税関調査で、在庫差異を指摘された!? その額なんと1億円!?

こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。

本日は、特に輸出加工企業であるEPE企業で論点となる、在庫差異について解説していきたいと思います。

在庫差異について理解すれば、事前の対策が可能となり多額な罰金の回避、本社への合理的な説明が可能となりますよ!

本業でないところのストレス‥‥。避けたいですよね。実務上での話ですので、より実践的です。

在庫差異が発生する、その理屈

まず、在庫差異とはなんでしょうか? これを整理していきましょう。

在庫差異を言葉で表現すると、以下の通りです。

  • 税関側の在庫残高(あらかじめ会社が登録したBOMに基づいて計算された在庫残高)
  • 会社側で把握している実際の在庫残高

両者の差額のことです。

BOMという専門用語が出てきましたが、要するに、標準で設定した消費量のことです。詳細は下記を参照。これは生産標準量とかProduction Normとも呼ばれたりします。

BOMとは、製造業で用いられる部品表の一形態である。製品を組み立てる時の部品の一覧と、場合によっては階層構造を表す。

例えば、製品1個作るのに100の投入が必要。そのうち20がどうしても製品にならず(歩留まりによる)、80が製品となる。この場合、製品1個を製造するには、100を消費すると定義されます。また、実際には不可避の不良も発生しますよね。

なぜ、在庫差異が発生するのか?

次に発生理由を整理していきます。

製造を実際に経験しているあなたであれば、すぐに理解できたのではないでしょうか?

まずは、BOM(標準)通り製造が進むわけがないということですよね。実際の製造過程は複雑な場合ケースがほとんでです。

歩留まり率も一定ではないですし、改善によって歩留まり率がよくなることだってあります。不良率だってずっと一定とは限りませんよね。

それに加えて、試作品だって製造する必要があるかもしれません。また、社内で利用する場合や、販売促進費用のサンプルで消費する可能性もありますよね。盗難だって?あるかもしれません。

すなわち、税関側で計算した在庫と会社で把握している在庫が一致する可能性はほぼゼロなのです。奇跡でも起きない限り一致しません。

在庫差異が起こると何が生じるのか?

税関上と法人税とに分類されます。

税関調査では何が起こる?

在庫差異は必ずといっていいほど生じます。

そして、ほとんどの場合は、税関在庫>会社在庫となる傾向です。

なぜならば(繰り返しになりますが)、販売以外にも製品を消費(試作品や販売促進のため、社内利用も)しているからです。また、当然ながら実際の歩留まり率と不良率も標準とは異なるはずです。

EPE(輸出加工企業)は、大きく以下の優遇を受けています。

VATと輸出入関税の免税

です。

税関側の理論はこうです。

「BOM通りに製造、出荷できるはずだ。」

「そうじゃない分は、ベトナム国内で販売、横流ししたろ‼」

「じゃあ、VATと輸出入関税の免税は認めん❕」

という理屈のようです。

絵にしてみるともっと理解が深まるかもしれません。

※ただし、関税担当官が、「これがあるべき消費量だ!」って見做してしまうことがあるようです。


法人税法上は?いったいどうなる?

そして、法人税法上も論点になってしまう可能性があるんです。

この標準消費量(税関とか会計上とかあるのですが、そこは無視します。)を超えてしまって消費してしまった分、つまり、税関在庫(標準在庫)>会社在庫である超過分については、損金不算入にするぞ!という指摘です。

あんまりですよね、、、、。理不尽すぎる、、、、。

しかし、実際にはあるようですよ。(2014年より、税法上はこの決まりがなくなったようです)

この分を損金不算入にされてしまったら、たまりませんよね。損金不算入されたら、お金が減るって認識してください。

“損金不算入”ってなんだ?

社長であるあなたが実施すべきこととその効果

どうでしょう?

“在庫差異”とっても怖いですよね。会社の規模によっては、半端ない金額になる可能性があります。

しかも、なんにも資料を準備していないと、標準消費量を見なされてしまう可能性もあったり‥。

これらについてマネジメントする義務が、社長であるあなたにはあります。

では、どのようにしていったらいいでしょう?

これには、鳥の目と虫の目が必要です。

大まかに経営分析を実施する。

鳥の目の部分です。

財務諸表は、会社の実態を数値に著したものです。いわば、会社の健康診断書です。したがって、異常があれば、月次決算書である財務諸表に現れることになります。

正しい財務諸表であれば、キチンとうめき声が拾えるのですね。

社長は、これに気が付かないといけません。

具体的には、原材料の消費比率の推移を分析していく必要があります。BOMがあれば、生産量に対する原材料費率の推定ができるはずです。

60%?65%?こんな感じです。

このあたり、社長であるあなたが一番詳しいはずです。このあるべき指標と実際がずれてたらなにか起きているということです。

参考記事:製造会社の財務分析で重要な原材料比率分析!正しい経営分析するための2つのポイントを解説

もう少し詳しく分析し、説明資料を準備する。武器を持つ。

虫の目の部分ですね。

実際使用量とBOMの間の差異を個別に製品ごとに分析します。このためにはシステムが役にたつかもしれません。

そして、標準を超過した実際使用量を証明する資料を準備しておく必要があります。いわば、調査に対する武器ですね。

試作品の詳細資料、販売促進のために使ったという資料、社内利用のために使ったという資料、、。

標準とずれる理由となるものは、すべて理由を文書で説明する必要があると思って頂いて大丈夫です。

在庫管理は、とても重要です。上記で述べた分については、当然ですが、他の効果もあります。

例えば、盗難という不正防止にも役立ちます。日頃管理していれば、盗難に気が付くことだって可能です。また、製造改善中であれば、歩留まり率を管理しなければいけません。この場合にも在庫管理は非常に重要です。

在庫差異については、本当に悩むことになる可能性が高いです。その本質を理解し、対策することがとても重要になります。

これをすることによって、あなたの交渉のストレスや無駄な時間の浪費が回避できます。

在庫差異についての対策は適時に! ぜひ、実践してみてくださいね。

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