ベトナム法令ニュースです。
今日は『ベトナムの公務員の基礎賃金の引き上げとその影響』というテーマでお伝えしたいと思います。
ベトマム政府は、2023年5月14日付の政令24/2023/ND-CPにより、政令38/2019/ND-CPに代わる新しい基礎賃金を2023年7月1日から発効することを決定しました。
2023年7月1日以降、公務員の基礎賃金は月額1,490,000ドンから月額1,800,000VNDとなる
対象者は第1条に規定されています。
ベトナムの様々な公共部門団体で働く個人(官吏、公務員、給与所得者を含む)が対象です。これらの団体には、ベトナム共産党、政府、ベトナム祖国戦線、国が出資する社会政治団体、中央都市や省、郊外地区、都市地区、省付属都市、コミューンなどさまざまな地域で活動する団体などがあります。また、特別な行政・経済単位や軍隊にも適用されます。
要するに公務員ですね。
公務員の基礎賃金が上昇はあなたの会社の従業員の社会保険に影響する
公務員の基礎賃金(最低賃金と表現されることもあります)だから、「わたしの会社には関係ないよ」そんな風に思うかもしれません。しかしそんなことはありません。
なぜならば強制社会保険のうち「社会保険」(SI)と「健康保険」(HI)の計算は「公務員の基礎賃金」の金額の影響を受けるからです。なお、失業保険料は「地域別最低賃金の20倍」が上限です。公務員ではないので注意が必要です。
以下のリンク先も参考になりますので是非ご覧ください。
公務員以外の労働者の強制SIとHIの会社負担分と個人負担分は、公務員の基本給の20倍が上限であるため、その上限額はVND29,800,000からVND36,000,000に増加します。これについて深堀りして理解を深めましょう。
社会保険の金額は以下の計算式で計算されます。
「標準報酬額✖️社会保険率」
この標準報酬額については上限が定められています。どんなに給与が高い人がいても比例して増えるわけではありません。つまり、月額200万円の人がいても200万円✖️率で計算するわけではないのですね。
公務員の基礎賃金✖︎20で上限額が計算されます。例えば給与VND36,000,000の人であれば今まではVND29,800,000を基礎に社会保険(強制SIとHI)を計算していました。それが2023年7月からはVND36,000,000を基礎に計算されます。したがって、社会保険の金額が増加しますよね。以下の図の通りです。円は今日時点のレートを使った概算です。イメージしやすいように記載しました。
つまり、VND36,000,000以上の給与水準の従業員がいる場合には
- 会社
- その従業員
に影響があるということです。
最低賃金引き上げによる具体的な影響とは? 手取りが減ってしまう?
上記を前提すると影響があるケースというのはざっくり給与がVND36,000,000以上の人です。
現状だとベトナム人のマネージャー以上の職階の人や日本人の現地採用の人が該当するでしょう。最初に影響額の結論をまとめると以下のようになります。外国人は雇用保険への加入が必要ないため違いが生じます。
会社負担(増える) | 個人負担(手取りが減る) | |
ベトナム人 | 1,333,000VND/月 | 651,000VND/月 |
日本人 | 1,271,000VND/月 | 589,000VND/月 |
つまり、会社のキャッシュアウトは増え、個人の手取りはこれまでより減るということです。給与金額の水準が高い会社は影響を受けることになりますね。また大抵の日本人の現地採用の人も影響(36百万VND以上であると予想されるため)を受けるでしょう。
>>M-Lab_手当等で個人所得税と強制保険(社会保険など)を合理的に減らす方法 9つ列挙してみた【実務上の留意も解説】
その他の影響
その他、基礎賃金に基づく手当がある場合には影響が考えられるでしょう。Social Insurance Law 2014, Occupational Safety and Health Law 2015が根拠です。
- 害毒手当、地域手当、管理職手当など
- 出産手当、傷病手当の水準(1日当たりの基礎賃金の30%)
- 出産一時給付金:出産したその月に支給する基礎賃金2倍
- 葬祭費補助金:基礎賃金10倍
- 遺族給付金:月額の基礎賃金の50%~70%
- 労働能力が31%以上低下している従業員に対する月額手当が447,000 VNDから540,000 VNDに増加し、その後、1%低下するごとに 1%につき月額に36,000VND加増される(現在は29,800VND)
- 労働災害による負傷または職業病の安定治療後に職場復帰したが、最初の30日以内に健康状態がまだ回復しなかった場合、負傷・疾病の治療後の健康回復給付金は1日当たりの447,000VNDから540,000VNDへ増加される。
- 労働災害・職業病に遭う人への給付金:労働能力が81%以上低下し、脊髄麻痺や両目の全盲、手か足かの切断または麻痺、精神障害のある従業員は、毎月基礎賃金に相当する貢献手当が追加支給される。
- 労働者が労働災害または職業病により死亡した場合、その人の親族への一時給付金は基礎賃金36倍が基礎。
今日のまとめ
今日は公務員の最低賃金の引き上げが2023年7月から適用されることによる社会保険の影響をお伝えしました。
- 公務員の最低賃金は月額1,490,000ドンから月額1,800,000VND
- これによる社会保険への影響(会社負担が増え、手取りが減る)が生じる。上限額が基礎賃金の20倍だから。
- その他この基礎賃金を基礎としている手当の金額が変更
お役に立てれば幸いです。