こんにちはラボの菅野です。
ベトナムのローカル会社(現地からの出資)やベトナムのローカル会計事務所とのやりとりで立て続いていかのようなことがおきました。
- 会社の財布と投資家の財布は同じ
です。これって会計を学んだことがある人であればとんでもない!ことだということがわかります。でも、これをわかってない投資家の人は結構多いです。これはベトナム人に限ったことではなく会計知識が乏しいひとの共通点かもしれません。ただ「会社の財布と投資家の財布は同じ」。この感覚はやばいですね。
この記事のもくじ
企業実態の公準が前提だ
そもそも会計を実施する上で「会計公準」という超、大事な決まりごとがあります。
「会計公準」(Accounting Postulates)とは?
会計公準とは、企業会計の根底にある基本的な概念や前提条件であり、企業が財務諸表を作成する際のルールや基準の基盤となるものです。会計公準は、企業会計が一定の一貫性と信頼性を保つための前提として機能しています。具体的には、以下の3つの主要な公準があるんですね。
「会計公準」に関連するものとして「ギルマンの3公準」というのがあります。(ほぼ同じという理解でいいと思います)
ギルマン(Stephen Gilman)の「会計公準の3つの基本要素」は、会計の理論的基盤を形成する重要な要素であり、企業会計の基本的な前提とされています。以下は、ギルマンが提唱した3つの公準です。
なおStephen Gilman(スティーブン・ギルマン)先生は、20世紀の会計学者であり、会計理論の分野において重要な貢献をした人物です。特に、会計公準(Accounting Conventions)や会計の基本的な前提に関する研究で知られています。ギルマン先生の代表的な著書には、**”Accounting Concepts of Profit”(会計利益の概念)があり、ここで公準に関連することも書かれているそうです。
1. 企業実体の公準(Entity Convention)
- 英語表記:Entity Assumption
- 内容:企業は所有者や他の関係者から独立した存在として扱われます。この公準では、企業の活動は、所有者や経営者の個人の活動とは区別されるべきだと考えます。つまり、企業の財務諸表には、企業の活動のみが反映され、個人の財産や取引は含まれません。
2. 継続企業の公準(Going Concern Convention)
- 英語表記:Going Concern Assumption
- 内容:企業は将来も継続して事業活動を行うという前提です。この公準は、企業が破産や清算を予定していない限り、財務諸表はこの前提に基づいて作成されるべきだとしています。企業が継続する前提があることで、長期的な資産の評価や償却が可能となります。
3. 貨幣的評価の公準(Monetary Unit Convention)
- 英語表記:Monetary Unit Assumption
- 内容:財務諸表における取引は、貨幣単位で表されます。この公準は、企業の活動や取引を貨幣価値に換算して記録するという考え方です。インフレやデフレの影響は一般的には考慮されず、一定の貨幣価値に基づいて評価されます。
要は
- 企業実体の公準:会社とオーナー(投資家)のお金・お財布は別々に考える。
- 継続企業の公準:会社はずっと続くと考える。
- 貨幣評価の公準:すべての取引はお金の価値で記録する。
という公準です。
企業実態の公準がわかっていない?
最近立て続けに直面した(投資家と会社の財布をわけるという概念)ことからこの前提がわかっていないのでは?と思ったんですね。
一般的に新興市場では、企業と所有者の財務を明確に分離するという概念が十分に浸透していない場合があり、これが投資環境や企業ガバナンスに影響を及ぼすことが指摘されてるんだとか。確かにそんな印象はありますよね。
ベトナムにおいても、企業と個人の財務の分離が不十分であることが、投資家にとってのリスク要因となる可能性があるようですよ。例えば、ジェトロが2022年に実施した「海外進出日系企業実態調査」では、ベトナムの投資環境に関する課題として、行政手続きの透明性の低さや手続きの煩雑さが挙げられています。
これらの要因は、企業と個人の財務の分離が不十分であることと関連している可能性があるといえますよね。ベトナム現地企業を買収する時のDDの際も留意が必要でしょう。
>>財務DD-オフバランス項目【計上されてない簿外取引を発見せよ!】
総じて、ベトナムのような新興国では、企業実体の公準の理解不足が投資家にとってのリスクとなる可能性があると言わざるをえません。というのは私がここ2ヶ月でこのようなことに4件ほど直面したからです。自分の会社なんだから勝手にお金を自分の口座に送金してもいい。などと本当に思ってるんですよ。
企業実態の公準(財布は別だよ)をわかってもらうためのアイデア
この前提をわかってないとそもそもビジネスとしてなりたたないですね。
このようなアイデアはどうでしょう?
わかりやすいたとえ話を使う
たとえ話:「会社は銀行のようなもの」
銀行に預けたお金は、個人のお金とは別で、銀行のお金です。同じように、会社のお金もオーナーの個人の財産とは別です。
家族と財布の例を使ってみましょう!
家族の中で、親のお財布と子供のお財布が別々であるように、会社の財布もオーナーとは別でなければならないと説明します。
また「お店のレジのお金は店主のポケットのお金ではない」でもいいかもしれません。
スーパーやコンビニのお店をイメージしてください。お客さんが買い物をすると、そのお金はレジに入りますよね?このお金はお店のお金であり、店主が個人的に使うためのものではありません。もし店主がレジのお金を勝手にポケットに入れてしまったら、お店の売り上げがわからなくなり、仕入れや経費の支払いができなくなります。これは、会社のお金と個人のお金を混同しているのと同じことです。
こんな風につたえるといいと思います。