こんにちはマナボックスベトナムの菅野です。
今日のテーマは『ベトナム優遇税制のまとめ』というお話しです。以下のリンク先ではベトナムの優遇税制についての構造をまとめています。
ざっくりとその構造をまとめると…。
- #1通常より税率が低い(優遇税率)
- #2免税(税がかからない)
- #2減税(税率が減る)
この3つです。今日はじゃあどんな場合にそれが適用されるの?という具体的な内容(条件)です。その内容を抽象化すれば「場所」と「ビジネスの内容」となるわけですがその内容を詳細に解説しますね。
もしあなたがベトナムで
この記事のもくじ
#1優遇税率のパターン
まず優遇税率のパターンを見ていきます。ベトナムでは原則20%の法人税率が課されますが、一定の条件を満たすことで以下のように優遇されます。
- 10%、15年
- 10%または15%、期限なし
- 17%、10年
です。
10%が15年間適用されるケース
細かくは以下の7つがあります。日系企業でこれを享受しているケースはあまり多くない印象です。
- 新規投資プロジェクトは、特に困難な地域、経済特区、高技術ゾーン、集中情報技術ゾーンに関係します。
科学技術研究、CNCの開発と応用、CNCインキュベーション施設の建設投資、社会インフラ(水道、電気、給排水設備、橋、道路、鉄道、空港、海港、河港、空港、鉄道駅)への投資などの分野における新規投資プロジェクト。ただし、これらのプロジェクトの建設による収入は、税制上の優遇措置は受けられない。
ソフトウェア製品を生産し、法律の規定に従ってソフトウェア製品の生産工程を満たすこと。
再生可能エネルギー、クリーンエネルギー、廃棄物破壊からのエネルギーの生産、バイオテクノロジーの開発。
- 環境保護分野の新規投資プロジェクト(汚染処理装置、環境監視分析装置の生産、廃水・排ガス・固形廃棄物の収集処理、廃棄物のリサイクルと再利用)が含まれます。
- CNC企業とCNCを適用する農業企業は、CNC法に基づき、証明書発行年から優遇税率を享受します。既に優遇を受けている場合、証明書発行により残り期間に適用されます。
- 製造部門の新規投資プロジェクトで、特別消費税の対象品目および鉱物採掘を除き、最低投資額が6兆VND、投資許可後3年以内に支出され、以下のいずれかの基準を満たす必要があります。
- CNC支援と繊維・衣類生産支援を含む優先支援産業製品の生産プロジェクトは、EUまたは同等の技術基準を満たす必要があります。
- 特定の条件と鉱物採掘プロジェクトを除く製造セクターの投資プロジェクトで、最低投資額が12兆VND、評価された技術を使用し、登録投資総額の支出が5年を超えないことが条件です。
上記の7つのカテゴリーを「投資規模&セクター」、「技術(IT含む)&イノベーション」、「環境&社会的影響」という3つの主要なグループに分類すればよりスッキリするでしょう。
サブカテゴリ | 番号 | 投資規模&セクター | 技術&イノベーション | 環境&社会的影響 |
---|---|---|---|---|
特に困難な地域、経済特区、高技術ゾーン、集中情報技術ゾーンの新規投資プロジェクト | 1 | ✔︎ | – | – |
科学技術研究、CNC開発と応用、CNCインキュベーター施設の建設投資、社会インフラ投資の新規プロジェクト | 2 | ✔︎ | ✔︎ | – |
環境保護分野の新規投資プロジェクト | 3 | – | – | ✔︎ |
CNCを適用する企業および農業企業 | 4 | – | ✔︎ | – |
最小資本6兆VNDの製造セクターの新規投資プロジェクト | 5 | ✔︎ | – | – |
優先支援産業製品の生産の新規投資プロジェクト | 6 | – | ✔︎ | – |
最小投資資本12兆VNDの製造セクター投資プロジェクト | 7 | ✔︎ | – | – |
10%が無期限に適用されるケース
これは以下の通り。5つあります。
- 教育・訓練、職業訓練、医療、文化、スポーツ、環境の社会化活動を実施する企業の収入。
- 出版活動からの出版社の収入。
- 印刷活動(広告を含む)からの報道機関の収入。
- 社会住宅事業(販売、賃貸、またはリース購入)の投資プロジェクトを実施する企業の収入。社会住宅は法律で定められた基準を満たさなければなりません。
- 森林および農産物の植樹、ケア、保護からの企業の収入、困難な地域での農業および水産物の栽培、飼育、加工からの収入、税免除項目を除く、特に困難な地域にない農業、林業、漁業、塩産業の生産・加工協同組合の収入;植物および動物の品種の生産、増殖、交配;塩の生産、採掘および精製;収穫後の農産物の保存。
社会貢献活動からの収入と特定産業からの収入という視点で整理できるでしょう。日系企業で適用されるケースは多くない印象です。
活動 | 社会貢献活動 | 特定産業からの収入 |
---|---|---|
1,教育、職業訓練、医療、文化、スポーツ、環境の社会化活動からの収入 | ✔︎ | – |
2,出版活動からの収入 | – | ✔︎ |
3,印刷活動(広告を含む)からの収入 | – | ✔︎ |
4,社会住宅事業の投資プロジェクトからの収入 | ✔︎ | – |
5,森林および農産物の植樹、ケア、保護からの収入、農業・水産活動、協同組合(税免除項目を除く)、植物・動物種の生産・交配、塩の生産・精製、収穫後の農産物の保存からの収入 | – | ✔︎ |
そして農業生産についてビジネス活動をする会社は15%の税率が適用されます。
17%の税率が10年のケース
以下の2つのケースです。
(1) 「社会経済状況が厳しい地域」での新規投資プロジェクト。(2) 新規投資プロジェクト: 高品質の鉄鋼生産、省エネ製品、農業、林業、漁業、製塩用機械の製造、灌漑設備の生産、家畜・家禽・水産飼料の生産と精製、伝統産業の発展。
なお2016年から17%の税率です。
#2ベトナム法人税の免税と#3の減税のパターン
続いては免税と減税のパターンです。こちらはセットなので一緒に解説します。
免税期間 | 50%減税期間 | 内容 |
---|---|---|
4年 | 次の9年 | (1) 15年間で優遇税率10%を享受する投資プロジェクト (2) 困難及び特別地域での新たな「社会化投資プロジェクト」 |
4年 | 次の5年 | (1) 地域が困難でない新たな「社会化投資プロジェクト」 |
2年 | 次の4年 | (1) 10年間で税制優遇を享受する新規投資プロジェクト (2) 困難な工業区域での新規投資プロジェクト(特別級都市の市内区、中央直属級I都市、省直属都市には含まれず;工業団地が有利及び不利な地域全体に位置する場合、税制優遇は投資プロジェクトの実際の場所に基づく) |
最初の「4免9減」は#1と解説した15年優遇されるケースとセットのようです。そのため「日系企業」での適用はあまりないと言えるでしょう。2番目の「4免5減」については社会化投資であることから「日系企業」で適用されるケースはあまりないという印象です。
最後の「2免4減」はよくあるケースです。工業団地に進出する日系の製造会社の多くはこのパターンの優遇を享受できるでしょう。
法人所得税の税制優遇:その他の税減免ケース 3つ
上記の他、以下の場合にも優遇税制が適用されるケースがあります。少し細かいですが解説しておきます。
- 【女性の従業員の比率が多い場合】製造、建設、輸送業の企業で、10人から100人の従業員を雇用し、そのうち女性従業員が全体の50%以上を占める、または100人以上の従業員を雇用し、そのうち女性従業員が全体の30%以上を占める場合。女性従業員に対する追加支出(職業再訓練費用;幼稚園教諭への給与と手当;年間追加健康診断費用;訓練費用及び出産後の休暇に対する手当等)に相当する額の法人所得税が軽減されます。公共サービス部門や、直接生産・商売を行わない企業グループに属するオフィスは、この規則による税減免を受けることはできません。
【少数民族を雇用する場合】民族少数派の労働者を雇用する企業は、職業訓練、住宅支援、保険(国家からの支援を受けていない場合)に民族少数派の労働者に費用を支出した場合、その支出額に相当する法人所得税の減税を受ける権利があります。
【困難地域の組織や個人への優先技術移転】困難地域の組織や個人への優先技術移転は、技術移転から得た収入に基づいて計算される法人所得税の50%減税を受けることができます。
表にすると以下のようになります。
ケースのタイトル | 要約 |
---|---|
女性従業員の比率が高い企業への税制優遇 | 製造、建設、輸送業で女性が一定割合以上を占める企業は、女性従業員に対する追加支出相当分の法人所得税軽減。
|
民族少数派の労働者を支援する企業への税制優遇 | 民族少数派の労働者に対する職業訓練、住宅支援、保険等の支出相当分の法人所得税減税。 |
困難地域への技術移転を支援する企業への税制優遇 | 困難地域への優先技術移転による収入に対し、法人所得税を50%減税。 |
今日のまとめ
本日は「ベトナムにおける優遇税制の具体的な条件」について解説しました。
ベトナムにおける法人所得税の税制優遇措置は、特定の条件を満たす投資プロジェクトや企業活動に対して様々な形で提供されます。これには、新規投資プロジェクト、特に困難な地域や経済特区でのプロジェクト、高技術や環境保護に関連する活動などが含まれます。
優遇の内容 | 内容 | 備考 |
#1優遇税率 | 10%が15年 | 技術的、社会的、環境 地域, ITなど |
10%か15%が無期限 | 社会貢献活動からの収入と特定産業からの収入 農業は15% | |
17%が10年 | 「社会経済状況が厳しい地域など | |
#2,3 免税、減税 | 「4免9減」 | 15年間で優遇税率10%、特定地位域での社会化投資 |
「4免5減」 | 社会化投資 | |
「2免4減」 | 実務でよくあり |
でした。お役にたてれば幸いです。