです。

ベトナムの社会保険はどうなるの?

お給料のほかに気になるのが「保険」のことですよね。
実は、働く期間によって保険の加入義務が変わってきます。

📘 社会保険法 第2条:ベトナムの社会保険法 第2条「適用対象者」に関する条文

1か月以上3か月未満の労働契約を結んで働く者

引用元:58/2014/QH13の2条

ただ将来的に新しい社会保険法が発行されますからそこは留意してください。

>>従業員の社会保障が手厚く!2024年ベトナム社会保険法の改正点まとめ

契約期間加入する保険根拠条文
1か月以上社会保険(年金・傷病手当など)
社会保険法 2014 第2条第1項 a), b)
3か月以上社会保険+健康保険+失業保険
健康保険法 第12条第1項
雇用法 第43条第1項

健康保険法は「46/2014/QH13」です。雇用法はLaw No.: 38/2013/QH13です。

根拠:健康保険法 第12条 第1項

「3か月以上の労働契約を結ぶ者は、強制健康保険の対象となる。」

根拠:雇用法(労働法) 第43条 第1項

「3か月以上の労働契約を結ぶ労働者は、失業保険に加入しなければならない。

つまり、「3か月以上」の契約になると、社会保険に加えて、健康保険(医療)+失業保険の加入義務も発生します。以下も根拠条文

社会保険法2014 第85条 第3項

月に14労働日以上働かなかった場合、その月は社会保険に加入しなくてもよい(育児休暇を除く)。

つまり、契約期間が1か月以上でも、月に14日未満しか働かず給与を受け取らない場合は、その月の保険料は発生しません

実務上は1ヶ月未満にして社会保険に加入しないことが多いかと思います。

パート採用で気をつけたいこと【実務メモです】

💡 パートタイムでも、ちゃんとルールを守らないとトラブルのもとになります。

 必ずチェックしたい5つのこと:

  • ✅ 書面で契約を結ぶ(口約束はNG)
  • ✅ 業務内容・お給料・時間を明記
  • ❌ 個人書類(パスポートやIDカード)の原本を預けさせない(法律違反です!)
    📘 労働法 第17条:原本の保持は禁止
  • ❌ 保証金・事前振込を求める求人は避ける
  • ✅ 契約の更新は最大2回まで。それ以降は無期契約へ

ベトナム・パートタイム雇用チェックリスト(2025年版)

  1. 労働契約書を作成しているか?
     パートでも書面の労働契約が必要です【労働法 第13条】[1]

  2. 勤務時間は「通常時間より短い」パートタイム勤務であるか?
     通常:1日8時間、週48時間以内【労働法 第105条】[3]

  3. 最低時給を下回っていないか?
     地域ごとの最低時給に注意(例:地域Ⅰで23,800 VND/時など)

  4. 保険加入の義務はクリアしているか?
     ・1か月以上 → 社会保険
     ・3か月以上 → 健康保険+失業保険

  5. 試用期間の設定は適正か?
     ・1か月未満の契約 → 試用なし
     ・一般職なら最大6日以内が目安

  6. 契約書に必要事項が明記されているか?
     (勤務日数・時間・時給・勤務地・業務内容など)

  7. IDカードなどの原本を預かっていないか?
     原本保持は禁止されています【労働法 第17条】

まとめ

ベトナムでパートタイム従業員を雇用する場合も、フルタイムと同様に労働契約の締結が法律で義務づけられています。

また、最低時給や保険加入の条件も明確に定められており、勤務時間や契約期間に応じて適切に対応する必要があります。2024年7月1日からは政令74/2024/ND-CPにより最低賃金が改定(定期的にアップされるの注意が必要です)され、地域ごとの時給も引き上げられました。企業側はこうした規定を正しく理解し、パートタイムであっても適切な労務管理を行うことで、トラブル防止と信頼ある職場づくりが実現できます