「人生100年時代」
と最近言われています。なので、人間が働く期間というのは、これまでより長くなってくるかもしれません。ということは、退職金ってずっと先の話かなと感じる人も少なくないはずです。
しかし、払う側はどうでしょう?現地社長として、気になりますよね。ベトナムでは、途中で退職もありますから。一方で、ベトナムで働いている日本人の方も気になるかもと思います。駐在員様の場合は日本の本社で退職給付の対象となっていることが多いため影響ないですが、現地採用の方は気になると思います。
やっぱり、お金は大事です。
払う人も、受け取る側にとっても。
こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。本日は、ベトナムの退職給付についてお話したいと思います。
- ベトナムでの退職金制度の概要を知りたい。
- 誰に、ベトナム人?日本人?退職金を支払うのか?を知りたい。
- いくら支払うべきかだいたい理解したい。
この記事のもくじ
ベトナムで退職金をもらえる条件とは?
まずは、ここをおさえて行きましょう。ベトナムには、労働法(No.: 10/2012/QH13)という法律の48条により定められています。2019年の新労働法も同様の内容の規定です。
結論から申し上げると、退職金制度はあります。正確には、“解雇手当”という風に言うみたいですね。(ちょっと怖い…。)
退職金の条件については、以下のポイントがあります。
①失業保険に加入しているか?どうか?
②最低限1年以上勤務した人
③労働法36条に基づき労働契約が解除された場合
第 48 条 解雇手当
1. 労働契約が本法第 36 条第 1、2、3、5、6、7、9 および 10 項の規定に基づき解除された 場合、雇用者は勤続 12 カ月以上の被雇用者に対し、勤続 1 年に付き半月分の賃金に 相当する解雇手当を支払う責任を負う。
2. 解雇手当算出の基礎となる労働期間は、被雇用者が雇用者のために実際働いた期間である。被雇用者が社会保険法の規定に基づき、失業保険に加入していた期間と雇用者から解雇手当を受け取っていた期間を除くものとする。
3. 解雇手当算出の基礎となる賃金は、被雇用者が解雇される直前の連続 6 カ月の労働契約における平均賃金である。
①失業保険に加入しているか?
従業員の方が、失業保険に加入していれば、この退職金を支払う義務はありません。したがって、ベトナム人のスタッフについては、気にする論点ではないもしれません。なぜならば、多くの日系企業は、社会保険に加入しているからです。コンプライアンスは、大事ですよね。
一方で、現地採用の日本人の方はどうでしょうか?現状では、外国人の失業保険の加入は義務ではありません。
そのため、現地採用の方はこの条件を満たしていると言えます。
②最低限1年以上勤務した人
退職金の対象となるためには、その会社に最低限1年間は勤務する必要があります。すぐに辞めた人に払いたくないですもんね。
③労働法36条に基づき労働契約が解除された場合
退職手当について記載された48条を見ると、
労働契約が本法第 36条第 1、2、3、5、6、7、9および 10項の規定に基き解除された場合
と記載されています。4、8が明確に除かれているのがポイントですね。
36条4項は、定年退職の事を言っています。社会保険の納付期間の条件と退職の年齢の条件を満たした場合は対象外です。年金が支給されるからですね。
36条8項は、懲戒処分による解雇です。悪い事した人に退職金を払う義務はないということです。
逆に言うと、これ以外の労働契約解除については、条件を満たすと言っています。つまり、退職金をもらえる権利があります。自己都合でも大丈夫なんですね。
ベトナム退職金、退職手当の計算方法
それでは、いったいいくら?退職金をもらえるのか。という点が気になると思います。
この点、48条には以下のように記載されています。
勤続 1 年に付き半月分の賃金に相当する解雇手当を支払う責任を負う。
解雇手当算出の基礎となる賃金は、被雇用者が解雇される直前の連続6カ月の労働契約における平均賃金である。
ちょっとわかりにくいので具体例で見ていきましょう。
- 氏名:Aさん
- 勤務歴:3年
- 給与:1年目2年目、2,000USD、3年目で3,000USD
この場合、Aさんはいったいいくら退職金をもらえるのでしょうか?条文に当てはめて見て行ってみましょう。
勤続1年に付き半月分⇒3年です。1年につき0.5ヶ月なので、1.5ヶ月分ですね。
次に、基礎となる金額です。解雇手当算出の基礎となる賃金は、解雇される直前の連続6カ月の労働契約における平均賃金となっているので、3,000USDとなります。
これを前提にすると
3,000USD×1.5=4,500USD
となります。つまりAさんは、4,500USDを退職金でもらえることになります。まあまあの金額ですね。
★本日のまとめ★
・ベトナム労働法48条に退職金制度(解雇手当)が定められている
・条件は、①失業保険の加入の有無②労働期間③36条に基づく労働契約解除
・定年退職及び懲戒免職はダメ、退職手当なし。
・日系企業のベトナム人スタッフは失業保険に加入しているケースが多いから、退職金は論点にならない可能性が高い。
・現地採用の日本人の方は、法律上は退職金がもらえる可能性が高い。
実務上はこんな感じだと思います。
ベトナム人 | 現地採用 | |
①失業保険 | × 入っているケースが多いので退職金の条件を満たさない。 | ○ 外国人なので失業保険に加入しない。 |
②最低限1年以上勤務した人 | 検討しない。 | 1年以上働くケースは多い。 |
③労働法36条に基づき労働契約が解除された場合 | 検討しない。 | 懲戒処分であることは稀。自己都合等が多い。 |
本日は、ベトナムの退職給付の仕組みついてお話させて頂きました。あなたが、ベトナムの法律を理解することによりビジネスがうまくいくことを祈っていますね!