こんにちは!マナラボの菅野です。

今回は、「EPEにサービスを提供すればVAT 0%でいい」と思われていたこれまでの常識が、2025年7月1日から大きく揺らいでいる問題を深掘りします。

>>【比較表つき】ベトナムEPE向けサービス提供に対するVAT 0%→10%問題を旧法と新法でわかりやすく整理【実務ではまだ混乱】

2025年7月24日に財務省が発行した「公式文書1292/CST-GTGT」では、EYベトナムからの照伝に対して、会計・税務・コンサルサービスに0%VATを適用できるかどうか?という重要な解釈が示されました。

結論から言うと,

「輸出生産活動を“直接”支援しない限り、EPEに提供していても、0%は適用できない」 との明確な線形きが示されました。

制度の趣旨とどうなの?理論的にどうなの?という疑問もあるかとおもいます。今回の記事ではあくまでこのオフィシャルレターの解説です。

さて、旧法との違いや新規則、実務上のポイントを徹底的に見ていきましょう!

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ベトナムオフィシャルレターの1292/CST-GTGTとは?

EYベトナム社が税務当局に照会した、「EPEに対して提供する監査・税務・M&Aコンサルティングサービスは、0%VATの対象になるか?」という質問に対して、**財務省税務政策監督局が回答したのが本件文書(1292/CST-GTGT、2025年7月24日付)です。

EYベトナムはとても有名なコンサルティングファームですのでみなさんも聞いたことあるでしょう。

>>参考としたニュースとOLのリンク

引用された法令は以下の2つ:

  • 付加価値税法:Law No. 48/2024/QH15 第9条第1項
  • 政令:Decree No. 181/2025/NĐ-CP 第17条第2項bおよび第4項

この文書では、「サービスがEPEに提供されていても、輸出生産を直接支援していない限り、0%VATは適用できない」と明確に述べられました。

OLの内容を理解しよう!

以下は、ベトナム財務省 税務政策監督局が発行した公式文書「文書番号:1292/CST-GTGT」の全文日本語訳です。この文書は、保税区内の組織に対するコンサルティング・監査・税務サービス等の提供に0%のVAT(付加価値税)を適用できるかどうかについての見解を示したものです。


📄 文書概要(日本語訳)

発行者: ベトナム財務省 税務政策監督局
文書番号: 1292/CST-GTGT
発行日: 2025年7月24日
宛先: EYベトナム株式会社(EY Vietnam)
件名: 保税区にある組織へのサービス提供における付加価値税(VAT)0%税率の適用について


1. 法的根拠と税率規定

  • **付加価値税法 第9条第1項(法律第48/2024/QH15号)**では、「輸出サービス」について0%税率を適用できる旨が定められており、その中には以下のようなサービスが含まれます:

「b)保税区にある組織に直接提供され、その消費が輸出生産活動に直接関連しているとみなされるサービス」

  • 政令181/2025/NĐ-CP 第17条もこれを詳細に規定し、「保税区内で行われる生産・輸出活動に直接関係するサービス」に限って0%税率の適用が認められています。


2. 0%税率が適用される例

  • 保税区内の組織に対して直接提供され、以下のような活動に使われるサービス:

    • コンテナ積み替え、工場・倉庫レンタル

    • 労働者輸送、給食、飲料提供

    • 生産、加工、製造関連サービス 等


3. 0%税率が適用されないケース(政令第17条第4項)

  • 以下のようなサービスは0%税率の適用外となる:

  • 技術移転、知的財産権の譲渡
  • 再保険サービス
  • 金融サービス(信用供与・資本移転)
  • デリバティブ取引
  • 郵便・通信サービス
  • 輸出とされない商品や飲食
  • 保税区での展示会、トレーニング、広告などのイベントサービス
  • 営業や販売促進に関するサービス
  • 労働者に対する賃貸住宅、会議室などのサービス

4. EYベトナムの提供するサービスに関する結論

  • 監査、税務コンサル、M&Aアドバイザリーなど、製造輸出活動に直接関連しないサービスについては、

    • 保税区内に提供されたとしても、0%のVATは適用されない

    • なぜなら「輸出サービス」の定義から外れているため


5. 結語

財務省 税務政策監督局は、上記の理由に基づき、EYベトナムが提供する一部のサービス(監査、税務、M&A等)には、保税区であっても0%税率は適用されないことを正式に通知しました。

これまでの常識が変わる?“EPE向け=0%”は通用しない時代に

以前は、Circular 219/2013/TT-BTC(第9条)などに基づき、EPE向けに提供する多くのサービス(会計・税務・清掃・ソフト開発など)が、「輸出サービス」とみなされ、VAT 0%が広く適用されてきました

しかし、2025年7月1日施行の新しい法律では、これがガラッと変わったのです。

0%VATが認められるための“4つの条件” 大事

文書1292号は、新法と政令の次の条文に基づいて判断を下しています:

政令181/2025/NĐ-CP 第17条第2項b
「保税区内の組織に直接提供され、そのサービスが当該保税区内で消費され、輸出生産活動を直接支援していること」

さらに、第4項では除外されるサービスとして次のようなものが挙げられています!

  • 技術移転
  • 金融・資本移転
  • 再保険
  • 郵便・通信
  • 宣伝・マーケティング
  • トレーニング、展示会
  • コンサルティング

つまり、以下の4条件をすべて満たす必要があるのです:

条件内容
① 対象組織保税区(EPEなど)に対してサービスを直接提供していること
② 使用場所保税区内でサービスが消費されていること
③ 支援内容輸出生産を“直接”支援する内容であること
④ 除外規定政令181/2025/NĐ-CP 第17条第4項に該当しないサービスであること

会計・税務・コンサルは適用外なの?文書1292号の結論

文書1292号では、EYベトナムが提供するような次のサービスが列挙され、それらは「直接支援には該当しない」としています。

  • 会計サービス
  • 税務アドバイザリー
  • M&Aアドバイザリー
  • 経営コンサルティング

そのため、たとえEPEに提供していても、これらのサービスは0%VATの対象にはならないという見解が示されたのです。つまるVATが10%であれば、それを加味しなければいけません。

じゃあ「直接支援」とは?政令に見る具体例

政令181/2025/NĐ-CPの中では、0%VATが適用される「輸出支援サービス」の具体例として、次のようなものが挙げられていますよ。

  • 港湾・倉庫でのコンテナ積卸し
  • 荷役・封印・梱包
  • 電力供給
  • 運搬サービス

これらに共通するのは、「物理的・運用的に不可欠」「EPE内またはその近辺で完結」「生産や出荷に直結」という点です。

つまり、「工場が止まる/止まらないに関わるレベルのサービス」が“直接支援”と評価されると考えられます。

実務の混乱:企業はどう動いている?

現在(2025年7月末時点)、企業現場では混乱が続いています。

  • 「これまで0%で請求していたが、今後どうすればよいか?」
  • 「契約済の案件にも新法を適用すべきか?」
  • 「税務総局からの追加ガイダンスは?」

ある大手会計事務所は、「税務サービスは“直接支援”には該当しない。今後は原則10%課税に切り替えるべき」と明言しています。

一方で、「明確な否定がない限り0%で継続したい」という企業もあるため、対応は分かれています。マナボックスベトナムもEPE向けのサービスは0%で請求させていただきたいと考えております。お客様に負担をかけたくないからです。

よくある質問(Q&A)

Q1:施行前(2025年6月30日)に提供したサービスは?
👉 旧法(Circular 219など)が適用されます。ただし、重要なのは“業務完了日”です。請求書発行日ではなく、作業報告書などのエビデンスを残しましょう。

Q2:EPEに提供する会計・税務サービスは、今後も0%で請求していい?
👉 非常にグレーです。文書1292号の見解に従えば、0%は難しいと考えるのが保守的。税務局への事前照会を強く推奨します。


実務対応チェックリスト

項目チェック済?
サービスが「直接支援」に該当するかを検討した
サービスがEPE内で提供・消費されているか確認
契約書・送金記録・投資ライセンスを保管している
税率を10%に見直す準備・社内承認を整えている
税務当局への照会を検討した

まとめ:0%の前提はもう通用しない

✅ EPE向けというだけで0%が通用した時代は終了
✅ 新制度では、「どこで、何を、どう支援するか」が鍵
✅ 会計・税務・コンサルはグレーゾーン。事前照会 or 10%での安全運転が推奨
✅ 今後も税務総局の新通知・通達に要注目です!

 マナボックスでは、税務当局への照会支援、請求書の税率確認、契約見直しに関するご相談をお受けしています。

「これって0%で出していいの?」と迷ったら、まずはお気軽にお問い合わせください!

それではまた次回!