こんにちは、マナボックスの菅野(すげの)です。
新型コロナウイルスが、話題になっています。コロナショックが不安です。
ベトナムでは、感染を拡大させないために隔離対策に力を入れています。
以下は、3月18日の日経新聞です。
ベトナム、ビザ発給を全面停止 日本からの入国困難
ビザの免除措置がある日本人などが入国する場合には「陽性でない証明書を持ち、ベトナム政府の承認が必要」と説明している。在ベトナム日本大使館は「日本人のベトナムへの入国が極めて困難になる」と説明している。
そして、4月1日には、以下の措置がされました。
全国民が15日間の自宅待機、4月1日から フック首相が発令
政府は31日、新型コロナウイルス感染防止の緊急措置として、国民に15日間の外出禁止を求める指令書16/CT-TTg号を発令した。4月1日午前零時以降、全国民は自宅待機となり、原則的に市や省の間の移動も制限された。
外出禁止は、4月1日から15日間の予定。緊急時や、食品や薬など必要不可欠な生活用品の購入、食品や生活必需品などの生産工場勤務などをのぞき、国民に自宅での待機を求めるもの。運営継続が認められる職場でも、従業員の距離に基準を設けるほか、マクス着用の義務付け、消毒の徹底などを求める。
徹底的な対策と言えます。実質的に鎖国だと言えますよね。
もし、あなたの社員が、新型コロナウイルスの疑いがあったら?感染していたら?感染者と接触していたら?
本日は、新型コロナウイルスによって、休日や休業が必要になった場合、労働法の観点からどのような対応(有休消化、休日)について整理したいと思います。
労務の専門家のリーさんにヒアリングしました。
- ベトナムに法人があって、従業員がコロナの影響で休日が必要かもしれない。でも、ベトナム労働法との関係が不安。整理したい。
- 役所から、スタッフが自宅隔離の命令が出た。その場合の休業についての考え方について知りたい。
この記事のもくじ
新型コロナウイルスによってどんなパターンの影響があるのか?
とくに休業のところについて教えてください。つまり、会社が従業員に対して休みをお願いしないといけない場合です。
どうぞよろしくお願いいたします。
例えば、最近、私は、「F2の人が、職場にいる。その場合に休暇した場合にはどうしたらいいの?」とか質問を受けます。
新型コロナウイルスの影響はとて大きいですね。
従業員に休暇をとってもらう事も必要になるかと思います。
まずは、どんなケースが考えられる?か整理します。
A:新型コロナウイルス感染という視点
A-1:新型コロナウイルス感染の疑いがあるとき(感染者との明確な接触のは不明)、感染の有無は不明で、休業させる時
A-2_新型コロナウイルス感染者が実際に出た場合
A-3_役所等から自宅隔離などの要請が出た場合(外部の判断)
B:リモートワークが出来るか?という視点
上記とは別に、この視点も大事です。製造業のワーカーさんなどは、リモートワークができません。
なお、新型コロナウイルスによって業績悪化して解雇や契約解除が必要になった場合は以下を参照
参考記事:【ベトナム労務講座】新型コロナウイルスによって業績が悪化した場合、労働契約解除や解雇はできるのか?
よく聞くF1とかF2の意味はなんでしょうか?
-F0:COVID-19に陽性の人を意味します。
-F1:感染またはF0の人と濃厚接触がが疑われる人。
-F2:F1と接触がある人
-F3:F2 と接触がある人
-F4 / 5:F4はF3 と接触がある人 。 F5は、F4と接触がある人。
①新型コロナウイルスの感染の疑いがある時
なるほど、そのようにパターン化して整理できますね。
まずは、「新型コロナウイルス」の疑いがある時ですね。例えば、熱っぽいとか、咳がでるとかだと思います。
また、感染をリスクと感じて、オフィスに出勤させたくない場合もあるかと思います。
まずは、リモートワークが出来るか?働くことができるか?という視点ですね。
もし、スタッフの方が、家で働くことに合意していれば、在宅勤務(テレワーク)が可能です。
次に製造業のような、リモートワークが適さない場合ですね。この場合は、2つあると思います。
まず、①有休休暇を取得してもらう。という事です。ただ、従業員が合意(有休申請)しない場合もあると思います。
その場合は、②ベトナム労働法98条1項が適用されると考えられ、賃金の全額が支払われることになります。つまり、「使用者の責に帰すべき事由による」に該当すると考えられます。
3項に「危険な疫病」該当する場合、会社は全額支給の必要はありません。しかし、疑いの場合は「危険な疫病」には該当しません。
リモートが出来るか? | 対応 |
出来る(管理系) | スタッフが合意すれば、在宅勤務も可能。(IT系企業やコンサルは、可能なところが多い) 合意なければ、下記を検討することになる。 |
出来ない(製造関係) | 有休休暇消化 |
休業 98条1項 雇用者は、全額支払い |
ありがとうございます。日本の場合と比較してみますね。
厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)に記載されています。
まとめると以下のようになります。
<感染が疑われる方を休業させる場合> |
|
有休休暇 | 年次有給休暇は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものです。 使用者が一方的に取得させることはできません。 事業場で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、事業場の就業規則などの規定に照らし適切に取り扱います。 |
在宅が可能で、本人が了承した場合 | 在宅勤務可能、テレワーク |
ベトナムとの違いは、「使用者の責に帰すべき事由」の時の賃金ですね。日本が60%なのに対して、ベトナムは100%の給与が支払いされます。ベトナム労働法98条1項
②新型コロナウイルスの感染者が出た場合
では、会社に、もし感染者が出てしまった場合はどうでしょうか?
F0の人が出てしまった場合です。
労働法98条の3項に該当します。「危険な疫病」です。
つまり、休業時の賃金は労働者及び雇用主の合意に基づくが、政府が定める地域の最低賃金を下回ってはならない。という規定に従います。
ベトナム首相決定の173/QD-TTg号によりAグループの感染症に分類されているためです。
また、2020 年 1 月 29 日付決定 Decision 219 / QD-BYT 号においてもベトナム保健省は、新型コロナウイルス感染症をグループ A の感染症リストに追加しました。これも、「危険な疫病」だと言える根拠です。
したがって、その場合は、政府が定める地域の最低賃金を下回ってはならない金額を支払います。そして、両者の合意が必要です。労働協約で通常の賃金の80%などと定められている場合はその金額を支払います。
もし、感染者(F0)が出た場合、その会社の従業員たちはF1(濃厚接触があった場合)になります。そして会社や工場が閉鎖する場合があります。この場合も、98条の3項が適用されると考えられます。
ベトナム労働法98条3項
3. 雇用者、被雇用者の過失でない停電、断水、あるいは天災、火災、
危険な疫病、紛争、国家の管轄機関の要求に基づく稼動場所の移転、経済的な理由など他の客観的な原因による場合、休業時の賃金は両当事者の合意に基づくが、政府が定める地域の最低賃金を下回ってはならない
理解いたしました。
日本の場合はどうでしょう?これも厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)に記載されていましたので引用します。
休業手当はなし。保険を適用して傷病手当を受け取る。です。
新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
なお、被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近 12 カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。引用元:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)
(令和2年2月 21 日時点版)
この点は違いがありそうですね。
③新型コロナウイルスの疑いにより役所等から自宅隔離が要請された場合
あとベトナムでは、自宅隔離が、政府等から要請される場合がありますよね。
つい最近も、私の友人が、公安かな?から自宅隔離を要請されてしまいました。
ここでのポイントは、
◯政府から指摘されて、自宅隔離、個別場所の隔離か?
それとも
◯自分、自社の判断で自宅隔離か?
前者にあたる場合は、労働法98条の3項に該当すると考えられます。つまり、「使用者の責に帰すべき事由」に当たらないと考えます。
なぜならば、98条3項の「他の客観的な原因」に該当すると考えられるからです。
その場合であっても、リモートワークが可能であり、従業員が労働を提供できる場合には通常通りの賃金になります。
ありがとうございます。理解致しました。また、なにかオフィシャルレターなどは出ていますか?
出ています。
2020年3月25日に労働傷病兵社会福祉省が新型コロナウィルス感染症(以下コロナ感染症)に関する休業時の賃金の支払い及び関連手続きに関する第1064/LDTBXH-QHLDTL号を発行しました。
これによると以下の場合は、98条3項に該当します。
- 国家管轄機関の要請により、コロナ感染症で会社に戻れない外国人労働者
- 国家管轄機関の要請で隔離され、勤務できない労働者
- 雇用主又は他の労働者は隔離中または仕事に戻れないために企業全体、又は一部が稼働できないため、勤務できない労働者
新型コロナウイルスによる休業のまとめ
本日は、解説ありがとうございました。日本とベトナムについておおまかに比較したいと思います。
ケース | ベトナム | 日本 | |
①新型コロナウイルスの疑いがある場合 | リモートワークができる。 | 可能(合意あれば) | 可能(合意あれば) |
リモートワークが出来ない。出勤停止したい。 | 有休休暇消化 | 有休休暇消化 | |
休業 98条1項 雇用者は、全額支払い | 労働基準法第 26 条 休業手当(平均賃金の 100 分の 60 を超えて) | ||
②新型コロナウイルスに感染した場合 | 98条3項 労働者と合意した水準の賃金 ただし、リモートワークが可能な場合は通常 | 労働基準法第 26 条 休業手当を支払う必要なし 要件を満たせば、各保険者から傷病 | |
③役所等より、自宅隔離が命令 | 上記と同様 | 事例なし②にあたると考えられる。 |
ベトナムと日本の取り扱いに違いがある部分もありますね。
ベトナム労働法でお困りがあれば問い合わせください。
ベトナムの法律は、曖昧なところがあります。法律がこう記載されていても、実務はこうなんです。みたいなところもあります。
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