こんにちは、マナボックスの菅野です。
本日は、ベトナム企業法の会社機関についての3つのパターンについて解説していきます。ベトナムに進出する際、だれを社長にするか?監査役にするのか?会長にするのか?社員総会って何?
このような疑問が生まれることがあります。
ベトナムでは、以下の複数の進出形態が、考えられます。ただ、日系企業のような外資系に着目すると、「有限会社」が一般的です。理由は、株式会社にするメリットがないからです。持ち分の譲渡も頻繁に起きると想定していませんし。
- 有限会社←日系企業の進出形態はほぼこれ
- 株式会社
- 合同会社
- 個人事業主
- 外国人投資家による支店設立
- 駐在事務所
- 国営企業
- プロジェクト契約
ベトナムの法律の専門家であり、リアル実務にも詳しいリー氏の意見も伺ってみました。
14年超、日系企業を300社以上支援してきた法律にも実務にも詳しい専門家です。
この記事のもくじ
有限会社の機関の3つのパターン
まず、そもそも「機関」とはなんでしょう?。企業法の専門用語ですし、ここは詳しく解説します。
「会社の機関」とは、会社の意思決定や運営・管理を行う組織(株主総会など)や会社業務を行う立場にある人のことを言います。
サッカーチームで言うと、監督やコーチなどのことです。どんな戦略で勝利をつかむか?と言うのは、監督が決めますよね。
会社も同じです。意思決定する組織や人や業務を進める(経営)人が必要となります。ベトナムの企業法における「機関」のパターンは以下の3つに分類されます。こちら株式会社ではないので「取締役」という概念がありません。この点は違和感を感じるかもしれません。というのは日本の場合、ほぼ株式会社であり取締役というのが一般的な役職となっているからです。
まず前提として、ベトナム企業法では、有限会社は、2パターンがあります。それは、
- 一人有限会社
- 二人以上有限会社
です。両者の違いは、出資者が、1名か2名以上(2名から50名)かの違いです。そして、機関のパターンとしては以下の3つがあります。
「社員」という言葉は、会社員というイメージがあるかもしれません。しかし、企業法では、「出資者」のことを「社員」と言います。株主と同様です。まとめると以下の通りです。
立場 | 1人有限会社 | 2人以上有限会社 | ||
会長のみ(ワンマン) | 合議制(チーム) | 合議制 | ||
出資者として | 最高意思決定機関 | – | 社員総会 (会長と構成員) | 社員総会(社員全員)(委任代表者の論点あり) |
会長 | 会長 | 会長 | ||
経営者として | 日々の経営活動 | 社長 | 社長 | 社長 |
会長と社長を兼ねることができる? | 所有と経営の分離 | OK | OK | OK |
対外的な活動(法定代表者) |
| |||
監査役等 | 任意 |
以下で、ぞれぞれ詳しく解説していきます。
ベトナム有限会社の「機関」を理解するコツ
それぞれ3つのパターンを詳細に理解する前にコツを、理解するためのコツをお伝えしますね。以下の3つの視点を強く意識することです。
- 所有者(出資者)としての意思決定する組織
- 経営を進める人(対内的:社内管理の管理など)
- 法定代表者(対外的:裁判行為など)
このように2軸マップで理解するとスッと頭入ってくると思います。
ベトナム進出支援
ベトナム歴11年の日本人専門家(公認会計士)及び日系企業を述べ300社以上支援してきたベトナム人専門家が、あなたのベトナム進出支援をサポートします。
① 1人有限会社_会長パターン
以下の図のようになります。
所有者(出資者)としての意思決定する組織
社員(出資者)が、会長を任命する
例えば、出資者である本社の社長が「会長」になるケースが考えられます。
ただ、実務上は、社長が会長を兼ねることも多いです。
経営を進める人
会長が、経営者としての社長又は総社長を任命する。
>>【ベトナム会社法を学ぼう!】社長と総社長の違いと「法定代表者」との関係
ベトナムに駐在して、実際に経営をする人を任命します。
いわゆる社長ですね。
こちら先にも述べましたが、会長が社長を兼ねることは可能です。実務的にもこのパターンは多いです。
法定代表者
社員総会の会長,会社の会長,社長又は総社長の職名を持つ「法定代表者」を少なくとも一人有さなければならない。
会社の定款に規定がない場 合,社員総会の会長又は会社の会長が会社の法定代表者となる。
一人又は複数の法定代表者を有することができる
社長を「法定代表者」とすることがほとんどでしょう。
会長=社長=法定代法者となることもあります。また、日本本社の社長が、ベトナム子会社の社長をする場合などには、「法定代表者」を複数人とすることもあります。
監査役
任意で設置できる。定款に別段の定め
以前は、強制でしたが、現状では、任意となりました。強制されていません。
>>【ベトナム法務】新企業法での監査役の変更点を確認すべき理由【59/2020/QH14】
②1人有限会社_社員総会パターン
以下の図のようになります。
所有者(出資者)としての意思決定する組織
社員総会の構成員は,会社所有者により任命される。
社員総会は,3 人から 7 人までの構成員からなる。
社員総会は、会社の最高意思決定機関です。会長だけでなく、合議制にしたい場合などには、複数人の構成員を任命します。
株主会社の株主総会と社員総会は、同様の位置付けです。出資者としての立場の意思決定機関です。
経営を進める人
社員総会が、経営者としての社長又は総社長を任命する。
会長の場合が、ワンマン経営で、社員総会(合議制)が寄り添うイメージです。
>>【ベトナム会社法を学ぼう!】社長と総社長の違いと「法定代表者」との関係
合議制によって、社員総会が、社長を任命します。
法定代表者
①会長パターンと同様
監査役
①会長パターンと同様
③2人以上有限会社_社員総会パターン
以下の図のようになります。
所有者(出資者)としての意思決定する組織
社員総会は,会社の最高決定機関であり,個人,組織である会社の社員の全員からなる。
2人以上有限会社は、2名〜50名の社員(出資者)が出資者となることが可能です。出資しているメンバーの会のことです。
この出資者の中から、会長を選任することになります。
経営を進める人
社員総会が、経営者としての社長又は総社長を任命する。(②と同じ)
②と同様です。
法定代表者
①会長パターンと②社員総監パターンと同様
監査役
①会長パターンと②社員総監パターンと同様
本日のまとめ
本日は、ベトナム企業法の有限会社の機関についてまとめました。
- 出資者の立場として、会長・社員総会
- 経営者としては、社長(又は総社長)
- 法定代表者も定める必要あり、複数設定することも可能
- 監査役は任意
ポイントの一つとして、「会長」があります。この会長が社長を兼ねれるということろが少し日本人(株式会社を前提)には違和感があるかもしれません。
また、法定代表者と社長(又は総社長)が条文上は分類されている点も、わかりにくいところだと思います。なぜならば、日本だと代表取締役が、体内的にも対外的にも代表するからです。
お役に立てると幸いです。