こんにちは!マナラボの菅野です。

今日は、2025年7月1日から施行される企業法の改正について解説します。企業法が一部改正されるようですね。

>>ベトナム統一企業法の会社進出形態の種類を整理する 【まとめ記事】

「まずは全体像をつかみたい!」という方向けに、押さえておくべき実務ポイントをギュッとまとめてお届けします。

7月1日からベトナムではいろいろ変わりすぎてやばいですね。大変そうです!

「実質的所有者」とか「D/Eレシオ」なんて言葉も出てきて、ちょっと構えてしまうかもしれませんが、大丈夫。

改正の背景から始まり、今回の法律がどこをどう変えて、企業に何を求めているのか?一緒に確認していきましょう!

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なぜこのタイミングで企業法が改正されたの?

実は、今回の改正の裏には国際的な要請があります。

特にポイントとなったのが、「FATF(金融活動作業部会)」という国際機関によるマネーロンダリング防止の基準強化なんだとか。

世界中で企業の所有構造の透明性が求められる中、ベトナムでもこれに対応する形で「実質的所有者(Beneficial Owner)」という新しい考え方が法律に入る予定です。

もし対応が不十分だと、ブラックリスト入りのリスクも…ということで、これは対外信用や投資環境にも関わる大事な制度改正なんですね。

今回の改正、どんなところが変わったの?

2025年7月1日から施行される**「企業法改正法(2025年6月17日可決)」は3条から成り立っています。ただ2条は「施工日」で3条は「経過規定」なので形式的な内容です。

実質的で本質的な内容は1条です。ここのボリュームが大きいです。これは28項目から成り立っています。その構造を表にすると以下。参考までに。

抽象カテゴリ(改正テーマ)内容のサマリ対応する改正項目(第1条a~項)
1. 実質的所有者に関する新制度の導入 ⭐「実質的所有者」の定義、情報収集・管理・提出義務、登録書類への記載、官への提供権限等1d, 2, 3, 7, 8, 9, 10, 11, 13c, 14, 26, 27
2. 登記手続・情報管理の制度整備登録情報の変更届出義務、電子申請制度の見直し、情報連携体制などの整備、定義明確化(配当・市場価格)1a, 1b, 1c, 12, 13a, 13b, 13d, 25a, 25b, 25c, 28
3. 法定代表者・構成員の責任強化法定代表者による損害への個人責任明記、株主招集請求への責任明示4, 18
4. 出資・資本金に関する規制強化虚偽申告、未出資、不正評価、出資返還条件の厳格化5, 15, 17
5. 経営参加に関する制限明確化公務員・刑事訴追中の者の企業参加制限・例外規定の明確化6a, 6b, 6c
6. 株主総会・社員会議の統治強化会議の招集・開催手続、費用負担、株主名簿作成ルール16, 20, 21
7. 社債発行に関する財務制限私募社債のD/E比率(5倍以内)制限を導入19
8. 解散・廃止・地方管理に関する規定整備構成員不足による解散、支店廃止、地方政府の登録管理責任22, 23, 24, 25a, 25b, 25c

中でも実務に関係する重要ポイントかなと思うのを抜粋してご紹介します!

改正ポイント① 「配当」と「市場価格」の定義が明文化(第4条)

たとえば、こんなふうに明記されました👇 ただ、当たり前のことを言っているだけのような気もします。

「配当とは、税引後利益から各株式に対して金銭またはその他の資産で支払われる金額である」
(改正法第1条第1項a)

さらに、出資持分や株式の市場価格も、上場/非上場それぞれで明確に定義されています。

これで、株式の評価や譲渡の根拠がよりはっきりしますね。

>>5分で理解するベトナムにおける配当・分配についてのポイント【まとめ記事】

改正ポイント② 「実質的所有者」が登場!(第4条第35項)

「実質的所有者とは、実際に資本を保有または企業を支配する個人」
(改正法第1条第1項d)

今回はこの概念が初登場。
具体的な提出方法や判定基準などは政令(現在策定中)で定められますが、今後の登記書類にはこの情報も含める必要が出てきます

>>名義だけじゃ通用しない?実質的所有者を巡る新ルールについて考える【2025年企業法改正で義務化】

改正ポイント③ 法定代表者の責任がより明確に(第13条)

「企業に損害を与えた場合、法定代表者は個人として法的責任を負う」
(改正法第1条第4項)

以前から同じような文言はありましたが、今回はより明確になったという感じでしょうか?

つまり、肩書きがあるだけで何もしない…というのは通用しない時代に。代表者としての「責任の所在」がはっきり可視化されました。

ここの影響も大きいでしょうね。実質的に責任を負うので。

改正ポイント④ 虚偽の資本金申告は禁止!(第16条)

「出資を実行しなかったり、資産を過大に評価したりして登記する行為は違法」
(改正法第1条第5項)

形式的に「1億VND出資しました!」と言っても、本当に出資されていなければ違反です。税務調査や資本金証明にも影響が出るので、会計実務としても要注意です。

まあ当たり前のことをより明文化されたということでしょう。

改正ポイント⑤ 公務員や刑事被告人の起業制限を明確化(第17条)

「公務員や刑事訴追中の者は原則として企業の設立・出資・経営に参加できない」
(改正法第1条第6項)

ただし、科学技術・国家デジタル変革分野に限っては例外もあり。ここは細かい要件もあるので、関係者が該当する場合は個別確認が必要です。

 改正ポイント⑥ 登記変更時の届出義務が拡大(第31条)

「外国人株主、実質的所有者などの情報変更時は、3営業日以内に届出が必要」
(改正法第1条第13項)

これは忘れがちですが、うっかり遅れると罰則リスクも

3営業日,,,,。なんか実務的には無理そう。届出の内容にもよりますが。

改正ポイント⑦ 社員会議・株主総会の招集ルールが明確に(第57条・第115条・第140条)

  • 招集されない場合の代替手段
  • 会議費用の会社負担
  • 株主リスト作成のタイミング(10日前まで)など

内部統治が制度として明文化され、紛争防止にもつながる内容です。

 改正ポイント⑧ 私募社債に財務制限(第128条)

社債を発行する日系企業は見たことがないので無視でもいいかと思います。

「社債発行後の総負債が、直前年度の自己資本の5倍以下であること」
(改正法第1条第19項b)

社債発行は手軽に見えますが、今後は財務制限を守らないと発行不可
財務諸表(監査済)で自己資本比率を確認しましょう。

影響度を加えた表にすると以下のようになりますかね。

改正テーマ(番号)改正内容の概要該当条文(改正法)実務影響の要点日系企業への影響度
① 定義の明確化「配当」「市場価格」「実質的所有者」の定義を新設・明文化第4条(第1条1a・1b・1d)取締役会や親会社への報告文書・評価書の精度が問われる
② 実質的所有者に関する義務実質的所有者情報の収集・保存・提出義務の追加第8条5a・第11条・第20〜25条(第1条2〜10)登記書類や親会社報告書の書式変更、内部確認手順の整備が必要高⭐️
③ 法定代表者の責任強化法定代表者が会社に損害を与えた場合に個人責任を明記第13条2項(第1条4)駐在員代表者のリスクが増し、任命時の社内決裁・教育が重要に高⭐️
④ 出資・資本金に関する規制強化出資の未実行・虚偽申告・過大評価を明確に禁止第16条4・5項(第1条5)設立時・資本変更時の書類(銀行証明など)に厳格対応が必要
⑤ 企業関与の制限強化公務員・刑事訴追中の者等による設立・出資・経営を禁止第17条2・3項(第1条6)出資者にベトナム人がいる場合の法的確認が重要
⑥ 登記・届出制度の見直し電子申請制度の一部廃止、登録内容変更時の届出義務強化第26条、第31条、第176条(第1条12・13・22)外国株主・駐在員の情報変更に3営業日対応が求められる
⑦ ガバナンス規定の明確化株主総会・社員会議の招集、会議費用、議事管理の明記第57条、第115条、第140条、第141条(第1条16・18・20・21)会議運営や内部承認プロセスの整理・記録が必要に
⑧ 社債発行・解散規定の厳格化D/E比率制限、株主数不足による自動解散の明記第128条、第207条、第213条(第1条19・23・24)社債発行や会社構成見直しの際の社内会計・人事調整が必要

【日系企業向け】最低限やるべき7項目チェックリスト(2025年企業法改正対応

チェックリストを準備しました。

チェック項目内容
登記届出体制の整備実質的所有者や外国株主などの情報変更時に、3営業日以内に事業登録機関へ届出できる体制があるか
法定代表者の責任理解駐在員代表などが、違反による損害について個人責任を負うことを社内で明確にし、周知しているか
出資払込の証憑整備登録資本金が実際に払込済みであることを示す銀行明細等の証憑を保管・整備しているか
定款・登記書類の確認配当、議決、会議招集、出資に関する記載内容が改正企業法の定義と合致しているか
実質的所有者の社内把握該当する可能性のある人物をあらかじめ社内でリストアップし、政令施行に備えて準備を開始しているか
D/E比率の確認(社債発行企業)社債発行企業の場合、自己資本比率が直前年度監査済BSで5倍以下となっているか
登記変更時の本社報告代表者・株主・出資内容変更などがあった際、本社との報告・承認フローが整備されているか

📝 まとめ

今回の企業法改正は、**企業にとってリスクではなく「制度を整えるチャンス」**ととらえてもいいかもです。

透明性と説明責任が求められる時代なんですかね。

まずは、自社の「今の状態」を見つめ直し、ルールに基づいた信頼される経営体制を作っていきましょう!

次回は、「実質的所有者とは?」「誰を報告すべき?」という点をテーマに、別記事で徹底解説していきますね。

ではまた!