こんにちは!マナラボの菅野です。
今日のテーマはこんな感じです👇
「ベトナムでは、発注書って契約書の代わりになるの?」
という、ちょっとドキッとするけど、みんなが一度は思ったことのある疑問についてです。
この記事のもくじ
「POだけで契約したことになるんですか?」という質問、多いです
実際に、現場ではこんな声をよく聞きます。
「発注書(Purchase Order)を送ったら、もうそれって契約になるんでしょうか…?」
「契約書を作る余裕がなかったので、とりあえずPOで…でも大丈夫かな?」
うんうん、気持ちすごくわかります。契約書が100%必要だ!なんて思わないですよね。
ベトナムでは「とりあえず発注書だけで取引スタートしちゃった」っていうケースもあったりします。多くはありませんが。
だけど心のどこかで、「これって法的に大丈夫?」という不安もくすぶっていたりします。
一般論:「契約書の代わりになることもある」
まず、よくある一般論からお伝えすると、
“ちゃんとした内容であれば、発注書だけでも契約の証拠になる”という考え方があります。
実際、ベトナムの法令でも、
「売買契約は、書面またはそれと同等の形態(例:テレックス、FAX、データメッセージ)で成立する」
(通達39/2015/TT-BTC 第1条)
とされているんですね。
つまり、メール添付の発注書でも、内容がしっかりしていれば、
書面と同じような扱いになることもある、ということです。
でもそれ、どのレベルまで「しっかり」ならOKなの?
公文書名 | 発行機関 | 日付 | 内容の要旨 | 発注書が契約とみなされる条件 | 実務上のヒント |
---|---|---|---|---|---|
1193/TCHQ-GSQL | 税関総局 | 2024年2月8日 | 税関手続きにおいてPOを契約書と同等に扱うことができる | 売買当事者名・商品名・数量・単価・引渡条件(Incoterms)・支払条件などが明記され、税務判断に耐える内容になっていること | 貿易関連のPOは、Incotermsと支払条件まで丁寧に書くと安心です |
4380/CT-TTHT | ホーチミン市税務局 | 2012年6月13日 | メールや注文書でも、当事者の権利義務が明記されていれば経済契約とみなせる | 「注文の確認」「支払条件」「返品・保証条件」など具体的な条件が明文化されていること | メールでやり取りした場合も、PDFで残し、相手の返信を保管しておきましょう |
1988/TCT/DNK | 税務総局 | 2004年6月30日 | FAXでの注文書も、売買契約の証拠として認められる | 請求書・PO・納品書などの情報が一致していること(矛盾がないこと) | 文書の日付や金額の整合性が重要。POの控えは請求書とセットで保管を |
ここがいちばんモヤモヤするポイントです。
そこで今回は、いくつかの「オフィシャルレター(税務・税関の正式見解)」を例に、
どんな発注書なら“契約扱い”されて、どんな発注書は“ただの紙”で終わっちゃうのか?
を整理してみました!
ケース①|税関総局 公文書 1193/TCHQ-GSQL(2024年2月8日)
こちらは「発注書って税関手続きで使えるの?」という場面で出された見解です。
この公文書によると、発注書に以下の情報がきちんと入っていれば、
契約書と同等の書類として通関処理に使ってもOKという判断が下されています。
✅ 認められる条件:
- 売り手・買い手の名前
- 商品名・数量・単価
- 納期と引渡条件(Incotermsなど)
- 支払条件
- 双方の署名(または受領確認)
つまり、「Excel表+サインだけ」では足りないかもしれませんが、
ちゃんとPOの中で“取引条件”が語られていれば、契約として認めてもらえる可能性があるということですね。
ケース②|ホーチミン市税務局 公文書 4380/CT-TTHT(2012年6月13日)
これはちょっと古い資料なんですが、すごく本質的なことが書かれていて好きなんです。
この文書では、
「Eメールでの売買確認(見積もりや注文書)であっても、当事者間の権利義務が明記されていれば、経済契約の一形式とみなせる」
という表現があります。
これ、めちゃくちゃ実務的ですよね。
「書式じゃなくて、中身が大事ですよ」と言ってくれているんです。
ケース③|税務総局 公文書 1988/TCT/DNK(2004年6月30日)
これは中国企業との貿易取引の例。
FAXで注文を受けて、それに基づいて輸出申告&VATインボイスを発行したケースです。
税務当局はこのとき、FAX文書を契約の証拠と認めました。
ただし、「FAX日と請求書の日付が違っているけど、金額や条件が一致しているならOK」と補足がついています。
ようするに、書類同士に“矛盾”がないことが大事だよ、という話ですね。
シンプルに言うと、こうです
法令だけを見ると、「発注書だけでも契約の代わりになる」可能性はあります。
でも、「ちゃんとした発注書」じゃないと、それは通用しません。
ざっくりいうと、次の3つが揃っていれば、契約としての力を持つ可能性が高いです。
- 取引条件が明確に書かれている(納期・金額・支払など)
- 双方が同意している証拠がある(サインやメールのやりとりなど)
- 他の書類と矛盾がない(請求書・納品書との整合性)
「そんなにしっかりしたPO、毎回作るの大変…」と思ったあなたへ
わかります。現場は忙しいんですよね。
でも、ちょっとした工夫でリスクをグッと減らせるんです。
たとえば…
- Wordテンプレートに自社情報を入れておいて、コピーして使う
- 「注文書」と書いたPDFにして、サインをもらって保存
- メールで「この内容で発注します。確認お願いします」と一言添えておく
このくらいでも、あとで「合意があった」と証明できる材料になります。
ではまとめますね
ベトナムでは、発注書が契約書の代わりになることもあります。
でも、それは「条件が整っていれば」の話です。
「サインなし・金額だけ」のPOでは、相手がトラブルを起こしたときに守ってもらえないこともあります。
でも逆に、POにちょっとだけ気を配っておけば、
契約書をわざわざ作らなくても、取引の土台としてちゃんと機能してくれます。
「契約書は難しい…でも守られたい」
そんな気持ちに、発注書はちゃんと応えてくれるポテンシャルがあります。
自社のPO、ちょっとだけ整えてみませんか?😊
次回は、「実際に契約に使える発注書のテンプレート例」をご紹介しますね!お楽しみに!