〜様式・届出・10日ルールまでやさしく徹底解説!〜

こんにちは!マナラボの菅野です。

今日は、ベトナムの総務の新人さんからもよく聞かれるこの質問からスタートです。

「ベトナム子会社の“会長”が変わるんですが、これってどんな手続きが必要なんでしょうか?
会長って“委任代表者”なんですか?法定代表者も変える予定です!」

うんうん、ここって本当にややこしいんですよね。
「会長」「委任代表者」「法定代表者」って、それぞれどう違うの? 誰を変えると何を出すの? そもそもERCに載るのは誰? と、頭の中が「???」になりがちです。

でも大丈夫です。
この記事では、ベトナムの一人有限会社で出資者が日本法人の場合における、会長(=委任代表者)の交代と、法定代表者の変更について、様式番号・提出先・期限・罰則まで全部まとめて解説します。

☑️ この記事を読むとできること

  • 自社が「届出が必要なケース」か「不要なケース」か、判断できるようになります
  • 届出が必要な場合に何を・いつまでに・どこに提出するかが、迷わずわかります
  • ベトナム語の様式(II-1/II-2/I-10)の使い分けが理解できます
  • 罰金がかかるケースも把握でき、実務トラブルを未然に防げます

まずは用語整理:3つの“帽子”を区別しましょう

以下の知識が前提条件として大事です。

用語正体どこに出てくる?ポイント
会長社内の役職(会社のトップ)投資家としての位置付けと理解するとわかりやすい。定款・社内文書に記載一人LLCでは親会社の“会長”が運営を担うモデルが多い
委任代表者(người đại diện theo ủy quyền)親会社(日本法人)が書面で指名する“分身”登録申請書・様式I-10で管理登録必須。ERCには出ないが、会社に対して届出・通知が必要
法定代表者(người đại diện theo pháp luật)ベトナム法上、会社を対外的に代表する者ERCに記載される銀行・契約・税務の対外窓口。交代時はERC再発行が必要

詳細に解説していきましょう。

あなたの会社はどのケース?

✅ ケース1:会長 = 委任代表者 = 法定代表者(すべて同じ人)

実際にもこのケースはあります。
この場合は会長の交代=委任代表者の交代=法定代表者の交代になるので、ERCが変わります。届出必須です。

提出する様式:II-1(変更通知)+I-10(委任代表者リスト)+II-2(法定代表者変更通知)
公開:ERC再発行あり、NBRPにも掲載あり

✅ ケース2:会長 = 委任代表者、法定代表者は別人(Directorなど)

この場合は委任代表者の交代のみなので、ERCは変わりません。
でも、I-10で届出が必要です。

提出する様式:II-1+I-10
公開:なし(内部データベースの更新)

❎ 会長 ≠ 委任代表者、法定代表者も変えない

この場合は、委任代表者も法定代表者も変わらないので、会長だけが交代するなら原則、登記届出は不要です。

ただし、委任代表者が未登録の場合はそもそもNGなようです。会社の所有者が法人(日本法人)の場合は、必ず1名の委任代表者を登録しなければなりません(企業法第14条)

法的根拠まとめ(要点だけ抜粋)

根拠もまとめておきますね。

  • 企業法2020
     - 第14条:組織所有者は書面で委任代表者を指名し、会社に通知する義務あり
     - 第21条4(b):委任代表者は登録申請書の一部として提出必須
     - 第28条:ERCに記載されるのは法定代表者などの一部情報のみ
     - 第31条:登録内容変更は10日以内に届出が必要

  • 政令01/2021/ND-CP
     - 第12条:登記の申請は**法定代表者または委任を受けた者(POA)**が実施

  • 通達01/2021/TT-BKHĐT
     - 様式I-10:委任代表者リスト
     - 様式II-1:変更通知(総合様式)
     - 様式II-2:法定代表者変更通知

  • 政令122/2021/ND-CP
     - 登録遅延:警告〜最大3000万VNDの罰金
     - 公告漏れ:最大1500万VND

ケース別:変更手続マニュアルについて

ケース1:会長・委任代表者・法定代表者すべて交代する場合

📌 提出様式

  • 様式II-1(変更通知)
  • 様式II-2(法定代表者変更)
  • 様式I-10(委任代表者リスト)

📌 必要書類

  • 日本法人によるオーナー決定書(交代決定)
  • 委任代表者指名書
  • 新任者のパスポート認証写し
  • POA(代理申請の場合)

📌 手続きの流れ

  • 日本で書類作成 → 公証 → 外務省公印確認 → 在日ベトナム大使館で領事認証
  • ベトナム現地で翻訳+翻訳公証
  • DPIにオンライン申請(NBRP)または窓口提出
  • 約3営業日でERC再発行
  • NBRPで公開(30日以内)

📌 アフターケア

  • 銀行・電子署名・税務署・社会保険事務所・取引先に代表者変更の通知を!

ケース2:会長(=委任代表者)だけが交代する場合

📌 提出様式

  • 様式II-1(変更通知)
  • 様式I-10(委任代表者リスト)

📌 必要書類

  • 日本法人のオーナー決定書
  • 委任代表者指名書
  • パスポート認証写し
  • POA(必要時)

📌 注意点

  • ERCの再発行はありません
  • ただし、10日以内の届出が必要(違反は罰金対象)

⏰ 10日ルールと罰則まとめ

内容遅延日数罰則
登録内容変更(委任代表者など)1〜10日警告
登録内容変更11〜30日300〜500万VND
同上31〜90日500〜1000万VND
同上91日以上1000〜2000万VND
未届け2000〜3000万VND+是正命令

公告忘れ(法定代表者変更あり)は別枠で最大1500万VNDの罰金

よくある誤解の整理

  • 「会長を変えたからERCも変えなきゃ?」
     → いいえ、法定代表者を変えるときだけです。

  • 「POAと委任代表者って一緒じゃないの?」
     → 全然別です! POAは“申請を出す人”への委任、委任代表者は“出資者の分身”。

  • 「会長が決まったら委任代表者は自動になる?」
     → なりません。 必ず**書面で指名→届出(I-10)**が必要です。

 提出チェックリスト(両ケース対応)

  • 日本側:決定書・指名書・パスポート写し → 公証 → 外務省 → 領事認証
  • ベトナム側:翻訳・翻訳公証
  • DPIへの提出:II-1+I-10(+II-2)
  • 10日以内に完了
  • 必要に応じて公告(法定代表者交代時)
  • 銀行・税務署・社保への対応

✍️ さいごに(すげののひとこと)

会長って“社内の役職”なんだけど、
ベトナムでは「親会社の分身(委任代表者)」であったり「ERCに載る法定代表者」だったり、役割が重なることがあるんですよね。
だからこそ、どの帽子が変わるのか? を見極めると、必要な届出や書類も自然と決まります。

この記事が、
「どこに出す?」「何を作る?」「どれが要る?」の悩みをスッと解消するガイドになっていたらうれしいです。

迷ったら、「誰がどの帽子をかぶっているのか」だけ、確認してみてくださいね!
それではまた。マナラボの菅野でした!