こんにちは、マナボックスの菅野です。
本日は『個人所得税の確定申告書の構造の解説』というテーマでお伝えしていきます。
日本人駐在員の人は確定申告する必要がありますが、内容をわからずサイン、納税するのは怖いと思います。そこでこの記事ではその構造を理解できるような内容を解説していきたいと思います。
動画でも解説させて頂きました。
この記事のもくじ
個人の確定申告書の全体像(02/QTT-TNCN)
まずは全体像をイメージしましょう。そうすることによってこれからお伝えすることが理解しやすくなるはずです。クリックすると大きくなります。
ベトナム個人所得税申告書の種類は全体像は以下の通り。数多くある申告書のうち全体のどこの話をしているか?と言う点を理解するとわかりやすいです。
また、以下の記事も理解しておくといいです。
>>【図解!】ゼロから理解する 個人所得税の仕組み 日本とベトナムの比較表付き!
申告者 | 所得の種類 | 月次(四半期)申告 | 年次申告 |
会社が申告(ベトナム所得) | 給与所得 | 05/KK-TNCN | 05/QTT-TNCN 05/-1/BK-QTT-TNCN(源泉徴収) 05-2/BK-QTT-TNCN
|
給与所得以外 (投資所得など) | 06/TNCN | – | |
個人(例:日本での所得) | 給与所得 | 02/KK-TNCN(四半期) >>ベトナム個人所得税(PIT)の申告書02/KK-TNCNについて徹底解説!【日本側の給与】
| 02/QTT-TNCN, ⇑今日はここ 02-1/BK-QTT-TNCN (付属明細) |
事業所得 | 04/NNG-TNCN | – | |
不動産所得 | 03/BDS-TNCN | – | |
証券譲渡所得 | 04/CNV-TNCN | – | |
相続・贈与所得 | 04/TKQT-TNCN | – | |
その他所得 | 04/NNG-TNCN | – |
外国から給与がある場合(いわゆる駐在員)での確定申告の場合、ベトナムの給与と日本の給与を合算して申告することになります。
まずは基本情報が記載【1〜21】
1~21の番号で構成されます。
ここには納税者の個人の基本的な情報が記載されます。例えば、名前やPIT番号、住所などです。
3は、期限後の修正申告書の時にチェックマークが入ります。それ以外の通常の申告の場合には2にチェックが記載されます。
13からは、税務申告代行者が申告した場合の基本情報です。
番号 | 内容 | コメント |
1 | 課税期間 | 期間がわかります |
2 | 初回の申告 | 通常はここにチェック |
3 | 追加・訂正第…回 | 修正申告の場合 |
4 | 納税者の氏名 | あなたの名前 |
5 | 税コード | 個人に結びつく番号があります。 |
6 | 住所 | あなたの住所 |
7 | 区・県 | あなたの住所 |
8 | 省・市 | あなたの住所 |
9 | 電話番号 | あなた、もしくは経理担当者 |
10 | ファックス | 空欄のことが多い |
11 | メール | あなた、もしくは経理担当者 |
12 | 口座番号(もしあれば)…銀行名… | 口座番号 |
13 | 税務代行者(もしあれば) | 税務申告代行者が作成した場合 |
14 | 税コード | |
15 | 住所 | |
16 | 区・県 | |
17 | 省・市 | |
18 | 電話番号 | |
19 | ファックス | |
20 | メール | |
21 | 税務代理店契約: 第….日付…. |
まとめ:上部には基礎情報が記載。修正申告の場合には3にチェック
Ⅰ:個人所得税の金額を計算する【22〜35】
このパートでは、個人所得税の金額を計算することを目的としています。これは以下に細分化されるでしょう。
- 給与情報を集める 22〜26
- 控除の情報を整理する 27〜33
- 課税所得を計算する 34
- 個人所得税の金額 35
給与情報を集める【22〜26】
まずは給与情報を「あつめる」のステップです。ベトナム給与とベトナム以外で発生した給与(日本の口座に支払いされる給与)を記載します。
- ベトナムの給与
- 日本の給与
のそれぞれを計算した結果が記載されます。ベトナムの給与明細や日本の給与を明細を元データとして作成した計算シートから転機することになるでしょう。グロスアップの計算の場合はそのグロスアップの金額が集計されます。
この差異、外国税額控除を適用する場合、その対象の金額を記載します。
まとめ:ベトナムの給与と日本の給与が記載される。グロスアップの場合その金額が記載されます。
控除の情報を整理する【27〜33】
続いてはあつめた給与情報から「差し引く」ステップです。
27からは、”控除”の情報です。集めた給与金額から差し引きする金額です。発生頻度も記載してみました。
- a,基礎控除(◎)
- b,扶養控除(○)
- c,寄付金等
- d,社会保険料(◎)
- e,年金基金
aは、基礎控除です。
>>朗報!【ベトナム税務ニュース】個人所得税における基礎控除と扶養控除の引きあげが決定!No. 954/2020 / UBTVQH14が施行 あなたの手取りが増えるかも
dは、日本給与をもらっている場合は必ず該当あります。日本で社会保険に加入しいるからです。bも、お子様がいる場合には適用することが多いです。
>>【ベトナム個人所得税】あなたは、この控除を忘れていませんか?扶養控除で〇〇万円も節税効果!?
c、eは発生することはほとんどありません。実務上、該当しているケースを見たことがありません。
まとめ:27~からは給与所得から控除できる金額情報
課税所得を計算し個人所得税金額を計算する【34・35】
「差し引き」をすることによって、個人所得税の掛け算の対象となる課税所得が計算されます。
そして35にはその年の個人所得税の総額が記載されます。したがって35を見ればどれくらいの個人所得税が年間で発生したのか?がわかります。
通常、ベトナムに駐在した場合日本と比較すると個人所得税の金額が3倍程度になっているはずです。もちろんその人の給与にもよりますが300万円から500万円の水準におさまることが多いでしょう。
確定申告時’にびっくりされる人がとても多いです。
まとめ:34は課税所得で、35を見れば個人所得税の合計がわかる
Ⅱ:期中の個人所得税等の調整額【36〜43】
年間総額の個人所得税が確定したとしても、期中で納税(四半期か月次)でしています。また優遇税制等もあります。
そこで、この金額を調整する必要があります。以下の2つのグループに分類されます。つまり総額の個人所得税と確定申告時に支払う金額は異なってきます。
- 期中の納税金額の調整 36〜40
- 減額される個人所得税 41〜43
それぞれ解説していきます。
期中の納税金額の調整【36〜40】
以下の項目です。
- 会社が源泉徴収した金額(ベトナム給与)
- 個人が納税した金額(日本給与)
- 海外で納税した分(該当あれば)
- 赴任時のPIT決算期のための二重控除・支払い税額
ベトナム給与と日本給与は、期中それぞれ別な申告書フォームで申告・納税していたのでその金額を転機します。
また、4については初年度の場合赴任してから1年で申告・納税します。その後暦年(1月から12月)で申告・納税します。つまり2年目で重複してくる部分が出てきます。そのためその分を調整する必要があるのです。
詳細は以下をご覧ください。
>>【ベトナムへ年度の途中で赴任!(初年度)】その際の個人所得税はどの期間で申告するのか?
まとめ:期中納税額等を調整する
個人所得税の優遇等【41〜43】
ここでは個人所得税の優遇等が記載されます。一定の場合、個人所得の優遇税制も存在します。
- 経済区による優遇税制
- その他の理由による減税(重複して納税している部分、月割)
場所によって50%減税とかあります。その場合この欄でいくら減税されているか?がわかります。
イメージは以下のような感じです。
まとめ:優遇税制や初年度申告で重複(確定申告ベースで納税額)
Ⅲ:納税または還付(相殺)【44〜49】
これまでのステップで①年間総額の個人所得税と②調整額(期中納税の金額等)を計算してきました。最後のステップは確定申告時に支払う金額または還付される金額の計算です。通常は期中納税金額では不足しているため、確定申告時に支払う残りの個人所得税が計算されます。
- 確定申告時に支払う金額 44
- 還付または相殺される金額 44〜49
それぞれ解説していきますね。
確定申告時支払うべき金額【44】
もし期中金額の方が、最終個人所得税の金額よりも小さかったら(不足していれば)その不足分を「納税」する必要があります。
>>なぜ、ベトナムの個人所得税の確定申告でサプライズが起こるのか?もう一つの理由
まとめ:確定申告時に支払う金額。期中で不足していた金額
過払いの場合は還付か相殺【45~49 】
逆に期中金額の方が、最終個人所得税の金額よりも大きかったら(超過払いしていれば)その超過分を「還付」「相殺」する必要があります。大きく以下に分類されます。
- 還付もしくはその他税金(VATなど)と相殺
- 翌期以降の個人所得税と相殺
通常、過払いになることはありませんが稀に生じることがあります。その場合、還付か相殺を選択することになります。
>>【注意! 】ベトナム個人所得税が過払いになってしまう場合とは?
まとめ:期中納税のほうが確定個人所得税の総額より大きい場合は還付が相殺
!本日のまとめ
本日は個人所得税の確定申告の構造について解説させて頂きました。
大きなポイントは以下の通りです。
- 35で年間の個人所得税の発生金額
- 44で確定申告時に支払い(残りの金額)の金額
最低限ここだけの金額をチェックして違和感ないか?をチェックしましょう。