ベトナムでは、従業員数が10人未満の企業、つまり「小規模企業」や「マイクロ企業」に対する支援と優遇措置が多く設けられています。
日系企業がベトナム進出する際に活用できる様々な支援内容があり、これを活用することで事業運営がさらに効率化される可能性があります。本記事では、その概要と手続きのポイントをご紹介します。
この記事のもくじ
ベトナムにおける小規模企業(マイクロ企業)とは?
令80/2021/ND-CPの第5条第1項によると、マイクロ企業の判定基準は次の通り。
農業、林業、水産業、工業および建設業のマイクロ企業:年間平均で社会保険に加入している従業員が10人以下で、年間売上が30億VND以下、または年間資本金が30億VND以下であること。
商業およびサービス業のマイクロ企業:年間平均で社会保険に加入している従業員が10人以下で、年間売上が100億VND以下、または年間資本金が30億VND以下であること。
30億VNDは18百万円くらいで100億VNDは60百万円くらいです。なので日系企業でも該当があるケースはあるかもですね。
2019年労働法第218条によると、従業員数が10人未満の企業は2019年労働法に従う義務がありますが、政府によって規定された一部の手続きは免除または簡素化されます。
このため、従業員数が10人未満の企業は上記の基準に基づいて「マイクロ企業」と見なされます。これらの企業は2019年労働法に従う必要がありますが、いくつかの手続きについては免除や簡素化の対象となります。これらの基準に該当する企業は、小規模企業として様々な支援や優遇措置を受けることができます。
>>ベトナムSMEsってなに? 税務の優遇とか確認する時に役立ちます!【政令 NO. 39/2018/ND-CP】
小規模企業への支援内容
以下の支援があるようですね。
1. 技術支援 令80/2021/ND-CPの第11条第2項によると、デジタルトランスフォーメーションのためのソリューションをレンタルまたは購入する費用について、企業は最大50%の支援を受けることができ、年間20,000,000 VNDまでです(マイクロ企業の場合)。小規模企業は年間50,000,000 VNDまで、中規模企業は年間100,000,000 VNDまで支援を受けられます。
また、業務プロセス、管理プロセス、製造プロセス、技術プロセス、ビジネスモデルの転換など、企業のデジタル化に関する顧問契約額の支援もあります。顧問契約額の50%を上限として、マイクロ企業は5,000万VND/契約/年を超えず、各中企業は1億VND/契約/年を超えない範囲で支援を受けれるそうです。
Article 11. Technological assistance for SMEs
1. Reimbursement of up to 50% of the value of the advisory contract for digitalization of the enterprise in terms of business processes, administration processes, manufacturing processes, technological processes and conversion of business model but not exceeding 50 million VND/contract/year for each small enterprise and not exceeding 100 million VND/contract/year for each medium enterprise.
2. Reimbursement of up to 50% of the cost of leasing, buying solutions for digitalization for automation, improvement of efficiency of business processes, administration processes, manufacturing processes, technological processes in the enterprise and conversion of business model but not exceeding 20 million VND/year for each micro-enterprise; not exceeding 50 million VND/year for each small enterprise and not exceeding 100 million VND/year for each medium enterprise.
引用元:80/2021/ND-CPの第11条第2項
2. コンサルティング支援 令80/2021/ND-CPの第13条第2項(a)に基づき、小規模企業は人材、財務、生産、販売、市場、内部管理に関するコンサルティングサービスを受けるための支援を受けられます(専門法に基づく行政および法的手続きのコンサルティングを除く)。
具体的には、コンサルティング契約金額の100%まで支援が提供されますが、マイクロ企業の場合は年間50,000,000 VND、女性所有のマイクロ企業、多くの女性労働者を雇用するマイクロ企業、社会的企業のマイクロ企業の場合は年間70,000,000 VNDを超えません。
Article 13. Counseling for SMEs
2. Counseling contents
SMEs will receive counseling about personnel, finance, manufacturing, sale, market, internal administration and other contents relevant to their business operation (except counseling about administrative procedures and legal advice according to relevant laws) as follows:
a) 100% of the value of the advisory contract but not exceeding 50 million VND/year/enterprise for micro-enterprises, not exceeding 70 million VND/year/enterprise for women-owned micro-enterprises, micro-enterprises with high female employment and micro-enterprises that are social enterprises;
引用元:80/2021/ND-CPの第13条第2項(a)
3. 市場拡大支援 中小企業支援法2017の第13条第3項によると、新規市場開拓をサポートするため、入札での優遇措置が受けられます。特に国際入札においては優遇措置があり、ベトナム国内だけでなく海外での事業展開を考える企業にとっても有益です。
具体的には、2013年の入札法第10条第1項(e)および第2項(d)によると、コンサルティングサービス、非コンサルティングサービス、建設および設置の提供において、国際入札で優遇措置を受ける資格があります
4. 税務・会計支援 中小企業支援法2017の第10条第2項に基づきベトナム政府は小規模企業に対し、簡易な税務・会計手続きを導入しています。これにより、複雑な書類作成や手続きの負担が軽減され、事業に専念できる環境が整います。
表でまとめると以下の通り
支援項目 | 詳細 | 法律根拠 |
技術支援 | デジタルトランスフォーメーションのためのソリューション購入/レンタル費用を最大50%支援、年間20,000,000 VNDまで(小規模企業: 50,000,000 VND、中規模企業: 100,000,000 VND) | 令80/2021/ND-CP 第11条第2項 |
コンサルティング支援内容 | 人材、財務、生産、販売、市場、内部管理に関するコンサルティングサービスへの支援。マイクロ企業: 年間50,000,000 VNDまで、特定の条件下で70,000,000 VNDまで | 令80/2021/ND-CP 第13条第2項(a) |
市場拡大支援 | 2013年の入札法に基づく国際入札での優遇措置 | 中小企業支援法2017 第13条第3項、入札法2013 第10条第1項(e)および第2項(d) |
税務および会計支援 | 簡便な税務および会計手続きを適用可能(通達132/2018/TT-BTCに基づく) | 中小企業支援法2017 第10条第2項、通達132/2018/TT-BTC |
従業員数が10人未満の企業に与えられる優先措置
就業規則の文書化や届出の義務なし
令145/2020/ND-CPの第69条第1項によると、従業員数が10人未満の企業は就業規則の文書化義務がなく、労働契約内で労働規律および物的責任の内容について合意すればよいとされています。
2019年労働法第119条第1項に基づき、従業員数が10人未満の企業は、人民委員会の専門労働機関に就業規則の届出をする必要はありません。
就業規則の有効性
2019年労働法第121条によると、従業員数が10人未満の企業で文書化された就業規則を発行する場合、その有効性は企業によって決定されます。
労働者大会の開催免除および職場の基礎民主主義規定の公布義務なし
令145/2020/ND-CPの第114条第4項によると、従業員数が10人未満の企業は労働者大会の開催および職場での基礎民主主義規定の公布義務が免除されます。
会計組織および会計担当者の配置
通達132/2018/TT-BTCの第8条第1項によると、マイクロ企業は会計担当者を配置する必要がありますが、会計責任者(チーフアカウンタント)の配置は義務付けられていません。
中小企業支援法2017の第10条第2項に基づき、マイクロ企業は、税務および会計に関する法律で規定された簡便な税務行政手続きおよび会計制度を適用することができます(通達132/2018/TT-BTCに基づく)。
まとめ
ベトナムの小規模企業支援策を活用することで、日系企業は進出時に多くのメリットを享受することができます。制度の利用にあたっては、専門家に相談し、適切な手続きを進めることをお勧めします。