こんにちは!マナラボの菅野です。
今回は、ベトナム法人設立時の「資本金のズレ」問題について徹底解説!
「えっ、ちゃんと1,000万円送ったのに、資本金が足りないって言われた!?😱」
そんな声をこれまで何度聞いたことでしょうか…
この記事では、その原因と解決策を実務レベルで深掘りします。
そして、2025年最新版として**「これなら大丈夫!」という対策もバッチリ紹介**していきます!
この記事のもくじ
まず、資本金の払い込み期限は90日!
有限責任会社(LLC)の場合
会社設立登記証明書(ERC)発行日から90日以内に、
「登録時に約束した通貨・資産の種類」で出資を完了する必要があります(企業法第47条)。
💡 注意:輸送や所有権移転の手続きに要する時間はこの90日に含まれません!
>>《完全保存版》DICA口座(直接投資資本口座)とは?ベトナム外資企業の資本管理ルールを通達06/2019で徹底解説!
「資本金が足りない!」の原因は何か?
日本からの送金後、ベトナム当局または銀行から
「資本金が不足してます」と指摘されることがあります。
その理由はシンプル、でも厄介。
それは、「資本金着金時のVND額」がズレているからなんです。
原因を徹底分解!資本金のズレはこうして起きる
✅ ① 為替レートの変動
- 登録時:1 USD = 23,000 VND
- 送金時:1 USD = 24,500 VND
このレート差だけで、数千万VNDの差が生まれます。
② 銀行の適用レートとスプレッド
ベトナムの銀行が使うのは「電信買レート(TT買)」。
これが意外と低く、想定より目減りする原因に。
③ 手数料控除の影響
送金時に「SHA」や「BEN」方式になっていると…
→ 受取額が減る!
→ 資本金が不足!
🧩 対策:「OUR(送金人全額負担)」を必ず指定しよう!
④ 複数通貨換算(JPY→USD→VND)
円建てで送ると、日本→中継銀行→ベトナム銀行の多段階換算でスプレッドがかさむ。
⑤ 着金タイミングのズレ
金曜に送って、月曜着金 → 月曜レートが適用される。
数日違いで大きな損になることも。
法制度上はどう扱われるの?
▶ 中央銀行(SBV)の見解(Circular 200/2014/TT-BTC)
「外貨で出資した場合、実際に送金されたUSD額が基準」
→ VND額のズレは問題にならない、とされています。
▶ しかし!DPI(計画投資局)やMPI(投資計画省)は…
IRCやERCに記載されたVND額と異なると「資本金不足」と判断される可能性あり!
📉 実際に、「VND不足」により**行政罰(最大5,000万VND)**が科された例も…. 多くはありませんがあります。
項目 | 内容 |
---|---|
法的根拠 | 政令122/2021/ND-CP 第46条3項a号 |
違反内容 | 出資期限を過ぎても、出資未完了状態で何の手続きもしていないこと |
罰則 | 3,000万~5,000万VNDの行政罰(法人に対して) |
よくあるケース | – 為替差でVND不足になったまま放置 |
これで安心!為替差問題への具体的な実務対策?
この表では、資本金送金時に生じる為替差リスクへの対策を、以下の3段階に分類しています:
- A:予防的対策(会社設立・送金前の準備)
- B:換金・着金時の対応(銀行・口座操作)
- C:事後対応(ズレ発生後の補正・説明)
アイデアなので参考までに。
区分 | 対策名 | 内容 | おすすめ度 |
---|---|---|---|
A1 | 資本金通貨を外貨(USD)建てで登録する | IRCやERCで資本金をUSDなどの外貨建てで登録すれば、為替差によるVND不足の問題自体が発生しない。 | ★★★★★ |
A2 | 多めに外貨を送金する | 想定為替より不利になった場合に備えて数百~数千USD程度多めに送金。ただし、過剰送金は増資扱いとされるおそれがあるため、注意が必要。 | ★★★★☆ |
A3 | 為替予約(Forward契約)を活用する | 送金前に銀行で為替レートを固定することで、送金後に為替が変動しても安心して資本金の受け取りができる。 | ★★★★☆ |
A4 | 銀行と事前にレート・手数料・受取条件を確認する | 送金銀行・受取銀行で適用される実勢レートや中継手数料を事前確認し、OUR方式で送ることで受取額の目減りを防止。 | ★★★★★ |
A5 | USDで送金する | 日本円ではなくUSDで送金することで、ベトナムでの換金時のスプレッドを抑えられ、処理もスムーズになる。 | ★★★★★ |
A6 | 送金を複数回に分割する | 一括送金ではなく、まず概算80〜90%を送金し、実際の着金額を見て残りを調整する方法。為替変動リスクを平準化できる。 | ★★★★☆ |
B1 | 外貨建て資本口座(DICA)を活用する | USD建て資本口座を開設し、USDで着金。自社判断で換金タイミングを調整し、VND換算のズレを抑制できる。 | ★★★★★ |
B2 | 分割換金でリスクを分散する | 一度に全額をVNDに換金せず、為替レートを見ながら複数回に分けて両替。為替差リスクを分散可能。 | ★★★★☆ |
C1 | 不足分を追加送金する | 受け取ったVNDが資本金額に足りない場合は、出資期限内に不足分を追加送金すれば対応可能。 | ★★★★★ |
C2 | VND資本金額の調整申請を行う | 実際の会計帳簿とERC/IRCのVND記載額に差がある場合、為替差を理由にDPIに修正申請することが可能(実務上の承認事例あり)。 | ★★★★☆ |
C3 | 財務諸表上の説明資料を整備する | 出資証憑・銀行取引履歴・為替レート記録などを準備しておくと、監査や税務調査への備えになる。 | ★★★★☆ |
C4 | 罰金リスクに備える | 資本金不足のまま放置すると、政令122/2021/ND-CP 第46条に基づき最大5,000万VNDの罰金が科される可能性がある。 | ★★★☆☆ |
網羅的にチェックリスト化するとこんな感じ。
C2についての補足
📎 根拠:Apolat Legal(2024年8月記事)によると、実務上この申請は承認されており、増資・減資手続きとは異なる柔軟な取り扱い。
最後にチェック!送金前の実務確認リスト
チェック項目 | 内容 | タイミング |
---|---|---|
IRCの出資通貨 | USD?VND? | 設立時 |
送金レートと受取レートの想定差 | 銀行と要確認 | 出資前 |
送金方式 | OUR指定・中継手数料に注意 | 出資前 |
為替予約の有無 | レート固定できるか? | 出資前 |
口座構成 | DICAの通貨別口座はあるか? | 設立時 |
出資スケジュール | 一括?分割? | 出資計画時 |
超過受取時の処理 | 事業用資金に流用可能か? | 会計・税務確認 |
まとめ:為替差を甘く見ると痛い目に…!
「外貨送ったし、問題ないでしょ?」では済まされないのが、ベトナム実務のリアル。
特に日本企業が初めてベトナムに進出する際は、
通貨の違い × 各省庁の見解の違い × 銀行実務の違いが三重に重なる“ズレ地獄”に…
だからこそ:
✅ 登録前から 為替差の可能性を試算しておく
✅ 送金時は 銀行とレート・手数料を事前に確認
✅ 不足が出ても 柔軟に対応できる体制を整える
これが、ベトナム進出企業にとっての鉄壁の備えになります!
ご不安な方、資本金の記録と税務調整に関して相談したい方は、
いつでもマナボックスにご連絡くださいね📩
ではまた!