こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。
- 海外子会社の社長であり、会計への知識が求められている
- 監査法人は、税務も見てくれると思っている
- 3つの会計の具体的な意味を知りたい
この記事のもくじ
会計は3つある
- あなたが、海外子会社、ベトナム子会社の社長に赴任して、「会計ってなに?財務?管理会計?原価計算?」よくわからない…。と悩むことはありませんか?
本日は、『会計の3つの領域とそのポイント』をお伝えします。
会計の知識は、社長にとって、とても重要です。会計的な思考を操れば、必ず進むべき道が見えるからです。
例えば、
- 経営の神様である稲盛さんは、「会計がわからんで経営ができるか!」
- 孫社長は、「テクノロジーと会計を知ってるやつしか出世できない」
- カルビーの社長の松本晃さんも「会計は最低限、財務諸表が読めるレベルは必要。私は農学部出身でしたから、新卒で伊藤忠商事に入社したとき、貸方、借方、バランスシートや、損益計算書などが全然わからず、徹底的に勉強しました。最初にある程度のところまでしっかり勉強したら、一生使えます。」
と言っています。
業績がいい会社や成功している会社は、必ず!“会計”を重視しています。
本日は、3つの“会計”について解説していきたいと思います。以下の3つの領域があります。
①財務会計
②税務会計
③管理会計
海外子会社の社長として赴任したのは、ものすごくチャンスです!なぜなら、重要なスキルである会計と触れ合う機会が増えるからです。しかも、生で!
動画も撮影しました。
3つの会計を、理解するポイントをお伝えします。
なんだか言葉は難しそうですが、ポイントを押さえることで、スーッと理解できるはずです。安心してくださいね。必ず、腑に落ちます。
それでは、それぞれ見て行きましょう!
①財務会計とは
会社は誰のもの?
会社を始めるためには、資金調達が必要です。そのためには出資者やお金を貸し付けてくれる人(銀行など)が必要です。
資金を出してくれた人に対して、きちんと、儲けや資産の状況を報告する必要がありますよね。
また、将来、投資したい人にとっても、あなたの会社への投資をしたいか?あるいは銀行などの金融機関が会社にお金を貸すかどうか?を決めるためには、会社の経営状態がどうなっているのかを正確に把握する必要があります。
このように、財務会計は、主に出資者(株主)や債権者(銀行)といった人達が、会社の経営状況を客観的に把握することを目的としています。
財務会計は、そうした社外の人たちに向けて、会社が置かれた状況を正確な情報として提供するための仕組みです。
社長のインセンティブはどうしてもこうなってしまう。
それでは、もうちょっと踏み込んで、あなたが社長である場合について想像してみましょう。
この場合、あなたは、どうしたい!財務諸表をこう見せたい!と思いますか?
例えば、日本の銀行の方から、「なんで3年たっても赤字なんですかね?利益はいつ出るんですか?本当に大丈夫なのですか?(心の声:貸付金を回収できんのかなー)」
などと言われたことはありませんか?とても、辛いですよね。悔しい思いをするケースもあるかもしれません。
また、出資者(投資家(本社の社長の場合もあり)、株主など)の場合も、考えてみましょう。当然、会社に儲けて!利益出せ!って思っています。配当なども期待していますからね。
社長であるあなたが、財務会計で報告するときには、
「利益を多く見せたい!儲かってるように見せたい!」(そして、評価されたい。昇進したい。)
というインセンティブがどうしても働いてしまうのです。
ちょっと前に話題になった、東芝やオリンパスの不正会計も、背景としては、このようなインセンティブが存在します。PL脳なんてもいわれます。(これについては、深い話なになるので、次回以降解説しますね。)
一般的に、社長は、「赤字は許されない…」というプレッシャーと戦っているのですね。
不正な会計を防止するためには“監査”が必要
そこで、会計にあたっては「会計基準」と呼ばれる定められたルールに則って会社の財務状況を表すことが求められます。
こうした共通のルール(ものさし)に基づいて財務三表が作られることによって、会社の状況をほかの会社と比較したり、同じ会社の過去の業績と比較したりすることが可能になります。
また決算にあたり、外資系企業であれば、監査法人が会社の作成した財務三表が適正であるかどうかを監査します。
第三者である監査法人がきちんとチェックすることによって、投資家や債権者が正確な情報が得られるような仕組みづくりがなされているのです。
②税務会計
企業は、国に対して納税の義務がある。
ベトナムも日本も、国の収入、つまり国の政策のためには。お金が必要となります。
例えば、ベトナムでのメトロなどの公共機関を作るのも当然お金がかかりますよね。
これらは、国民や企業からの、税収によって賄われます。
税務会計は、税務当局が、会社が稼ぎ出した利益(税務上の利益を課税所得)を把握し、適切に税金を徴収することを目的としています。
「きちんと儲かった分は、納税してよね。脱税は、ダメよ」
というのが税務の基本的な考え方です。
世の中の会社から公平に税金を徴収するために、会社が稼ぎ出したお金を正確に把握するための会計制度(決まり)が整えられているのです。これが、税務会計です。
財務会計と税務会計はこう違う!
このような背景を抑えると【税務会計】と【財務会計】違いを理解することができます。
【税務会計】と【財務会計】では、損金(費用)算入の①項目や②時期に違いがあります。
そのため、両者の数値には、基本的には、差異が発生します。
例えば、レッドインボイスをなくした!場合を考えてみましょう。あなたの理解が深くまるはずです。
財務会計では、会社の正しい財務状況を報告するので、レッドインボイスがなくなろうが、そんなの関係ありません。費用として計上します。
一方で、税務会計はどうでしょう?
レッドインボイスがない場合は、費用(損金)には認められません。なぜならば、税金をなるべく多く徴収したいからです。
会社に利益を出してもらい、税金を徴収したい!という要望があるのですね。
この場合、社長はどうしたい?どう、お化粧したい?
社長は、会社を存続させるため、資金繰りを気にする必要がありますよね。つまり、出ていくお金は減らし、お金を確保したいというインセンティブが当然働きます。
税務会計という視点で考えると、どうしても、「どうせなら、払う税金を減らしたい。」と考える傾向にあります。
もちろん、そうとは限りません。納税することが、その国の発展につながると思っている素晴らしい人格者の人もいます。
このように、財務会計とは逆に、税金を計算するための対象となる課税所得(税務の利益)をできるだけ少なく見せて、支払う税金の額を抑えたいという考えが経営者側には働きます。
例えば、売上を報告しない!という方法です。
これも、あなたの普段の生活をちょっと思い返してみましょう。より、鮮明にイメージできます。
ハノイのレストランで、「ホアドンだすなら10%追加だよ」って言われたことありませんか?
会社はホアドン(つまりレッドインボイス)を出すと基本的には売上として認識する必要があります。つまり、税金がかかるのです。
反対に、ホアドンを出してないで、お金を受け取っているということは、つまり売上を計上していないということです。売上を計上しなければ、納税する必要がありませんね。所得隠しなんて言い方もします。
むかし、『マルサの女』というドラマがありました。これは、まさに税務という観点から、脱税を暴くというストーリーです。(ラブホテルの売上隠しを暴くとか。)
ちなみに、10%というのはVAT(消費税)のことで、売上を認識するのであれば、間接税VATも徴収する義務があるのです。売上を報告しなくていいなら、VATも徴収する必要ありませんよね。このような理屈が、背景で成り立っているのです。
参考記事:ベトナム付加価値税(VAT) の仕組みを脳みそに焼き付ける!
適法な範囲内で支払う税金を抑えることを「節税」と呼びます。しかし、税法を逸脱して不当に納税額を低くしようとする行為は「脱税」にあたり、犯罪となります。
税務調査が必要になる。
公平な徴税を実現するために、税務会計にもまた財務会計と同様に一定のルールが存在します。税法の事ですね。
事後的に、税務調査が行われ正しい課税所得の把握が図られるのです。
③管理会計
あなたの目的に沿った“オーダーメード”の会計
投資家や債権者、税務当局といった社外の人への情報開示を目的とするのが、財務会計や税務会計でした。
しかし、これとは、根本が異なるのが管理会計です。
管理会計とは、経営者が自分会社の状況を正確に把握し、今後の経営方針に活用するための仕組みです。意思決定や業績管理を行うための管理手法です。
財務会計、税務会計との大きな違いは、義務か義務でないかです。この2つは法律上、決算を通じた取りまとめが求められます。法律なので罰則もあります。
しかし!
管理会計はあくまで経営状況を把握するために自主的に行う取り組みです。
社長のこうしたい!を叶える管理会計
社長、あくまでの「あなたの経営ため」の情報です。
つまり、報告が義務づけられているものでもないため、作成方法のルールなどもありません。
各事業の状況を正しく把握できるよう、あなた自身が創意工夫を重ねて独自の管理会計制度を整えていくのです。
カスタマイズは、自由です。もっと言うと、なんでもOKです。例えば、売上は受注ベースで計算しても問題ありません。
「会計」というと、拒否反応を起こす人が多いのでないかと思います。
しかし、管理会計は、経営者や営業担当、各部門のマネジャーが活用すべき経営のノウハウなのです。
管理会計の事例として、たとえば電子機器や情報機器、通信機器などを扱う京セラでは、「アメーバ経営」と呼ばれる管理会計の仕組みが取り入れられています。
「アメーバ経営」では、組織を「アメーバ」と呼ぶ小集団に細分化し、アメーバごとに売上やコストといった月次のPLを作成します。
各アメーバが独自の計画を立て、少しでも月次損益計算書の利益を最大化しようとすることによって、全体の売上を最大化し、コストを最小化しようとする考え方です。
アメーバのメンバー全員が知恵を絞って計画の達成を目指すことによって、社員全員が主体的に経営に参加する「全員参加経営」の実現を狙いとしています。
管理会計は未来を見ている。財務会計と税務会計との一番の違い
上記において、その違いを述べました。
一番重要な違いのポイントは、管理会計は、「未来」を見ているということです。
財務会計や税務会計は、過去についてそれぞれのルールに従って、正しく決算書を作成していたか?というのを主眼に置いています。
これとは逆に、管理会計は、未来を見ています。
例えば、
販売価格をいくらにすればいいか?どのように原価を管理すればいいか?当期は採用を何人すべきか?設備投資すべきか?
などです。
このように管理会計は、未来を見ながら、経営に役立つ情報することが使命なのですね!
ちなみに………。ベトナムのローカル会社は……。
3つの会計ですが、基本的にはそれぞれ整合します。例えば、税務会計は、適切な財務会計を前提とします。財務会計の利益をスタートとして、それぞれ調整して、最終的な税務上の利益(課税所得)を計算するのです。
管理会計についても、最終の利益は、財務会計と一致させるケースが多いです。
余談になりますが、ベトナムの経理部門の人数は、通常と比較して多いことがあるそうです。時には、10人超ということもあるそうです。普通なら3人くらいの規模の会社です。
その理由は、不正に会計帳簿をそれぞれ独立させて作成しているからです。会計帳簿をそれぞれの目的に持っていることがあるのです。
投資家用……銀行用……税務用……社長用……などの4パターン程度でしょうか。それぞれ都合のいいように作成しているケースが見受けられます。
それぞれ独立して作成しているため、どうしてもマンパワーが必要になってしまうそうです。もちろん全ての会社がそのようなことをしているわけではありません。
★このレポートまとめ★
3つの会計を、理解することによって、あなたの進むべき道が見えてくるはずです。
特に、経営という意味では、管理会計を強く意識しなくてはいけません。
是非、この機会に会計的思考を深めてください!
会計の種類 | 誰のため? | 目的 | 法律で強制か? | 時期 |
財務会計 |
| 会社がきちんと経営しているか? 儲けている?資産はちゃんとある? | 強制 | 過去 |
税務会計 |
| 税金がほしい | 強制 | 過去 |
管理会計 |
| 経営管理に必要な情報の提供 | 任意(しなくてもいい。) | ★未来 |