みなさん、こんにちはマナボックスの菅野です。
今日は、『旧労働法と新労働法の就業規則の違いのポイント』について解説していきたいと思います。
ベトナムの労働法改正によって就業規則をアップデートする必要があると思いますのでお役にたてるかと思います。
ベトナムで2008年より日系企業を中心に延べ300社以上支援しているベトナムの法律の専門家のリーさん(日本語ネイティブ)にも聞きながら解説していきたいと思います。
変更点の概要について見ていきましょう。
この記事のもくじ
労働法変更による就業規則への影響を3つに整理する
影響について大きく分類すると以下のとおりです。大きくは3つのグループに整理されると思います。
1: 就業規則の概要(作成の義務と届け出について)
2: 就業規則の主な内容に関する新しい規則内容の追加
- (セクハラ)
- (労働規律を処理する権限のある人)
3: 2019年労働法・「政令No.145 / 2020 / ND-CP」と2012年労働法・「政令第05/2015 / ND-CP」の規定の詳細内容の変更
- (Ⅱ雇用者の資産、技術の秘密、事業の秘密および知的財産の保護)
- (Ⅲ物的責任)
なお、政令は「法律」(例:ベトナム労働法)をより詳細にガイダンスした内容となります。
就業規則の概要についての変更
比較すると以下のとおりです。
ただ就業規則は会社のルールですから旧法のもとであっても実質作成していた会社が多いはずです。
項目 | 旧:2012年労働法等 | 新:2019年労働法等 | 変更点と留意点 |
就業規則の概要 | 第119条:就業規則 10人以上の労働者を雇用している雇用者は、書面で就業規則を作成している必要がある | 第118条:就業規則 10人以上の労働者を雇用する場合、雇用者は書面で就業規則を発行する必要がある。 | 雇用者の就業規則を発行する義務的な責任を規定していなかった。 |
就業規則作成義務の有無 | 書面またはその他の形式で就業規則を発行するかどうかにかかわらず、10人未満の労働者を雇用する場合、雇用者は事業登録の場所で労働疾病兵社会問題省に就業規則を登録する必要がない。 | 政令第145/2020 / ND-CP(2019年労働法の指導)の第69条1項:雇用者10人以上の労働者を雇用する場合は書面で就業規則を発行する必要があり、10人未満の労働者を雇用する場合は書面で就業規則を発行する必要がないが、労働契約における労働規律及び物的責任の内容について合意すべきである。 | ・全ての雇用者は就業規則を発行しなければならない。 |
したがって、企業は現在の状況を確認し、上記のケースと比較して、必要な追加作業を実行する必要があります。
例えば、新しい就業規則の発行、他の形式から書面形式へ就業規則の変更、就業規則の登録、労働契約での労働規律及び法的責任に関する合意内容の補足を検討する必要があります。
就業規則の主な内容に関する新しい規則【内容の追加】
これには以下の3つあります。
- セクハラ
- 労働者が一時的に労働契約以外の職に異動する場合
- 労働規律を処理する権限のある人
項目 就業規則の主な内容に関する新しい規則 | 旧:2012年労働法等 | 新:2019年労働法等 | 変更点と留意点 |
| なし | 職場におけるセクハラ行為の防止、職場におけるセクハラ行為に処理するための手続き及び手順。 さらに、企業は労働疾病兵社会問題省、ベトナム労働総同盟、ベトナム商工会議所が発行した職場におけるセクハラに関する行動規範を参照することができる。 | 2012年労働法第8条2項は、職場におけるセクハラは禁止行為であると規定したが、これが就業規則の内容であるとは規定しなかった。 |
2. 労働者が一時的に労働契約以外の職に異動する場合 | 2012年労働法の第31条に規定され、政令第05/2015 / ND-CPの第8条に案内された。
これにより、労働者の権利が保証されない場合があった。 | 労働者が一時的に労働契約以外の職に異動する場合は、2019年労働法第118条2項(e)に基づく就業規則の必須内容である。 | 一時的に労働契約以外の職に異動することは、就業規則の必須内容であると決定される。 |
3. 労働規律を処理する権限のある人 | 就業規則の必須内容として指定されなかった。法律の規定に従って決定される。 具体的には、政令No. 05/2015 / ND-CPの第4条30条(政令第148/2018 / ND-CP第1条12条により改正): 労働規律を処理する権限は、雇用者側で労働契約を締結する人に帰属する。 | 2019年労働法第118条第2項(i)点、及び政令No.145/2020/ND-CP第69条第2項(i)点: 労働規律処分権限は、就業規則にある必要な内容として規定されます。 具体的に、就業規則では以下の内容はある必要: 労働規律処分権限を有する者は、労働法第18条第3項に従って雇用者側の労働契約締結権限を有する者(企業に対しては企業の法的代表者,あるいは法令の規定に従った受任者)又は就業規則に定められた者である。 | 企業は、就業規則で労働規律処分権限を有する者を明確に規定しなければならない。 企業の法的代表者や法令の規定に従った受任者に加えて 、企業は、労働規律処分権限を他の者に与えることができる。 |
【セクハラ】
企業は就業規則を見直し、法律に従って職場におけるセクハラ防止に関する内容を就業規則に追加する必要があります。。
セクシュアル・ハラスメントの予防と対策に関する雇用主の規定を、社内の「就業規則」または「就業規則とともに発行される付録」に記載する必要があります。
【労働者が一時的に労働契約以外の職に異動する場合】
就業規則に定める必要があります。
【労働規律を処理する権限のある人】
就業規則で労働規律処分権限を有する者をより明確に決める必要がありますね。
第118条 就業規則
1.使用者は就業規則を発行しなければならず,10人以上の労働者を使用する場合は,就業規則は書面でなければならない。
2.就業規則の内容は,労働に関する法令及び関連を有する法令の規定に反してはならない。就業規則の内容は,以下の主要な内容からなる。
e) 労働契約と異なる業務に一時的に労働者を異動させる場合
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【新労働法】政令No.145 / 2020 / ND-CPと【旧労働法】政令第05/2015 / ND-CPの規定の詳細内容の違い
続いて、詳細内容の違いです。以下の3つの項目で整理できます。
- 勤務時間及び休憩時間
- 雇用者の資産、技術の秘密、事業の秘密および知的財産の保護
- 物的責任
2019年労働法・政令No.145 / 2020 / ND-CPと2012年労働法・政令第05/2015 / ND-CPの規定の詳細内容の違い | 旧:2012年労働法等 | 新:2019年労働法等 | 変更点と留意点 |
1.勤務時間及び休憩時間 | 2012年労働法第108条第3項: 「本条第 1 項及び第 2 項で規定する休憩時間以外、雇用者は小休止時間を規定し、それを就業規則に記入する。」 それに基づく政令No.05/2015/ND-CP第27条第1項: 「勤務時間、休憩時間:勤務中の休憩時間以外の小休止時間を規定する。」 =>「小休止」という用語が使用される しかし、勤務時間と休憩時間に関する2012年労働法の他のガイダンス文書では、「小休止」がなく、「休憩」のみが規定される。政令No.45/2013/ND-CP第3条第2項: 「有給労働時間として認められる時間:…仕事の性質に従って休憩する時間。」 | 2019年労働法と政令No.145/2020/ND-CP:「勤務時間・休憩時間:勤務中の休憩時間以外の短時間の休憩を規定する。」 =>「休憩」という用語を使用する | 2019年労働法発行後の勤務時間・休憩時間関する各ガイダンス文書での使用される用語が統一するようになる。 |
2.雇用者の資産、技術の秘密、事業の秘密および知的財産の保護 | 政令No.05/2015/ND-CP第27条第4項: 被雇用者は、「引き渡される責任範囲における保護すべき資産・資料、技術の機密、事業の機密、知的財産のリスト」のみを就業規則に記載しなければならない。 | 政令No.145/2020/ND-CP第69条第2項(đ)点: 保護される対象のリストに加えて、就業規則では「財産・秘密の保護に適用される責任と措置、財産・秘密を侵害する行為」も規定されなければななない。 | 就業規則では、保護される対象のリストだけでなく、それらの対象を保護する手段も規定される。
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3.物的責任 | 政令No.05/2015/ND-CP第27条第4項: 「損害の程度、損害賠償責任」という内容のみが就業規則に記載されなければならない。 | 政令No.145/2020/ND-CP第69条第2項(h):
| 物的責任に関するもっと具体的な規定がある。 |
【勤務時間及び休憩時間】
用語の整理をする必要があります。
【雇用者の資産、技術の秘密等】
機密情報を「保護する手段」も規定します。
【物的責任】
より具体的に定めることが可能となりました。
今日のまとめ
今日は、ベトナム労働法改正(政令)による就業規則への影響を解説させて頂きました。会社経営を成功させるためにはルールがどうしても必要です。
この機会をきっかけに就業規則の見直しすることをお勧めします。
タイトル | 旧:2012年労働法等 | 新:2019年労働法等 | 変更点と留意点 | |
就業規則の概要(作成の義務) | 10人以上の場合作成・届出 | 作成(発行)義務あり 10人以上の場合は書面・届出 | すべての会社が就業規則作成する必要あり | |
就業規則の主な内容に関する新しい規則 内容の追加 | Ⅰセクハラ | なし | 職場におけるセクハラ行為の防止、職場におけるセクハラ行為に処理するための手続きを定める必要 | 職場におけるセクハラ防止に関する内容を就業規則に追加する必要。 |
Ⅱ労働者が一時的に労働契約以外の職に異動する場合 | 企業の規則で具体的に規定する必要があるが、明確でない。 | 労働者が一時的に労働契約以外の職に異動する場合は、2019年労働法第118条2項(e)点に基づく就業規則の必須内容 | 就業規則へ必須で記載。 | |
Ⅲ労働規律を処理する権限のある人 | 就業規則の必須内容として指定されていない | 就業規則にある必要な内容として規定 | 労働規律処分権限を有する者を明確に規定。
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2019年労働法・政令No.145 / 2020 / ND-CPと2012年労働法・政令第05/2015 / ND-CPの規定の詳細内容の違い | Ⅰ勤務時間及び休憩時間 | 「小休止」「休憩」という用語が曖昧 | 「休憩」「勤務中の休憩時間以外の短時間の休憩」という用語が明確 | 用語を統一する。 |
Ⅱ雇用者の資産、技術の秘密、事業の秘密および知的財産の保護 | 「引き渡される責任範囲における保護すべき資産・資料、技術の機密、事業の機密、知的財産のリスト」のみを就業規則 | 左記に加え「財産・秘密の保護に適用される責任と措置、財産・秘密を侵害する行為」も規定。 | 資産、事業の秘密、技術の秘密、知的財産に関する内容の保護可能性が高 | |
Ⅲ物的責任 | 「損害の程度、損害賠償責任」という内容のみが就業規則に記載 | 左記加え、具体的な内容が含まれている必要がある。 | より具体的な規定を定める |