こんにちはマナボックスの法令アップデートニュースです。

今日のテーマは『2587/TCHQ-GSQL号および2588/TCHQ-GSQL号を発行によるOn the spot import and export取引の廃止?』についてです。

2587/TCHQ-GSQLと2588/TCHQ-GSQLを発行しました

ベトナム、世界が認める活気あふれる経済と急激に進展する貿易活動で知られるこの国が、その貿易環境において大きな転換点を迎えようとしています。

ベトナムの貿易規則を司る主要な組織である*税関総局(GDC)*は、既存の「みなし輸出入」取引に関する大幅な改定を発表しました。具体的にはGDCは、2023年5月29日に公式通知番号2587/TCHQ-GSQLと2588/TCHQ-GSQLを発行し、政令08/2015/ND-CPの大幅な修正を打ち出しました。

2587/TCHQ-GSQLに重要なことが記載されています。1項から3項をまとめると以下の通りです。

1項の内容

政令 08/2015/ND-CP 第 35 条の現地輸出入に関するすべての規制を廃止する。

1項で結論が述べられています。廃止する!と宣言しています。どうやら税収の確保というのが背景にありそうです。

なお、以下の3つのパターン知識は前提となるので理解しておくとよりいいでしょう。

>>ベトナムにおけるOn the spot Export and Import(みなし輸出入通関制度)の3つのパターンを図解で解説!

2項と3項の内容、代理店契約で納税を確保

2項の内容をまとめると以下のようになります。ただやっぱりわかりくいので詳細はフォワーダーさんなどの専門家に確認してください。また実務も固まっていないと思われます。

第35条第1項a及びb点で指定されたケースは、令和08/2015/ND-CP号令に基づき、財務省が認可した通達38/2015/TT-BTC及びその改正(通達39/2018/TT-BTC)に基づく対応する条項に変更されます。

これらは、外国商人のアウトソーシング活動や貿易管理に関連しています。しかし、関連する法律体系を一体化し、同一性質の商品取引に対する政策差別を避けるため、外国商人にとっての現地輸入・輸出規制を廃止することが推奨されています。これは、商法、外国貿易管理法、輸出税・輸入税法に関する規定を見直し、修正することを含みます。最終的には、これらの改正によって、関連法律の現地輸出・輸入規定を一括廃止し、法的調和と公平性を確保することが求められます。

続いて3項の内容です。ここではじゃあどうするの?という代替案について説明されています。

3.みなし輸出入の代替案について

具体的には以下の3つのケースが挙げられています。まずはベトナム国内企業と「代理店契約」を締結しなければならないパターンです。以下の(1-1)(1-2)です。

(1-1)(パターンa)国外企業向けの加工品をベトナム国内へ納入する場合、国内2社間での取引とする。商品を加工する企業は加工品の使用目的を変更して納税する必要がある。

(1-2)(パターンc)輸出用製品のための原材料を使用して生産した製品を、国外企業へ販売するがベトナム国内へ納入する場合、国内2社間での取引とする。

これらの原材料の使用目的を変更する輸出入企業は、規定された税金を全額支払う必要性があります。

これらのケースでは、ベトナムに拠点を持たない外国企業は、ベトナムでの売上から収益を得る取引に対する関連の税金を納税するために、ベトナムの代理店と契約を結ばなければなりません。

(2)みなし輸出入を伴わない単純な取引の場合、ベトナムに拠点をもたない国外企業は、代理店契約を結ぶか、VATインボイス(税コードまたは国外企業の会社名と税コード、商品を受領するベトナム国内企業名を記載)を使用しなければいけません。

それぞれの内容について、意見や解決策があれば、6月13日までに税関当局まで送るように。その後まとめて政府へ報告するようです。コメントの電子版は、メールアドレス:anhptp@custom.gov.vnに送信されます。連絡先はPham Thi Phuong Anh氏で、電話番号は0917793233だそうです。メールでも電話でもいいそうですね。

4項目以降は、下記のような内容が記載されています。

  • Ⅰ政令第08/2015/ND-CP号第35条の現地輸出入に関する規制の歴史
  • II. 現地での輸出入活動の現状(年度別売上高データおよび輸出入税収、みなし輸出入を導入する前の状況、その後の状況、現在の免税状況、納税額の増減。現地での輸入と輸出の申告や取引高に関するデータなど
  • 「みなし輸出入」のメリット、デメリット(税収が減るなど)
  • III. 提案 (結論)

「みなし輸出入」(On the spot Import and Export)取引の定義

繰り返しになりますが、現行の政令08/2015の第35条では、「みなし輸出入」取引は次のように定義されています。

  • 海外企業との製造委託契約によりベトナム国内で生産され、ベトナムの組織または個人に販売される取引
  • ベトナム企業とベトナムに拠点を持たない海外の組織または個人との売買取引で、海外の貿易業者とベトナム国内の他の企業との取り決めに基づき製品が引き渡される、または受け取られる取引

なお、「みなし輸出入」の定義やスキーム図については以下の記事を参照してください。

>>ベトナムにおけるOn the spot Export and Import(みなし輸出入通関制度)の3つのパターンを図解で解説!

この提案の影響:大きな波紋を呼ぶ可能性がある【関税やVATの大きな影響か?】

もしこの提案が承認された場合、「みなし輸出入」取引に関わる企業、特に海外との無償支給取引や有償支給取引に関わる企業に大きな影響が出ることが予想されます。輸出入手続きの変更に加え、輸入原材料にかかる輸入関税の免税・還付や、海外企業に販売されたものが別のベトナム企業に直接引き渡された製品に適用されるVAT(付加価値税)の取り扱いについても、新たな問題が生じることが予想されます。

例えば、これまでVATの還付を前提にビジネスとして成り立つと期待していたのにそもそもそれがなくなるということなどが企業によってあるでしょう。

みなし輸出入取引が廃止された場合の代替案について相談する

マナボックスでは、協力会社であるロジスティック会社と一緒に今回の件についての代替案での支援をしております。もし質問などがあれば下記より問い合わせください。

    ベトナムの会計・税務、法務等でお困りの人は、下記フォームにより、気軽に問い合わせしてください。
    経営などのビジネス全般のお悩みでも相談可能です。

    深刻な問題になる?:ベトナム政府の決定待ち

    これらの広範な問題は政府による慎重な検討と解決が必要であり、新たな改定が施行されるまでの状況は流動的なままです。重要な進展があった場合には最新情報をお伝えするため、この問題を継続的にフォローアップしていく必要があるでしょう!

    あなたの会社の現在のビジネススキームの再確認

    政府がこの提案を検討し、新たな政策を策定するのを待つ間に、各企業は現在のビジネスモデルを再確認し、自社の事業への潜在的な影響を分析することが推奨されます。

    慎重な準備と対策:あなたのビジネスへの影響を事前に評価する

    この提案が現行法になる可能性は、企業にとって大きなリスクとなり得ます。だからこそ、今こそ冷静にビジネスの現状を見つめ直し、将来的な影響を予測するための慎重な準備が求められます。例えば以下のようなことをすることが必要あるでしょう。

    混乱を避けるための正確な情報収集

    新たな貿易規制の導入は、多くの場合、混乱と不確実性をもたらします。しかし、情報が逐次更新される中で、企業は正確な情報を集め、適切な戦略を立てる必要があります。ベトナムの場合は法律と実務に乖離があるというのが特徴的です。正確な情報の収集に努めましょう。

    ビジネスの将来を守るための対策

    新たな規制がもたらす影響を最小限に抑えるためには、これからの変化に対応する戦略を策定することが求められます。ビジネスの未来を守るためには、適応力と柔軟性が必要となるでしょう。

    この改定案はまだ提案段階にあり、確定的なものではありません。しかし、提案が現行法になる可能性は存在するため、企業としてはその動向を注視し、その影響を予測しておくことが求められます。

    結論:変化をチャンスに変えよう!というマインドセットも必要かも

    ベトナムの「みなし輸出入」取引の改正案は、確かに多くの企業に影響を及ぼす可能性があります。しかし、その影響を最小限に抑え、更にはこれをチャンスに変えるためには、あなたの企業がその変化を予測し、適切な対策を立てることが求められます。何事にも変化は付き物であり、その変化をどう受け入れ、どう対応するかが、企業の未来を左右する鍵となります。