ベトナム法令ニュースです。

今日は『技術移転契約登録の必要性と税務上と行政罰のリスク』というテーマでお伝えします。

技術移転がある場合には登録が必要

まず結論です。

技術移転がある場合には「登録」が必要であり、それをしないと罰則のリスクがある。

新技術移転法(第07/2017/QH14号)や政令76/2018/ND-CPが適用され、

  • ベトナムから海外(日本とか)
  • 海外からベトナム

に「技術移転」する場合には科学技術当局への登録が強制されています。

じゃあ技術移転の範囲ってなんなの?

続いて新技術移転法の「技術移転」ってそもそもなんなの?というお話しです。この法律によれば以下が技術移転に含まれます。

  • 技術的ノウハウや科学的ノウハウ
  • 技術的計画・行程、図面
  • コンピュータソフトウェア、データ情報

などが挙げられます。例えば、ベトナムの製造子会社が本社工場のノウハウを使わないと製造ができないケースが典型的な例でしょう。設計図などもそうでしょう。本社の製造のこれまで積みあげられた経験や知識があるこそベトナムでの製造可能となっているケースはよくあります。この場合、日本からベトナムへの技術移転となり、科学技術当局への登録が必要となります。

第4条 移転可能な技術

1. 以下の技術の1つまたはいくつかが移転可能である:

  • a) 技術ノウハウおよび技術的ノウハウ;
  • b) 技術計画、技術プロセス、エンジニアリング・ソリューション、パラメータ、図面、数式、コンピュータ・ソフトウェア、データベース;
  • c) 生産の合理化および技術革新のためのソリューション;
  • d) 本条a,b,c項に記載された移転可能な技術に付随する機械および/または設備。

2. 本条第1項に規定された譲渡可能な技術が知的財産権保護の対象となる場合、知的財産権の譲渡は知的財産権に関する法律の規定に従って行われる。

引用元:Law No.: 07/2017/QH14

逆のパターンの移転してはいけないものもあります。安全性に問題があるような技術ですね。

第11条 譲渡禁止技術

1. 外国からベトナムへの、または国内への以下の技術の移転を禁止する:

  • a) 労働安全衛生、人の健康保護、資源・環境保護、生物多様性に関する法律の規制を満たさない技術;
  • b) 社会・経済発展に悪影響を及ぼす製品、または国防・安全保障、社会秩序・安全保障に悪影響を及ぼす製品の製造に使用される技術;
  • c) 開発途上国において、もはや一般的に使用・移転されておらず、国の技術基準や規制を満たしていない技術;
  • d) 有害化学物質を使用したり、有害廃棄物を発生させたりする技術で、環境に関する国の技術基準や規制を満たさないもの;
  • dd) 国の技術基準と規制を満たさない放射性物質を使用または生成する技術。

2. 国家機密リストに記載されている技術をベトナムから外国へ移転することも、法律で規定されていない限り禁止されている。

3. 政府は移転禁止技術リストを公布する責任がある。

引用元:Law No.: 07/2017/QH14

ロイヤリティやその他のサービスと技術移転の関係

よくある取引はベトナムが日本本社に支払うロイヤリティです。

ロイヤリティは、著作権や特許、商標などの知的財産権の所有者が、他者にその権利を使用する許可を与える代わりに受け取る報酬のことを言います。

ベトナム側が日本本社に支払う内容として実務上、以下がよくあります。

  • ロイヤリティ
  • 商標権(トレードマーク)
  • その他の支援(経営コンサルなど)
種類

登録の必要性

留意点

ロイヤリティ

必要登録する手順に留意

商標権

必要なし親会社による所有権の証明。「知的財産法」に基づいて登録が必要になる。

その他の支援

必要なしサービスの実態の証拠と金額の妥当性を証明する必要あり

続いて税務上の留意点を解説します。

技術移転(ロイヤリティ)とリスクの論点

税務上のリスク

論点はシンプルに言えば以下の通りです。

・損金不算入

もし登録しなければいけないのに登録していなかった場合、そのロイヤリティーは損金不算入になる可能性があります。もちろん100%でなくて今もまだ実務的には曖昧ですがその可能性は低くはありません。

これ、法律上も論理上も「登録」しないと損金不算入というのは正しくないです。ただ「登録」してないから損金不算入というのはベトナムっぽいでしょう? それ理由になります? ということはあるので要注意です。ベトナム滞在歴が長い人はなるほどと思っていただけるはずです。

この技術移転、ベトナムから日本に移転する場合も登録が必要になりそうですが趣旨はもしかしたらそれぞれ違うのかもしれませんね。

  • 日本からベトナム→使える技術移転してるの?それに見合った金額なの?
  • ベトナムから日本→大事な技術移転してない?大丈夫?ちゃんとお金とってる?

こんなニュアンスかもしれません。

またFCTにも留意が必要ですね。

罰金のリスク

行政罰としての罰金の規則があるようです。政令51/2019/ND-CPによる罰則です。これは、科学、技術および技術移転の分野で営業している個人および事業体に対する、科学的・技術的活動および技術移転に起因する違反への行政罰等を規定しています。
一般的な行政違反処罰規定の例として、次のものが挙げられます。

  • 技術移転の許諾なくして移転制限技術リストに属する技術を移転する行為:個人は3,000万~4,000万ドン、企業は6,000万~8,000万ドンの罰金
  • 移転禁止技術リストに属する技術をベトナムから外国に、または外国からベトナムに移転する行為:個人は4,000万~5,000万ドン、企業は8,000万~1億ドンの罰金

などです。まあまあ大きな金額ですね。

技術移転の方法

技術移転の方法についても定められています。すごく分かりにくいですが要はきちんと方法で移転しないとだめだよ。ということなんだと思います。

第5条 技術移転 技術移転の形態

1. 独立技術移転契約。

2. 以下の場合における技術移転の一部:

  • a) 投資プロジェクト;
  • b) 技術による資本貢献
  • c) フランチャイズ契約
  • d) 知的財産権の移転
  • dd) 第 4 条第 1 項第 d 号に記載された機械・設備の売買。

3. 技術移転は、法律で規定された他の形態で実施することができる。

4. 本条第1項および第2項bに規定される技術移転は、書面による契約に基づいて実施されなければならず、本条第2項a、c、dおよびddならびに第3項に規定される技術移転は、本条第23項に記載されるすべての内容を含まなければならない投資プロジェクトの契約または契約書の条項もしくは付属書類に基づいて実施することができる。

引用元:Law No.: 07/2017/QH14

科学技術省への技術登録の流れ

政令によれば技術移転契約を締結してから90日以内に、必要書類を揃えて科学技術省に登録の申請を行う必要があります。そしてこの申請から一定の期間以内に登録が完了となります。なお、5営業日となっているようですが、実際には5営業日で登録は完了しないと考えています。なぜならば追加の質問等が当局からされる可能性があるからです。

この申請の流れは以下の通りです。

  • ステップ1:「ロイヤリティーやラインセンス契約」を見直し、07/2017/QH14の規制に準拠するように契約を修正します(該当する場合)。
  • ステップ2:「ロイヤリティーやラインセンス契約」が英語または日本語の場合は、ライセンス契約をベトナム語に翻訳します。
  • ステップ3:技術科学省への登録の申請(技術移転登録申請書)を提出する前に、必要な書類と情報をすべて準備します。
  • ステップ4:技術科学省に申請(技術移転登録申請書)を提出します。
  • ステップ5:技術科学省での申請プロセスを追跡します。フォローアップ
  • ステップ6:技術科学省から「登録証明書」を受け取ります。

なお法律上は以下のようになっています。

第31条 技術移転の登録

1. 技術移転許可証が付与され、技術移転が制限されている技術の移転を除き、以下の場合、技術移転契約書および第2条第5項に定める技術移転の一部を科学技術当局に登録しなければならない:

  • a) 外国からベトナムへの技術移転;
  • b) ベトナムから外国への技術移転
  • c) 国家資金または国家予算を利用した国内技術移転(科学技術課題成果登録証明書がある場合を除く)。

2. 政府は、本条第1項に規定された以外のケースで、技術移転契約の登録を実施する組織および個人を奨励する。

3. 技術移転登録申請には以下のものが含まれる:

  • a) 技術移転登録申請書。この申請書には、技術移転契約の内容が関連法規に適合していることを保証する当事者の責任が明記されている;
  • b) 第23条に規定された内容をすべて含む技術移転契約書の原本または謄本。ベトナム語による合意書が入手できない場合は、技術移転合意書のベトナム語への公証済みまたは認証済みの翻訳を提出しなければならない。

4. 技術移転契約締結から90日以内に、技術移転登録申請義務のある当事者は、科学技術当局に技術移転登録証明書の申請書を送付しなければならない。

 5. 十分な申請書を受領してから05営業日以内に、科学技術当局は申請書を処理し、申請者に技術移転登録証を付与しなければならない。申請が拒絶された場合、理由を明記した回答書が申請者に送付される。

6. 科学技術当局は、以下の場合、技術移転登録証の申請を拒否する権利を有する:

  • a) 移転が制限されている技術の移転を目的とした技術移転契約;
  • b) 移転可能な技術または技術移転の内容が特定されていない契約;
  • c) 契約内容が本法の規定に反する場合。

7. 政府は、本条に関する細則を公布する。

引用元:Law No.: 07/2017/QH14