こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。
- 海外に子会社があり、内部統制について不安に感じてる
- 日本本社から、海外子会社の内部統制(J-soxの対象)を評価しなければいけない
- 全社統制を評価しなければいけないが優先順位をつけたい
この記事のもくじ
全社的な内部統制とは?ELC?CLC?
まずな、いわゆる全社統制と呼ばれる統制の42項目とはいったいなんでしょうか?
全社的な内部統制とは、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制としています。これは、企業(企業集団)全体を対象として、企業(企業集団)全体に広く影響を及ぼすような内部統制を意味します。
いや、よくわかんない!
ですよね。もう少しわかりやすく。
全社統制とは、企業集団および財務報告全体に重要な影響を及ぼす統制になります。
例えば、行動規範、業務分掌、内部通報制度、教育研修制度の整備、IT方針等です。
企業全体におけるルールや仕組み(規程類・体制等)が全社統制です。
具体例があるから、少しわかりやすくなりました。
めちゃ、砕いて言うと、”しっかり、している会社?”というイメージです。
しっかりしてる会社は、不正などの不祥事が起きにくいですよね。
これ語弊があったら申し訳ないのですが、私は、監査法人時代以下のようなメタファーを使っていました。誤解あるといけないので、言っておきますが、私は、ホリエモンさんをめちゃくちゃ尊敬してますし、書籍、動画もかなりみて勉強しています。あくまで、当時のメタファーとしては、有効だったという点をご了承ください。
ライブドア⇒全社統制のレベルが高くない⇒不正とか誤りとかのリスク低くなさそう
楽天⇒全社統制のレベルが高い⇒不正とか誤りとかのリスク低そう
高級マンション⇒全社統制のレベルが高い(セキュリティ高い)⇒部屋自体に鍵をかけなくても大丈夫
アパート⇒全社統制のレベルが低い(セキュリティ弱い)⇒部屋に鍵をかけないと危険
こんな感じで、なんとなくイメージできればいいと思います。
ちなみに海外では、ELC(Entity Level Control), CLC(Company Level Contorol)なんて言ったりします。
6つの構成要素と42項目とは?
詳細はググるとわかるのですが、まとめると以下の通りになります。
①統制環境⇒1~13、13個
- 経営理念、行動規範
- 取締役会及び監査役又は監査委員会における責任の明確化
- 人事評価制度の整備など
②リスクの評価と対応⇒14~17、4個
『リスクの評価と対応』とは、組織目標の達成を阻害する要因をリスクとして識別、分析及び評価し、当該リスクへの適切な対応を行う一連のプロセスの事です。
例えば、現金や原材料が盗難されるリスクです。また、新規事業の立ち上げ等は、影響が大きいです。資金繰りやビジネスが立ち上がらなうなど。適切なリスク分析・対応が必要となります。
- リスク評価できる体制を作る
- 不正を防止・発見できるような仕組みの構築
- 認識したリスクへの対応
③統制活動⇒18~24、7個
『統制活動』とは、経営者の指示が適切に実行されることを確保するために定める方針及び手続をいいます。
統制活動には、権限及び職責の付与、職務の分掌等が含まれます。
- 各業務における責任と義務の明確化
- 職務分掌規定や職務権限規定等の整備
- 業務マニュアルの整備
不正又は誤謬等の行為が発生するリスクを減らすために、各担当者の権限及び職責を明確にし、適切に業務を遂行していく体制を整備することが求められます。
④情報と伝達⇒25~30、6個
『情報と伝達』とは、必要な情報が把握され、企業内外及び関係者相互に正しく伝えられることをいいます。情報と伝達として、以下のような事項が該当します。
- 財務報告の作成に関する経営者の方針・指示
- 内部通報制度の整備及び通報者の保護体制
- 企業外部から内部統制に関する情報を収集する仕組み
⑤モニタリング⇒31~37、7個
『モニタリング』とは、内部統制が有効に機能していることを継続的に評価するプロセスを指します。
モニタリングには、通常業務の中行われる日常的モニタリングと第三者が実施する独立的評価があります。
- 日常的なモニタリング体制の整備(業務チェックリスト等)
- 内部監査
⑥ITへの対応⇒38~42、5個
『ITへの対応』とは、企業グループ全体のITに対する管理方針をいいます。
財務報告を行う上で、IT(会計ソフトウェア)の活用は不可欠となっているためです。適切なITの管理が必要です。
- ITに関する管理方針、ルール
- ITに関する組織体制の整備・運用
海外、ベトナムで重要視すべき全社統制とは?
この全社統制を、42個を、海外・ベトナムでまじめに検討する……。
めちゃくちゃしんどいです。相当疲弊します。
ベトナムなどの東南アジアやインドで駐在していた人ならわかりますよね。
ルールなんてないですし、守らないことが結構多いです。道路で信号は守らないことがほとんどです。
しかしながら、全社統制ってとても大切です。なので無視はできません。
従って、絞る!という事が大切です。
そこで、まず危険なところ、リスクを整理します。
海外子会社のリスクってなんでしょうか?
- 不正(盗難、キックバックによるお金の流出)
- 属人化によるリスク(退職などで業務のムダが生じる)
- 生産性が著しく低い。何をしているかわからない。
この3つに絞ることができると思います。
このリスクを意識する必要があります。
以下の6つのポイントは、私の実際のインドでの不正などの経験を踏まえた私の意見です。
- 行動規範はありますか?会社理念はありますか?
- 内部通報制度はありますか?
- 業務分掌規程(職務分掌規程)は作成しているか?各部門の業務は明確ですか?あなたの仕事は明確ですか?
- 業務マニュアルを作成していますか?
- ローテーションはしていますか?
- 予算作成していますか?財務分析(予実など)していますか?
それぞれ解説していきます。
1、行動規範はありますか?会社理念はありますか?
クレドなんてもいいますよね。
例えばリッツカールトンやジョンソンエンドジョンソンのクレドが有名です。
ビジョンって言うとかっこいい感じがしますが、要するに、会社の基本的な考え、何に価値を感じているか?を共有することは、海外では特に重要になります。日本人同士のように、阿吽の呼吸とはいかないからです。
この社長、この会社は、何を考えているのかな?というのを明確にする必要があるからです。
会社のフェーズによっては、「いらない。」なんて意見もありますが、やはり大事です。
私も、会社設立2年目くらいで、「すげのさんの考え、価値感をきちんと伝えるべきだ。」ってあるときスタッフに言われて、は!っとしました。
これを文書化することにより、より信頼関係が生まれ、仕事がしやすくなるといったメリットもあります。
2、内部通報制度はありますか?
内部通報制度とは、要するに、従業員が、”チクり”ができる仕組みのことです。
「あの人がキックバックしてますよ。」
「材料を盗難していますよ。」
という意見が会社経営陣に入ってくる仕組みです。この際匿名性が大事なので、留意してくださいね。
不正が発覚する要因として、この内部通報制度は大きいです。これによって、不正が発覚するケースがめちゃ多いです。
ただ、デメリットもあります。
①嘘の情報がきて混乱する。(匿名性なので信頼性がなく嫌がらせの場合も多い)
②従業員が疑われているという感覚を持ち、会社の雰囲気が悪くなる。
などです。
これについては、①の場合は、通報の際は、必ずエビデンス(メールや写真)を添付するように要求する。
②の場合は、社内研修をする。などで軽減することが可能です。
3、業務分掌規程(職務分掌規程)は作成しているか?各部門の業務は明確ですか?あなたの仕事は明確ですか?
これは、要するに、従業員の仕事を明確にする規定です。
「あなたへの会社からの期待は、この業務です。」
と文書化して明確にすることです。
これも海外であれば、より明確にする必要があります。なぜならば、繰り返しになりますが、伝わる、伝えるという事が、日本人同士より、困難だからです。
これをする事によって、スタッフ、従業員も安心して仕事ができます。
また、経営者も評価しやすくなりますよね。
4、業務マニュアルを作成していますか?
仕事の大半は、繰り返し行われる業務です。それにもかかわらず、”職人的”に仕事するのが、海外、ベトナムでもよくあるケースです。
これにより、以下の問題が生じます。海外あるある。
- 仕事が見えない、指示できない、イライラ
- 退職の際に炎上、時間を失う
- 給与交渉で弱い立場(あなた私がいないと困るでしょ。)
したがって、なるべく業務マニュアルは作成すべきです。標準化すべきです。
そうしないと、苦労します。断言します。
できない?
いやできますよ。
なぜなら、獺祭というあの有名なお酒を製造するときもマニュアル化しているからです。できないわけないですよね。
経験と勘でしかできない、というのは言い逃れ。酒造りの見える化、データ化を進めたことで、杜氏時代は最大で2億円くらいだった売り上げが、仕組みにしたことで108億円にまで成長した。
5、ローテーションはしていますか?
(ジョブ)ローテーションとは、以下を言います。
ジョブローテーションとは、計画的に、従業員の職場や職務を変更することをいいます。さまざまな場所で経験を積んでもらうことで、従業員のスキルアップや知識の充実、さらにはお互いの仕事をカバーできる体制や組織風土をつくることを狙いとしているものです。
これも実行するべきです。
以下の2つの効果があるからです。
- 属人化を排除(会社側のメリット)
- 人材育成(スタッフ側のメリット)
WINWIN
ローテーションすることによって、4の業務マニュアル化が進みます。引き継ぐ際に口頭での引継ぎを許してはいけません。口頭での記憶は消えて、結局意味がなくなるからです。
また、人材育成にも役立ちます。いろいろなスキルが身につくからです。
6、予算作成していますか?財務分析(予実など)していますか?
財務分析も経理担当者に是非実施させてください。
以下の2つの効果があるからです。
- 不正が適時に発見される
- 経理人の意識を変える必要がある
不正が発見される手法で、実は分析もかなり効果的です。私の感覚だと内部通報よりも効果的な場合もあります。
また、海外、ベトナムの経理担当者は、資料を作成する。ことが仕事だと思っている人がたくさんいます。それで満足しているのがまずいです。財務分析こそ、経理の仕事ですので、これを徹底させてください。
比較!比較!比較! 海外子会社のシンプルだけど効果のある財務分析の方法
いかがでしたでしょうか?
ベトナムでもJ- SOXのような制度が幅広く適用される可能性があります。現に今は一部の会社では、内部統制について責任を負う形になっています。
今から意識しておくと、この点についてもいいと思いますよ。是非、検討してみてください!